あらすじ
応募総数10,332作品。第8回ネット小説大賞受賞作、完結編!
言葉を尽くして生徒たちと向き合う辰巳センセイの姿に、円城咲耶は惹かれていた。彼女がアメリカへ短期留学することになったのと入れ替わりに、美貌の補助教員、シャーロットが現れた。シャーロットは辰巳との距離を縮めてきて……。
高校生活が巡り、人間関係が変化していくなかで、辰巳の「こころ」を縛る鎖が見えてくる。
日本の名作文学とリンクする、人間ドラマの行き着く先は……。
<WEBにおいて読者より寄せられた声>
●お話を読んで、本気で泣いて感動しました。本気で泣いたのは数年ぶりです。
●色んな小説を読んできましたが、「小説家になろう」の内外問わず、おすすめできる作品を教えてくれと言われれば、全く全ての自信を持ってこの作品を紹介します。
●開幕早々階段の踊り場で、血まみれで横たわる女生徒。 駆けつける辰巳先生。
ここから始まるお話で、まさか後半ボロボロと泣いている自分がいるとは想像もできませんでした。
●本作のヒロインたちが心に抱いた透き通った恋心は、読み手の心を揺らします。心が揺らされたのなら、それはもう、この物語に「恋」をしているといってもいいのかもしれません。
●誰もが経験する学校という環境を題材にし、現実に起こりえる物語だからこそ――感情移入しながら読み進め、同じ目線・等身大の世界を楽しめると思います!
●辰巳先生から授業を受けた生徒たちも、私と同じように心揺れ、人生を重ね、前を向いて歩むことを学んでいったのだろうと思う。
そして本書を読み進めるうち、そうした生徒たちの姿に、私はまた、自分の人生を重ね、心の底から応援せずにはいられなかった。
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Posted by ブクログ
この話を上巻だけ読むと(というか逆になぜ上巻の方はあんなにラノベっぽいんだろう…?) みんなに愛されて俺困っちゃうよ系のセンセイ、という評価しかなかったんだけど、下巻を読むと評価が一変した。
特に、「こころ」を裏切りと罪の物語ではなくて、希望の物語として読み解く、「罪深い大人が、若者へ希望を託す物語」であるのだ、という考察が非常に印象に残っている。教科書に載っている一部のみだけで判断するのではなく、全体を見て初めて理解しうるものもあると思う。
この話は、自分自身のした行為や過ちをずっと引きずって後悔している人は、何か響くものがあるんじゃないかなと思う。やってしまったことは取り返しがつかないけれど、どんなに償いたくても、それをすることができなくなってしまったという人もいるだろうけど、もしそれを悔いているのなら、せめて今自分の目の前にいる人たちには誠実に向き合って、誰かのために自分の人生を生かすのも一つの贖罪なのではないか、と考えた。
Posted by ブクログ
上巻で辰巳先生がうっかりやらかした件が思いの外あっさり解決してよかったと思ったのも束の間、先生自体の重い過去が。
どうにも先生に関わる女性たちは暴走しがちな気が。
先生が結婚はおろか恋することも禁じていた件。
この話での授業の題材が夏目漱石の『こころ』
つまり、この『こころ』の読み解きが先生の過去の呪縛の読み解きにも繋がる訳で、薄々想像はしていたけれど、いざその真実が明るみになった時は重かった。
決して法的に触れる罪を犯した訳ではないけれど、でもこれは引きずるだろうという。
ここで初めて作中に西暦が描かれていた訳にも気付くという。
あの国としても一大事だった件を絡めてくるとは思わなかった。
個人的には夏目漱石が一部作品を除いて苦手で『こころ』もほぼ未読で苦手意識を抱いていたが、辰巳先生の授業を受けて見方が変わったと思う。
ここでの解釈は諸説ある中の一つなのかもしれないが、深い読み解きに驚かされた。
ついつい上辺だけ読んで満足した気になるので、掘り下げての読みはできないのだが、長く作品が愛される訳が分かった気がした。
数ある女性を無自覚ながら虜にしつつも、一度は誰かを愛することを禁じた辰巳先生が『こころ』と授業を通じて辿り着いた答えとは。
その答えは、ラストのエピソードにて。
呪縛から解き放たれた先生、意外に手が早くて驚いたけども。
爽やかを通り越して、胸やけエンドでした……びっくり(それもまたよし)