あらすじ
格差は現象? いいえ、人災です――。格差是正の実践こそが、人生100年時代の世界共通語となる。コロナで可視化された〈家族〉〈教育〉〈仕事〉〈地域〉〈消費〉の五大格差を徹底省察し、令和日本のあるべき姿を緊急提言。
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Posted by ブクログ
日本の格差は、経済面だけに生じているのではない。コロナ禍で浮き彫りになった様々な格差の実態を、家族社会学の第一人者が解説する書籍。
日本の格差は、経済以外にも家族、仕事、教育などの面で拡大している。こうした格差がコロナ禍によって可視化された。
コロナ禍がもたらした社会変化の1つに、結婚数と出産数の減少がある。収入が減り、将来の生活に見通しが立たなくなったことが、その一因と考えられる。
日本では戦後、30歳までに結婚し、子どもを育てて独立させ、老後を迎えるという「戦後型家族」の形態が広がった。だが近年、若者の収入低下や未婚者の増加といった状況が生じ、戦後型家族をつくり維持することは困難になっている。
今後、働く人にはITスキルや語学能力が求められる。
これらの修得には家庭環境の影響が大きく、親がパソコンなどを使いこなす家庭で育った子どもは有利だが、そうでない子どもは不利だ。すなわち、格差は生まれた家庭で決まってしまう。
小学生で塾に通い、中高一貫の私立校に進学した子どもは、将来、優良企業に就職し、社会の「上層」の一員となる。つまり、親の経済力が子ども世代に影響し、格差を再生産する。この教育格差は、社会階層の固定化をもたらしかねない。
コロナ禍によるリモートワークの普及は、「リモートワークが可能な仕事」と「不可能な仕事」の格差を生んだ。
「生産性向上の可能性」で見ると、前者は高いが、後者は低い。
パンデミックは、「資産を持っている者」には富を増やす機会となり、「持たざる者」との格差を増大させた。その結果、「持つ者」と「持たざる者」の分断が深まっている。
Posted by ブクログ
著者の著作(研究)はこれまでいくつか読んできた。この令和初めのコロナ禍で社会の格差が先鋭化したという。素人ながらにも格差の有り様は別次元のステージに入ったのではないかと感じている。
著者は、「1家族格差 2教育格差 3仕事格差 4地域格差 5消費格差」の5つのカテゴリーにおける格差やその有り様の変化を解説している。もはや「自助努力」「自己責任」といった新自由主義の考え方では、格差の是正は難しいと説く。
いま世界的に気候温暖化に対する取組を初めとして、SDGs(Sustainable Development Goals)の機運が高まるなか、大航海時代から現在に至るまで地球上の列強諸国が歩んできた反省すべき点を糧とし、さらなるパラダイムシフトが必要なんだと思う。新しい世代にその萌芽があるのではないだろうか。