あらすじ
忘却の旅に出て知る忘却する快楽!! 休暇中のからっぽ男のように南の島で読んでください。あるいは暑い日に!! 南の島の木陰で紡ぎだす曖昧な童話――陽光に照らされた風が動きはじめて、椰子の森がささやいて揺れる。終わりのない休暇を南の島ですごす僕。美しいティパワンやクリッサナたちとのひととき、忙しかったころには思い出しもしなかった童話を話したくて仕方がない。でも、ちょっと変!! そんな曖昧でこんがらがってしまった不思議な15のお話。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「ノーライフキングの作者だ」と思って読むと
えらい目に遭います(^ ^;
これは「難解な絵本」の系譜というか、
シティボーイズやら中村ゆうじさんやらと
ラジカルガジベリビンバシステムをやってた
「本来の」いとうせいこう氏のノリ(^ ^
本書は、南の島で長期バカンスを楽しむ男の
モノローグの形で進む短編集。
のんびりした時間を過ごしつつ、
ふとした拍子に「おとぎ話」の一節を思い出す。
例えば、砂浜にいる太った犬を見て、
一瞬「オオカミか?」と勘違いして。
勘違いにはすぐ気がつくのですが、
ふと「赤ずきんちゃん」の一場面を思い出して。
せっかくならストーリー全体を思い出そうとするのですが、
中々細かいところが思い出せず、あせり出す主人公。
そうすると、微妙に本来のストーリーからずれてきて。
ネタバレになるので細かくは書けませんが、
「あぁ、違う、それは○○のお話の方だよ!」
と、読みながらツッコミを入れたくなる(^ ^;
正に「志村、後ろ!」の世界というか(^ ^;
そのズレ方、外し方と、当人の必死さが
おかしさの中にもペーソスを感じさせる。
また各章の書き出しの、南の島でのバカンス風景が
実にまじめに、かつ気持ちよさそうに描けているので、
そのギャップもまたをかし(^ ^
かなり知的な遊びという気がします。
文章は読みやすく、またふんだんに挿入された写真が
読み手の「バカンス気分」を盛り上げてくれます(^ ^