【感想・ネタバレ】ふじこさんのレビュー

あらすじ

離婚寸前の両親の間で自分がモノのように取り合いされることにうんざりしている小学生のリサ。別居中の父が住むマンションの最上階から下をのぞき、子供の自殺について考えをめぐらせることがもっぱらの趣味。ある日きまぐれに父の部屋を訪れると見覚えのない若い女の人が出迎えてくれて……。ほか二編。(講談社文庫)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集。
表題作は、離婚調停中の両親に親権を争われうんざりしているリサと、
父の愛人との妙な交流を描いたお話。
タイトルの『ふじこさん』が愛人の名前。

リサの自分自身への無関心さと人生への倦怠感が溢れている。
リサは小学生。
でも小学生は小学生なりに人生を悲観し、鬱屈としたものを抱えているのだよね、と自分の子供時代を重ねて思う。

自分を支配しようとして、当然の権利のように自分を引き取ろうとする母&祖父母への反感と対になり父親への好意(いや同情か)が強くなるものの、
物語を通して「男は身勝手で無神経」という側面を出すことで主人公は本当に自分自身の価値基準を自分の中に持てる子になったのかなと思う。
ふじこさんの人生も素敵。


『夕暮れカメラ』は高校をさぼってカメラを片手に街をさまよう主人公が、
自分の遺影を求める老女の写真を撮る話。
途中、老女が中学時代の同級生の祖母だと判明し、その奇妙にすべすべした家族関係に疑問を感じたりする。

デビュー作の『春の手品師』はちょっとファンタジックなお話。
家庭のごたごたに起因して心のバランスを崩したと思われる主人公と、手品師との一晩の交流。


ちょっと変わっていて、でもものすごくドラマチックな展開があるわけではない、
どちらかといえば地味なお話だけれども、子供時代に抱えた暗い思いをつついて、切なくさせる。
前向きになるけれど、どんと背中を押すのではなく、
一人で歩けるようになるまで手を取って一緒に歩いている感じが好き。

こういう、人生をひっくり返す出会いというテーマは好き。

0
2012年02月29日

「小説」ランキング