あらすじ
5歳で子役デビューして以来、55歳で引退するまで日本映画の巨匠たちの名作300本余に出演、名随筆家として300本余に出演、名随筆家として26冊の著作を遺した高峰秀子。その高峰に唯一、素顔を書くことを許され、のちに養女に迎えられた著者による“高峰連作”の第一作。固く口を閉ざしていた養母や血縁との壮絶な確執をはじめとする怒涛のような前半生と夫・松山善三との幸福に満ちた後半生を貴重な言質とともに活写する。大女優・高峰秀子が最期まで捨てようにも捨てられなかった荷物とは? 感動に満ちた“運命の評伝”が今、よみがえる!高峰秀子の「ひとこと」収録。
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Posted by ブクログ
斎藤明美さんの文章から、愛情と幸せがこれでもかっというほど伝わってきて、なんだかその場を共有させてもらっているようで、そんな経験をさせてくれる本って本当に尊いなぁと思いました。
いくつも名言が出てきて、ラインマーカーを引きたいくらい。
ちなみに、後書きまで圧巻です。
斎藤さんの軽快な文章、高峰さんの独特のユーモア・テンポ・高速な頭の回転を思わせる文章、皆川さんの文章綺麗すぎる!、松山さんのお人柄の分かる丁寧で深甚な文章(心震える)、そして最後はまた斎藤さんのめちゃくちゃ心に染みるラブレター。
フルコースご馳走様でした!!って感じです。
Posted by ブクログ
楠木建先生が薦めていた高峰秀子「わたしの渡世日記」と併せて薦めていた著書。確かに面白かった。
だが、高峰秀子の異能は、ただ漠然と人の悲しみや苦しみを捉えるのではなく、その人ごとに”痛み”の種類を見分けることにある。それも瞬時に。種類を見分けるということは原因を解き明かすことであり、それは即ち、治療法を知ることに繋がる。だから、その人が一番欲しているもの、最もその欠損の跡に嵌まるパーツを、彼女は人に与えるということになる。だから人は喜ぶ。「高峰さんが好き」という。
だが私は、この志げをめぐる長い”物語”を繙くうちに、思った。彼女は、ある意味で”普通の女”だったのかもしれないと。普通の人間が誰しも体内に持っている”悪腫”が、何か後天的な要因をきっかけに、活性化し肥大する。そしてやがては、宿主である人間の肉体を蝕み、遂には生命をも奪ってしまう。その意味では、我々全員が”志げ”になる要因を持っている。ただ違いは、その「何か後天的な要因」の有無、多少だけはないのか。
それが”金”である。