あらすじ
おじさんはひどい。でも、おじさんだってつらい!? 男性は「そうなんだよ」と共感、女性は「こんな人に困ってる!」と思わず頷く物語。 ●人事からセクハラを注意された課長。だが、どの部下が訴えたかわからない。次の日から部下の対応に四苦八苦するのだが……。(「スコール」) ●女性の後輩に出世競争で敗れ、役員になれなかった男は、果たして次の生きがいを見つけられるのか。(「時雨雲」) ●浮気で離婚された男が、十年ぶりに娘と再会した「気まずい場所」とは。(「涙雨」) ●四十代で派遣社員。ストレス解消にネット上で女子高生「さなたん」として活動する男が陥った大ピンチ。(「天気雨」) ●定年退職後、街に出て公共マナーを注意することが生きがいとなった男の孤独。(「翠雨」) 報われない「おじさん」たちの心情を時にコミカルに、時に切なく描き出す、連作短編集。
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Posted by ブクログ
帯の通り報われないおじさん達の連作短編集。
自分とほぼ同じ世代、5人の男達が今のご時世、世知辛く切ない思いが吐露される。
喜多川さん。この話は途中から読むのが辛く、気持ちが入ってしまった。自分たちの世代だけが大変なわけではないのは分かっているけどつい共感してしまう。
獅子堂さん。最後奥さんに寄り添おうとする姿勢に、何とも言えず救いが見られた。
佐度島さん。親の愛情を咄嗟に表せずに娘に見切りをつけられても、意地を貫こうと頑張り自分を変えていく。勇気を貰えた。次の話でも変わっていく様子に安心する。
石清水さん。ホントに情けないし、女の子にも励まして貰って喜んでいるんだけど、自分にも置き換えるところがある気がしてよく分かる。弱いところは皆同じ。
最後にギリギリの少しの大人らしさをみせて、さなたんを少し感心させられたのかな。よし。がんばれー。
小笠原さん。やはり誰かに認めてもらいたいのは、幾つになっても同じなのか。まだ現役なのでわからないけど、定年後、独りになった時向き合わなくてはいけないのかも。
喜多川さんが再登場しコンプラに向き合っているのが切ないが何故か微笑ましい。
作者の坂井希久子さん、初めて読んだ作家さんでしたがよくここまで、おじさんの気持ちが分かるものかと感動です。
応援してもらっているのか?発破をかけられているのか?でも自分達の思いを少なからず代弁してもらっているようで嬉しかった。
Posted by ブクログ
報われない「おじさん」たちの心情を時にコミカルに、時に切なく描き出す、連作短編集
世帯主で働いてるので、「養ってやってるんだ!誰のおかげで食えるんだ!」と叫ぶおじさんの心理も分かる。一方、社会で理不尽な扱いを受けているので、男だってだけで出世できた事すら認識できていない自称企業戦士のおじさんの勘違いを冷めた目で見てしまう・・・どっちの気持ちも分かる話ばかりだった。
Posted by ブクログ
おじさんを描いたお話!?面白そう!と思って、手に取りました。そしてタイトルはどんな意味なんだろう?と。
仕事の話がメインだったけれど、そう、仕事の大部分を支えているのは世間のおじさん達なんだよなぁと。おじさんはおじさんなりに悩んでいて、でも何でそうなってしまったのかわからなかったりしている。共感できそうでできなかったり。
おじさん側の視点と周りの視点と、どちらを批判するでもなく淡々と描かれていてとても読みやすかったです。ちょっと笑えて、ときには突っ込みたくなる、楽しい一冊です。
Posted by ブクログ
おそらくバブル世代くらいのガムシャラに頑張ってきた男性が時代の流れに翻弄され、考えを変えていくストーリー。一話目は、セクハラに頑張って対応しようとしていたものの、現実はさらに変わっており、男性社員から訴えられるというもの。二話目は女性の後輩社員に抜かれた男性社員の話。三話目は仕事に没頭しすぎて離婚した性のみが最後のプライドとして残ってる男性。四話目が、就職氷河期のため、まともな就職ができず、ネット社会にストレス発散を求める男性。五話目が定年後の生きがいがなく、自分の価値を自己満足な世直しに求める男性。いずれも自己肯定感を、こじらせた結果、自身ではなく、外に求めることにより、ピンチを迎え、変わるきっかけを得ていく。ただ、自身の幸せは今、この時に自分の中で探さないといけないという話は共感できるが、こじらせてる内容がかなり共感できず、ピンチも運良く乗り越えて変わって幸せになるのは、被害を受けた周りを考えると微妙な気持ちになる。小説の中と割り切り、主人公にはそこまで、感情移入せずに読みたい本。
Posted by ブクログ
強烈なおじさんたち5人の連作短編集。
若い頃の価値観と考え方のままで来てるから、セクハラ、女性蔑視、弱者への攻撃、他者への不平不満を嫌になるぐらいまき散らし、それを悪いとも思わない。読んでてかなり不快でした。
そんなおじさんたちが徐々に改心していく訳だが、五話に出てくる小笠原がずっと抱えていた、誰かに話を聞いてもらいたい・自分の価値を認めてほしいという気持ち、これには共感できた。
おじさんたちの思考、態度が変われば、周りの受け止め方もきっと良い方向に変わってくるはず。第一話でセクハラだと言われた長谷川が、広重くんと一緒の傘に入っているのにはちょっと笑えました。
それにしても女性作家さんが、みんなから嫌われるおじさんの心中をここまで描けるなんてびっくり。