あらすじ
ウォルト・ディズニーが創造したエンタテインメントは、米国大衆文化の代名詞であり、世界中を席巻している。姫と動物たちが織りなす夢と魔法の世界はいまなお拡大を続けるいっぽう、巨大資本を投入した反自然的な世界、徹底的に飼いならされた無菌化された世界でもある。ディズニーの物語は、現代の政治、社会、文化、自然に何をもたらしたか。その映像は私たちにどのような影響を及ぼしてきたか。その世界の舞台裏を探る。
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Posted by ブクログ
p.27 「絵をうごす」ではなく「動きを描き出す」こと。動いていたはずのものが途端にただの絵となって静止すること、あるいは消去されてしまうこと。時空を超えて動くものとそれによるナラトロジー。これこそ、過去を呼び起こし、生命のないものに生命を与える魔法として、アニメーションの多くの観客を惹きつけてきた魅力だと考えられてきた。
p.108 イタリアの思想家ジョルジョ・アガンペンは、人間が自ら他の動物と区別して認識するメカニズムを「人間学機械」といった。
p.226 EPCOTの構想にはディズニーランドを手がけたウォルトならではの独創的な特徴がある。ディズニーランドでは、テーマパークの世界観に関係ない裏側の仕掛けはゲストの目に触れないようにバックヤードに覆い隠す配慮がなされれいる。環境を完全にコントロールすることで、テーマパークとして一つの世界観を貫くためだ。ここでいうコントロールは、中心部の気候の制御であり、そして、また人々の出入りの制限だった。
p.274 こうしてプリンセスは目覚ましい変貌を遂げていく。そしてプリンセスが変われば、王子も代わり、自然も変わる。プリンセスの変化は、「女らしさ」の更新のみならず、こじれた「男らしさ」を浮き彫りにし、西欧の男性中心的、人間中心的な物語世界そのもの地殻変動を引き起こした。その変化の背後には、新自由主義/ポストフォーディズム社会に適応する柔軟な主体の要請と労働の女性化がある。
p.280 アリエルにとって「人間になる」ということは、互いに異なる「文明」と「野蛮」のシステムを受け入れ、かつて人魚であった記憶を人間の女として身体をとどめながら、身体を変容させ、脱自然化をしていくことだった。