【感想・ネタバレ】第八の探偵のレビュー

あらすじ

独自の理論に基づいて、探偵小説黄金時代に一冊の短篇集『ホワイトの殺人事件集』を刊行し、その後、故郷から離れて小島に隠棲する作家グラント・マカリスター。彼のもとを訪れた編集者ジュリアは短篇集の復刊を持ちかける。ふたりは収録作をひとつひとつ読み返し、議論を交わしていくのだが……フーダニット、不可能犯罪、孤島で発見された住人の死体──7つの短篇推理小説が作中作として織り込まれた、破格のミステリ

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Posted by ブクログ

ネタバレ

これは面白い試み。唯一無二。

”作中作が7つ"という触れ込みばかりが耳に残っており、どんな話なのだろうと思っていたら、まさかのミステリ談義もの。

形式的には、地中海の小島にひっそりと住むグラント・マカリスターが過去一作のみ私家版として出版した『ホワイトの殺人事件集』を、正式に出版したいと一人の編集者ジュリア・ハートがグラントのもとを訪れ、そこに編纂された7つの短編を読み返しながら、1作ごとにその作品の意義を対話していくというもの。

その対話で繰り広げられるミステリ論が、グラントの言うところの”殺人ミステリ”の構成条件とでも言うべきもので大変に興味深い。
登場人物を被害者、容疑者、探偵、犯人のグループに定義し、集合論を用いて数学的に分解する。
作中作として提示されるのは、その構成が極端な例を主としており、登場人物=容疑者が2人で犯人が1人の場合(どちらかが犯人。お互いはどちらが犯人かわかっている。知らぬは読者ばかり。)、容疑者グループと犯人が完全に重なる場合(そう、あの急行列車パターン!)、容疑者グループと被害者が完全に重なる場合(こちらはあの島の事件パターン)、などなど。

そして、ミステリ構成談義が縦糸ならば横糸としてあるのが、グラントとジュリアの現実世界で起きたとされる”ホワイト殺人事件”。
タイトルまでも似通っている『ホワイトの殺人事件集』に編纂されている7作にはこの事件を想起させる、偶然とは思えない記述が散りばめられている。
グラントは”ホワイト殺人事件”と関わりがあるのか!?

この作品は2022年度、このミス海外部門10位。
1位は『ヨルガオ殺人事件』、8位に『木曜殺人クラブ』のクラシックミステリオマージュ作品が。
また、2位に『自由研究には向かない殺人』、7位には『彼と彼女の衝撃の衝撃の瞬間』と豊作の年の年度ゆえ、このポジションに甘んじているが、ポテンシャルはもっと上。

クリスティーオマージュを含みながらも、リバイバルのベクトルとは一線を画す試みにただただ脱帽の一冊。

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2023年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作中作を用いた構成がよくできていた。

ミステリ考証として面白さもありつつ、
それぞれの短編としての面白さ、
全体での結末変更や著作などに関する後半の章等、
様々な側面があり、普段読むミステリとは違う楽しみ方が出来た。

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2021年09月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

7つの本格ミステリーの短編集が作中作として描かれており、それとともにその短編集の著者の謎に迫るミステリー。7つの短編集それぞれが違った構成で描かれており、飽きずにワクワクしながら読むことができた。クリスティーのオマージュ作品なども登場した。そのうえで、ミステリーの構成を数学的視点から考えられており、読んでいて楽しかった。

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2022年03月01日

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ネタバレ

七つの話、合間に入る現在の話、分かりやすくて面白かった。結局、登場人物は真実を全部知らない、どの人にも知らない部分が一つはある。全部分かったのは読者だけ。最後に読者の特権をもらったような気分。

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2021年09月24日

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ネタバレ

短編集。それら全てが最後に繋がるという壮大な仕掛けが施されている。しかし長すぎて最後を読む頃には最初の内容を忘れている。もっとコンパクトにして仕掛けを際立たせることもできたのでは?

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2025年06月21日

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ネタバレ

25年前にミステリー短篇集『ホワイトの殺人事件集』を発表したっきりの作家グラントと、復刊のために彼の地所を訪れた編集者のジュリアは、かつてのグラントが打ち立てた〈探偵小説の順列〉に従って書かれた収録作をひとつずつ検討していく。ジュリアが見つけた、グラントの小説にちりばめられた違和感の正体とは。作中作が7篇も読めるビブリオ・ミステリー。


うーん、面白かったけど期待は超えてこなかった。作中作に気になる矛盾点がちりばめられてひとつの大きな謎をかたちづくるという凝った構成は贅沢だったし、ミステリーの”解答”なんてディテールを少しいじるだけで如何様にも変えられるという視点も好み。それだけに、もっと面白くなりそうな勿体なさを感じてしまう。
一番の不満は、終盤で明かされる作中作の別解がどれもあまり魅力的じゃないこと。原作者のホワイトはアマチュアでジュリアはプロの作家という設定からすれば、ジュリアの改変後のほうが面白いのは納得も出来るけど、後だしの”正答”は最初に読んだよりもっと面白くあってほしいのが正直なところ。
それから、どんでん返しを繰り返した結果、グラントの実像が完全に親しみのもてないクズに堕してしまうのも残念だった。クズなのはいいんだけど、作中の誰も彼の本質に迫れなかったせいでとても薄っぺらな存在に感じてしまう。『ホワイト~』の各篇がどれも探偵役に厳しいのは、グラントの人格にかかわる伏線なのかと思ってた。
作中作で好きだったのは「青真珠島事件」。これも探偵役と真犯人がどちらも社会的弱者の立場で重なり合う最初のバージョンのほうがいい。『そして誰もいなくなった』オマージュとしても探偵役の設定が今っぽい。

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2023年03月03日

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ネタバレ

スペインの知人宅に招かれた男女が発見した刺殺死体の犯人はだれ?
海辺の街で、崖から女を突き落としたとして逮捕された男は本当に犯人なのか。
テラスハウスのバスタブで溺死したアリスを殺した犯人は。
百貨店の大火災のすぐ脇のレストランで起きた撲殺事件。
家から見える島に不審を抱いた夫婦が発見した遺体たち。島で何が起きたのか。
引退した医師の元に訪れた女性が知りたがった、田舎屋敷の女主人が窒息死した謎。
一人暮らしの刑事の元に届く不審な品と写真。

20年前に出版された「ホワイトの殺人事件集」の復刻のため、隠棲生活を送る作家のグラントと編集者のジュリアは、7つの短編を読み返して議論していくが。

それぞれの短編が後味は良くないものの、クリスティやエラリーを思わせて、ドキドキする。
そして、その短編たちがラストに驚きの展開をみせ、さらに作家と編集者たちにも秘密が!
盛り込みすぎーっと思いつつ、最後まで楽しかった。
ソフトクリームを食べたら、コーンの最後までアイスが入ってるような幸せ。

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2022年05月15日

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ネタバレ

作中作1つ1つが面白いのはもちろん、話がどこに向かっていくのか読んでいてもわからず・・・。てっきり作中作にヒントがあると思っていたのですが・・・さすがにこれは全く予想できませんでした。
最後まで読むともう1度読み返したくなること必須です。

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2022年02月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

7つの作中作と、編集者と著者。
異形のミステリではあるけれど、結末は想像していたより普通だった…というか何となくわかってしまったのだ。

こういう展開になるのか〜と後半面白くなってきていたのに、エピローグにもう少し捻りが欲しかったなぁというのが正直な感想。

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2022年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何とか読み終えた。。。それぞれの短編が、最初の一編以外、意図的に書き換えられていた。とはいえ随所に散りばめられている矛盾点がそのままだし、本来の結末であってもなくても、良くも悪くもなっていないので何だかスッキリしない。最初の一編の本来の結末は、なるほどと思えたけど。
動機が弱いのも気になる。結局、私家版で100部刷っただけなのに、初めて会う人にそこまで殺意が芽生えるか。作者であった本物のグラントの性格が掴めないまま、あ、そうでしたか。という感想しかなかった。

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2021年12月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「七つの作中作が織り込まれた破格にして異形のミステリ」という帯文に釣られて、書店で出会ったその日にお家に連れて帰りましたが、一話二話と読み進めるに連れ、どうも私が(勝手に)期待した作中作ではないらしいと気づいて、(勝手に)ちょっぴりがっかり。

てっきり、

「作中作の中の更に作中作」って言う話が、少なくとも7回繰り返されるのかな〜〜〜(わくわく)って思っちゃったんですよね〜〜〜〜泣。

感覚的に言ったら、コレ↓↓

((((((()))))))

だと思ってたら、実はコッチだった↓↓

( )( )( )( )( )( )( )

って言う(???)。
マトリョーシカみたいな入れ子設定と思って手に取った読者、結構多いんじゃないかな〜〜。


兎にも角にも、作中作の物語自体は、意欲作と呼ぶに相応しいものばかりで、最後のどんでん返しも後味の良し悪しは置いても読む価値はあるかと思います。特に「そし誰」の後日談とも呼べる作品は、なるほどこういう切り口がまだあるのかと嬉しくもなったのでした。

でもね〜〜〜マトリョーシカと思っちゃってたからな〜〜(くどい

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2021年09月22日

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