あらすじ
〇あらすじ
ひとまえでうまくお話ができない美咲(みさき)。いつも困ったときによりそってくれていた愛犬・レオンも十か月前に死んでしまった。レオンの死をうまく乗り越えられず、たくさんの悩みを抱えたまま小学校五年生になってしまった美咲の目の前にあらわれたのは、レオンにそっくりの犬・ビリーだった――。
どれだけ暗いトンネルの中にいても、夜明けはいつか必ずやってくる。さわやかな感動を呼ぶものがたり。
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Posted by ブクログ
いつの頃からかの猫ブームに押されて脇道に追いやられている犬本。犬派かつスパニエル推しの私にはどストライクな表紙に惹かれて読み始めました。
自分の思いをうまく言葉にできない小5の女の子、美咲。
日常生活はもちろん、卒業式での6年生を送る言葉の自分のパートでも声が出ない。これも物語の中で美咲の成長を表すための、わかりやすい縦軸バロメーターですよね。
そして美咲が生まれたときから寄り添って生きてきたキャバリアのレオンの死。
冒頭からレオンは骨壷に入った存在。でも美咲にとっては、たとえその状態でも、大きすぎて受け止められない喪失感を癒す存在なんですよね。
4・5年生くらいから読めるやさしい文章なんですが、喪失の苦しみや生きづらさにあえぐ、子どもなりの心情がなんだかリアルで。
愛犬を失ったことのある人はこの気持ちと行動すごくよくわかるんじゃないでしょうか。
火葬前に少し切った毛をしばらく指で撫でたり嗅いだりしては泣いていた人間には響きましたよ。生きてたら絶対涙を舐めてくれるのに。とか思って底なしに落ちていくんです。
レオンに生写しのキャバリア犬ビリー(同じ犬種なんだから似てるのは当たり前だろ、なんていうやつがいたら、そいつは犬と暮らしたことがないのだ)と、ビリーが看板犬を勤める花屋の店主である女性との出会いで、喪失感と周囲に感じる温度差でガッチガチの美咲の心が少しずつ解されていき、もうひとつの重要な出会いに辿り着くという流れ。
ひたすら「ビー玉」を引っ張ってきた分、山場での描写は一定のカタルシスを覚えるものの、やってやった感を感じなくもないひねくれ読者。
いや、児童書なんだからこれくらいわかりやすく気持ちのいい流れと表現は控えめに言って最高でしょう。
しかし、夜明けを迎えてからのあまりにスムーズかつ達者な喋りに、どういう症状だったのかと掘ってみたくなる。
陽気な弟が一計をめぐらせてしまうくらい、家でも喋れていなかったことを考えると場面緘黙ともまた違うのかなとか、そういうパターンもあるのかなとか。
しかしこれ、表紙はレオンなのか?ビリー?いや、やっぱりレオンでしょうね。
というかサンであるべきなのでは?
うーん。物語の山場で物理的に夜明けを連れてきたのはサンだけども、美咲だけを覆っていた夜の世界に夜明けをもたらしたのはレオン…いや葉子さんじゃない?
「夜明けをつれてくる三十路女性」
それはそれで手が伸びていただろうとも思う。