【感想・ネタバレ】完全版 チェルノブイリの祈り 未来の物語のレビュー

あらすじ

一九八六年四月二六日,その事故は起こった.人間の想像力をこえる巨大な惨事に遭遇した人びとが語る個人的な体験,その切なる声と願いを,作家は被災地での丹念な取材により書きとめる.消防士の夫を看取る妻,事故処理にあたる兵士,汚染地に留まりつづける老婆――.旧版より約一・八倍の増補改訂が施された完全版.解説=梨木香歩

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Posted by ブクログ

ロシア・ウクライナ戦争がはじまって、いま起きていることを理解したくてスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの本を読みはじめた。

311が起きた時もこれからどうなるのかをチェルノブイリから学べるかと、本を読んだりドキュメンタリーを見たりしていた。
その結果としては何もわからないままで恐怖が残っただけだったけど。
新宿御苑で汚染土を使った実証実験が行われると聞いて、また少しずつ放射線に関する本を読みはじめている。
この本を読んだ印象では、福島の事故で出た放射線はチェルノブイリよりずっとマシだったみたいだ。
311の頃は「直ちに影響はありません」を聞くと一体何言ってるんだと混乱が深まるばかりだったけど、今考えると本当に不幸中の幸いで、チェルノブイリほどの深刻さに陥らずに済んだ。

ソ連の時代の人は、ソ連人というアイデンティティを持ってた人も多かったんだ。そのことに驚いた。この本に出てくるのはベラルーシ人がほとんどなので、すべての元ソ連の国々の人に当てはまるかはわからないけど。

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2023年03月07日

Posted by ブクログ

「もう一つの戦争を体験、そしてそれはまだ終わっていない」「失ったのは町じゃない、人生丸ごと」「住民は人間ブラックボックス」「誰も何も理解していなかった。これが一番恐ろしい」……原発事故後、旧ソ連政権下で封殺された、或いは黙して語られることのなかった「チェルノブイリ人」の証言の数々。著者の地道な取材で拾い上げられ 、10 年という時を経て届けられた市井の人々の声なき声、拭い去ることのできない“心の傷跡”が痛過ぎる。特に冒頭の消防士の妻の証言には言葉を失う。ノーベル文学賞も宜なるかな、と思える衝撃の記録文学です。著者はロシアのウクライナ侵攻に際してもいち早く声明を発表。「市民に真実を伝えて」と訴え、ロシア国営メディアの嘘を追及されています。かの国の隠蔽体質、秘密主義は本当に根深い……。

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2022年04月02日

Posted by ブクログ

読み始めると、辺りが静かになる。
一人一人の物語を、己の少ない脳の記憶容量に刻みつけるように。文字を読むのではなく文字を聴くように読む。じっと。
アレクシエーヴィチの著作を読んだのは「戦争は女の顔をしていない」を含めこれで二冊目(未読だが手元にボタン穴から見た戦争がある)。
戦争は女の顔をしていないを読んだ時は、初めてアレクシエーヴィチの著作を読んだ時は、衝撃といろいろな感情がないまぜになって、これは今、ものすごく大変なものを読んでいるとわかって、恐れ多くて、畏ろしくて、感想が書けなかった。ただ心に刻みつけるしか。今回もそうだ。

著者は、「スターリンの強制収容所、オシフィエンチム(アウシュビッツ)…チェルノブイリ…そして、ニューヨークの九月」と人間の理解を越えた大惨事を述べる。そして解説で梨木香歩さんが「今ならきっと、3.11、そしてこの新型コロナウイルスによるパンデミックもあげることだろう。」と述べる。
さらに付け加えると、先月ロシアがウクライナに侵攻し戦争が始まり、よりによってロシアがチェルノブイリを軍事拠点としていることだろうか……
そしてその戦争にロシア側にベラルーシが加担していることだろうか…チェルノブイリ事故で多大な犠牲を出したベラルーシが…
本書で証言した様々な人たちがまだ生きていたら、このことについてどう思うだろう…そもそも正しい情報を知っているのだろうか…と読みながら考えてしまった。そしてソ連という今はなきはずの国は、その時代を生きた人の中にはまだまだ根ざしている…そう思わされる。

本書のタイトルにある「祈り」について、梨木さんは「今まで使ってきた言葉が、直面する現実に追いつかないーそういう事態を表す「記号」でもあったのだ」という。「この本は、「チェルノブイリの祈り」以外の何ものでもない」と。
祈り…記号以外の祈りを考えるならば、私は何を祈ればいいのだろう…人知を越えたものに捧げる…何を…祈ることが多すぎる…

本書には衝撃を受けっぱなしだったが、特に印象に残ったのは、チェルノブイリ人という単語。
事故後に生まれた子どもが「ぼくはチェルノブイリ人だ!」と叫ぶ。
子どもたちが死を身近に感じていて、自分もすぐに死ぬのだと悟る…
…本書ではいろいろな人が語る。事故処理に派遣された若い男たち、その妻たち、その子どもたち、避難してきた人たち、避難区域に住み続ける人たち、チェルノブイリにきたジャーナリストたち、戦争からチェルノブイリに逃げてきて原子よりも人間の方が怖いという人たち、避難区域の学校の教師たち、元書記官、核物理学者、心理学者……

本書は訳者あとがきや解説を含めて約410ページ。
全部読むのはなかなか抵抗がある、という人は、最初の、消防士、故ワシーリイ・イグナチェンコの妻・リュドミーラ・イグナチェンコの証言「孤独な人間の声」だけでも読んでほしい。
前知識なんてなくてもいいから…私もそうだったので…。

「チェルノブイリの祈り」の中でも本書を選んで読んだのは、完全版であることと、梨木さんの解説があることが大きいが、表紙の美しさに惹かれたのもあった。
読み終わってから改めて表紙を見ると、やはり美しい。小鳥たちが枝木に止まり、蝶が舞い、花は咲く。
美しくて涙がにじむ。チェルノブイリ周辺は放射線量を除けば、とても美しく、作物もよく採れたそうだ。食べられない作物が………美しいからにじむのだ。
ちゃんと感想になってるかわからない。書けた気がしない、でも私の心には残っている。

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2022年03月25日

Posted by ブクログ

ウクライナに生まれベラルーシで弾圧を受けながらも、国家の影に隠された人々に取材し、その生の声を届けるジャーナリスト スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ。
ウクライナにあり、1986年4月26日に事故を起こし、隣国のベラルーシに深刻な放射能被害を及ぼしたチェルノブイリ原発事故。このチェルノブイリ原発事故の事故処理にあたった人々はソビエトにおいては国家の英雄として扱われたが、その事故の被害の真実は長く隠匿され、ベラルーシにおいてもそれは同じだった。

アレクシエーヴィッチはこのチェルノブイリの事故の処理にあたった人々、その事故処理による被曝で亡くなった人々の遺族、この事故のために住む村を追われた人々、事故後に重い障害や病を得て苦しむ子どもたちなど、様々な人々に取材し、国家が隠していた人々の苦しみ、悲しみをその人たちの言葉によって語らせる。

本を買ってからなかなか手がつかず、やっと読み始めたら、ロシアがウクライナに侵攻し、ベラルーシはロシア側に協力している。
チェルノブイリほかの原発についてもロシア軍が制圧していると聞く。戦争の中で、戦火による被害だけでなく、チェルノブイリの原子炉を覆うドームが破壊されて、放射能の被害が再度起きることがないように祈るばかりだ。

アレクシエーヴィッチはこの事態をどのように見ているのだろうか。

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2022年03月06日

Posted by ブクログ

チェルノブイリのドキュメンタリー。体験者の話をそのまま聞くような気持ちになる。
とくに、子供達との会話はすさまじい
「あちこちでネズミの死骸に出くわして、彼らは笑っていたのです。ほらね、ネズミや甲虫やミミズが絶滅しちゃったら、こんどはウサギやオオカミが死にはじめて、そのつぎはわたしたちよ。人間は最後に死ぬんだよ、と。」

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2022年01月14日

Posted by ブクログ

核はこわい
核の情報操作、放射能障害で沢山の方がなくなる 
一方でチェルノブイリツアーの人気
怖いもの見たさなのでしょうか
まだ終わっていない、これからも原発がある限りリスクは続いている

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2022年02月16日

Posted by ブクログ

“ここでは私たちみんながチェルノブイリの被災者です。庭の畑のりんごやキュウリをごちそうされてもお互いに驚いたりしません。もらって食べます。あとですてようと、きまり悪そうにバックやポケットにいれたりしない。私たちは記憶をともにし、運命をともにしています。ところが、よそではどこでも私たちはのけ者にされる。〈チェルノブイリの人々〉〈チェルノブイリの子どもたち〉〈チェルノブイリの移住者〉。もうすっかりおなじみのことばです。”

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2021年05月26日

Posted by ブクログ

完全版の前の版を読みました。
チェルノブイリ原発事故の事実は世界中誰でも耳にしたことはあると思う。
社会主義国家による情報統制下でこれまでの35年間、そして今後も何百万人ものベラルーシ国民が悲惨な状況下で、日常生活を送るさまになんとも言えない無力感を感じる。こんな世界が普通に存在するのかと。
政府だけでなく、医師、科学者、教育者誰ひとりとして真実を国民に伝える事が出来ず、ただ、ひとりひとりが目の前で起きたことを語る。それが国民が知る唯一の真実だから。
先の福島第一原発事故を国会事故調査委員会は人災と報告したが、チェルノブイリ原発事故もここまで被害が広域かつ長期的となり、多くの国民を苦しめる状況となったのは、まさに人災によるものではないかと思う。

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2021年05月08日

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