Naffyさんの、ちょっとクールでバランス感覚が独特な、美しい絵を見たくて借りた本書であったが、読んでいく内に、犬のかけがえのない素晴らしさを知ることができた、吉田桃子さんの物語も、少女の成長とともに印象深いものがありました。
物語の主人公「斎藤美咲」は、その両親と兄も含め、家族みんなに愛されていた、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの、「レオン」が亡くなったことが、一年経った今も忘れられず、いわゆるペットロスのような喪失感に苛まれていたが、彼女に関しては、それだけではなく、幼少期から声が出ない、精神的な苦しみも抱えていたことから、その辛さは尚のことであり、学校ではひとりぼっちでいることが多い上に、その話すことができないことを、度々馬鹿にされるような姿には、はっきりと、こういう病気ですといったものが不明であるからなのか、見ていて不憫でならなかった。
そんな彼女にとって、数少ない心を許せる友達がレオンだったのであり、そこには言葉が無くとも通い合わすことのできる、犬が人間にもたらす、素晴らしき恩恵を見た思いであったが、その大切なレオンがこの世からいなくなってしまった、今現在に於いて、彼女はこれからどう生きていけば良いのか?
と思った矢先に、幸か不幸か、レオンにそっくりな犬を花屋さんで見かけた美咲は、勇気を出して、その飼い主に止められない思いを伝えようとするが・・・。
生き物には寿命があるため、いつかは別れなければならない時が必ず来るし、それに関して特別な思いを抱くのは、美咲だけとは限らず、寧ろ、犬が好きな人であれば、他の人がそのような体験をしたときに、それがきっと自分事のように思えるはずなのだと感じた時、「ああ、こういうことなのか」と彼女も初めて実感することによって、自分の内の思いだけに拘らず、少しずつ、外の思いにも目を向けるようになっていく、そんな様子に、まずは彼女自身の成長を感じられた。
また、そうした成長を促してくれたのは、数は少なくとも、心温かい周りの人と犬であり、特に人間に対する真っ直ぐな犬の優しさを表した、『犬は、自分のことをよく見せたいとか、こうするとなにか見返りがあるからという理由でやさしいんじゃない』には、とても心を動かされるものがあり、それはレオンの素晴らしさだけでなく、それぞれに別の個を持った犬の素晴らしさでもあり、美咲自身の喜びでもあった。
そして、何よりも美咲自身、素敵な未来を実感できたこととして、誰かにやってもらうことよりも、彼女自らがそうしたいという思いに達したことがあり、それは、相手の中に自分自身を感じることができた、とても素敵なことであり、そんな共感できる思いが、生きたいという気持ちを更に高めさせてくれたり、大きな励みとなってくれることには、『犬には、たいへんなことがあっても、困難を乗り越えて、それでも前に進んでいこうとするパワーがそなわっている』という、犬自身の持つ生命力からも感じられた、そんな前向きなメッセージがタイトルには込められており、これまでの長く辛い夜を押し退けて、ようやく連れてきてくれた夜明けは、彼女の為だけではない、犬の為のそれでもあったのです。