あらすじ
男は繁殖、女はリソース
すべては自分の遺伝子を後世につなぐため
わたしたちの脳と体には、太古の昔に育まれた使命が組み込まれています。その影響は、人生設計から日々の意思決定まで、すべてにおよんでいます。恋に落ちる、夫婦ゲンカをする、お気に入りのテレビをみる、夜ひとりで歩くのが怖いと感じるたびに、わたしたちは独自の進化を遂げた「ヒト」として行動しています。なぜ神経外科医は男性が多く、幼稚園教師は女性が多いのか? なぜ女たちはダイヤモンドに目がないのか? なぜ男性政治家はセックススキャンダルでキャリアを台無しにするのか? なぜ、どのようにして私たちは恋に落ちるのか?――これらすべては本能からくる欲望に直結したもので、1万年前のわたしたちの先祖と本質的にはまったく変わらない行為です。
進化心理学は人間の本性を扱うサイエンスです。本書では、二人の進化心理学者が、最新の研究の成果を用いてヒトの心理メカニズムを紐解いていきます。わたしたちが生きていくうえで直面する出来事――配偶者選び、結婚、家族、犯罪、社会、宗教と紛争――を項目ごとにわかりやすく解説。日常のあらゆる領域にみられるひと筋縄ではいかないさまざまな問題、そしてこれまでタブー視されていた過激な問いかけも、進化心理学の視点を用いてクリアにしていきます。素朴な疑問から、非道徳的な事項、残酷な要素もあえて提示した本書は、これまでの常識をくつがえす真実をシンプルで読みやすい文章で紹介していきます。本書を読むことで、人間の本性についての観念が180度変わります。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
とても興味深くて面白い。
私が長年知りたかった問題に進化心理学という視点から応えてくれていて、目から鱗。
すべては狩猟時代から遺伝子レベルではほとんど変化していないという前提から話が始まり、基本的には全て繁殖を成功させるため、というのが考え方。
たとえば、なぜ男性は女性よりも自分への好意を勘違いしやすいのか?
これは、自分のことを本当は好きな女性に対して自分に好意はないと勘違いするリスクが、みすみす繁殖機会を逃すという重大な損失を招く可能性が(反対の場合の勘違いパターンと比較して)大きいために、バイアスがかかっていき引き起こされるもの、という理論。とても面白いし説得力がある。
1万年前の脳で現代社会をサバイブしているという主張は「スマホ脳」でも書かれていたが、あまりに便利になりすぎた現代はヒトの進化の歴史の中ではほんの一瞬の出来事なんだということを思い出させてくれる。
進化心理学の他の本も読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
男女の行動心理を、それぞれが持つ繁殖戦略の違いによって説明している。
どちらも根本にある戦略は生命として子孫を残すこと。男はセックスをするために、女は子育てに必要な資源を得るために行動する。男が女に求めるのは若さと健康(あくまで進化心理学が現段階で研究出来ている範囲に過ぎないという訳者のあとがきがあるが。)、女が男に求めるのは金等の資源とそれを分け与える気前の良さ。
進化心理学では、男は女の気を引くため、つまりセックスをするために、スポーツや芸術、研究、ビジネスに勤しみ、場合によっては犯罪を犯すと結論付けている。繁殖競争という観点から見れば、諸分野での成功者と犯罪者とが本質的にとっている行動原理は同じだという主張には驚いた。
本書は、ヒトの行動特性について、全ては後天的に身につくものだと主張する社会科学者たちの「標準社会科学モデル」に対して、後天的な要素だけでなく、これまでヒトが進化の過程で培ってきた進化的心理メカニズムも影響していることを事実ベースで主張した本である。少なくとも現段階では男女や親子の関係を全てこの進化心理学の観点から説明、納得する事はできないが、この知識を応用することで、恋愛や人間関係の場面での一助になる事は違いない。