あらすじ
このままでは男たちは職場や家庭だけでなく社会からも捨てられてしまう──
ベストセラー『男性漂流 男たちは何におびえているか』『「女性活躍」に翻弄される人びと』著者・最新刊!
「アイツのためを思った指導がパワハラだなんて、納得できるわけがない」
「チャンスを与えてやったのに、セクハラ告発の不意打ちを食らうなんて……」
普段はネガティブな感情を露わにすることのない男たちが目を充血させ、時に嗚咽しながら必死に思いの丈をぶつける。本書は、マスメディアからは伝わってこない市井の人びとの声を丁寧に掬い上げ、そのギャップを鮮やかに描いてきた著者が「男社会」の崩壊をリアルに暴くルポルタージュである。20年以上にわたる取材から迫る真相は、読む者を圧倒する。
本書に登場する管理職の中年男性たちは、取材の過程で、部下の成長を心から願い、長時間労働の是正、女性登用の促進など職場が抱える課題に果敢に立ち向かい、そして妻子への想いを熱く語っていた。では、なぜそんな彼らが訴えられ、引きずり下ろされたのか。パワハラやセクハラ、家庭内モラハラなどのハラスメントの告発を受けるに至った社会的背景や心理的要因を探れば探るほど、「男たち」の悲哀を感じずにはいられない。
“無自覚ハラスメント”──。これが彼らが陥った行為の正体である。
そして“無自覚ハラスメント”に及ぶ要因を数多の取材事例から分析して浮き彫りになったのが、彼らに無批判に内在化された「男社会」の価値観だった。
本書の特徴は最長で約20年にわたり、同じ取材対象者に継続的にインタビューを行った定点観測ルポになっている点だ。例えば、過去の時点では平静を装ったり、胸に秘めていたりした苦悩が、その後の取材で初めて明るみになるケースも少なくない。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
複数のサラリーマン(女性含む)に、10年、20年かけて継続インタビューしたユニークな本。
セクハラ、パワハラなど、職場におけるさまざまな問題がどうして起きるのか、考えるとてもよい材料になるし、平成という時代の中の変化を知る資料としても貴重。
Posted by ブクログ
リスクのほうに入れるべきか?妻はこうあるべきという内在化された規範意識に沿った、非現実的ともいえる過剰な役割を幻想の中に期待するようになる。夢のような安心安全を手に入れることが難しいためそれを求めて幻想に逃避している。無自覚モラハラはこの幻想を追求するプロセスで起きている。家庭が職場化し安らぎよりも効率性を重視した場へと変容しても現実から目を背けず家庭を共同経営するパートナーとして夫婦関係を前向きにとらえる。
>これ出来るのかなあ。
相手に対する過度な期待。対策としてのコミュニケーションには相当の努力と工夫が必要であることの心得。承認欲求の水準を下げ自己効力感を高める。相手に対して求める役割期待の度合いを低く見直すこと。
Posted by ブクログ
【300冊目】大変興味深く読んだ。中年男性管理職の価値観が新時代に全く適合しなくなっているせいで、本人たちも無自覚のうちにハラスメントを行ってしまっているとのこと。本書に挙げられている事例の恐ろしさは、被害者からの告発を受けても加害者は自分の落ち度に気が付かない場合があること。
そして、もう一つの恐ろしさは、加害者は元々ハラスメントに対する意識が高く、ときに企業のハラスメント対策部署に所属していたりもするということ。常日頃からハラスメントをしないよう意識していたとしても、同僚や部下の考え方や時代の価値観を理解している必要があり、表層的なハラスメント忌避だけでは加害者になってしまうという事例が並んでいる。つまり、私自身もいつか加害者になるおそれがあるってことだ。。。。。
本書では、部下世代等との価値観のズレを認識し、かつての「男社会」の規範から脱出して、話すでも聞くでもなく、「謙虚な問いかけ(Humble Inquiry)」(Schein 2013=2014)によるコミュニケーションを心がけるべしとの処方箋を提供する。ただまぁ、これまた恐ろしいところは、加害者世代として想定される男どもには、謙虚な問いかけという手段をもってしても、正解にたどり着かない可能性があるということなんだよね。謙虚な問いかけは手段でしかないからね……とはいえ、本書の誠実なところは、手段を提示しているところ。部下世代の価値観についても言及はあるんだけど、それは変わりゆくものだから、ね…
Posted by ブクログ
まあ、言いたいことはわかる。
ただ、女性がそうやって曲がりなりにも「社会での自己実現」を図ることが普通に望めるような社会を作って来たのは、そうやって我武者羅に走り続けて来た男たちであり、男たちのルールだったので。
それをいきなり、あたしたちが働きやすくない社会は硬直した古いシステムだと言われることに、無茶苦茶抵抗がある。
なんか、あれだな、醸して来たアルコールで死んでしまう酵母菌のようだな。
もちろん変えていかなきゃいけないでしょう。
だが、変わるのが、「男社会」の方だけだってのが、この本だけでなく、いろんなところで気に入らない。多様性に男は要らない。そうなのか。
男はその「男らしさ」を強制されるが故に、個人が殺されながらも社会を拡大して来たのだ。
もう少し優しく退場させてもらっても良くないか。
パワハラだってセクハラだって、程度はあるが一発退場って、おかしくないか。魔女狩り、反社狩り、統一教会狩りなのかよ。
アベ狩りもそうか。
男たちに対する無意識パワハラ、モラハラも、気にしてもらいたい。
Posted by ブクログ
モラハラ・男性学への関心から入手。
(多分SNSでの評判を見てだと思う)
ざっと一読。各章の事例の数々はことごとく極めて特徴的でビビった…。
「家庭の職場化」、概念化がされている事を本書で初めて知った。セクハラ・パワハラの前段には必ずモラハラ(精神的なもの)が先行するという記述には、自分も気をつけねばと思った。
最後の第5章は男性学的知見の宝庫のようだった。