あらすじ
ポーランドのワルシャワで五年に一度開催されるショパン・コンクール。一九二七年の創設以来、紆余曲折を経ながらも多くのスターを生み出してきた。ピアニストをめざす若者の憧れの舞台であり、その結果は人生を大きく左右する。本書では、その歴史を俯瞰しつつ、二〇一五年大会の模様を現地からレポート。客観的な審査基準がない芸術をどう評価するか、日本人優勝者は現れるのか。コンクールを通して音楽界の未来を占う。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ショパン国際ピアノコンクール2021の予備予選の配信を視聴しながら、どんな基準でコンテスタントが選ばれていくのか知りたくて読んだ。
この本は、主に前回の2015年のコンクールについて書かれたものだが、コンクールの歴史的背景から、ショパンの曲についての解釈、様々なピアニストの特性等、多角的な方面から描かれていて面白い。登場したピアニストの映像をYouTubeで観ながら、理解を深めることもできた。
また、この本で挙げられたコンテスタントが再度2021年にも登場し、予選を通過していたりして、秋の本選もますます楽しめそう。
Posted by ブクログ
来年は5年に1回のショパン・コンクールの年。
18回目になるらしい。
演奏家でもあり、ドビュッシーの研究者でもある筆者が、コンクール「公式ジャーナリスト」として記録した前回のコンクールの記録である。
ショパンらしさとは何かを巡って、揺れ続ける審査基準。
楽譜に忠実派と、ロマンティックな弾き方か。
ルバートは左手は一定のリズムを刻み続けるのか、それとも「右と左を交互に」ずらすのか。
さまざまな対立軸があるようだ。
応募者の増加で、審査方法もルールも変更の連続。
審査員やコンテスタントをはじめ、多くの関係者のインタビューなど、多彩な情報源からそういった矛盾があぶりだされていく。
本来言語とは異質の音楽を言葉にするのは大変だ。
予選、本選の鑑賞記録は、演奏家ならではの細やかさ。
プロはこういうところを聞いているんだ~、と興味深く読んだ。
審査基準については、青柳さんは演奏家審査員寄りの立場をとるのかと思いきや、音楽学者寄りの立場だったのが意外。
ヤマハやスタインウェイ、カワイ(シゲル・カワイという最高級モデルがあるそうな)、ファツィオリの特性の違いなども、面白かった。
Posted by ブクログ
ショパンコンクールについて、2015年のDVD審査から本選までを中心に、ピアニストである著者が主観を交えてレポート。審査員やコンテスタントに多数インタビューしており、様々な考え方が見えてきて面白い。
森のピアノや蜜蜂と遠雷のようなファンタジーの有無ではなく、譜面に忠実か自由な発想も認めるか、というふたつの潮流のぶつかりがあることが分かった。
Posted by ブクログ
YouTubeで ショパンコンクールの予選から公開してるので 照らし合わせて愉しむのも一興。
とにかく この本は音楽初心者には難しいけどそれ以上に面白く刺激的だった。
論文ではない
Posted by ブクログ
2015年に開催された第17回ショパン・コンクールの模様をレポートした作品。コンクールは書類とDVDによる事前審査から始まり、予備予選、一次予選、二次予選、三次予選を経てグランドファイナルへと進む。
ちなみに予備予選出場158名のうち、グランドファイナルに残るのは10名である。著者の青柳氏は予備予選からワルシャワ入りし、注目する参加者一人一人について、臨場感あふれる詳細なレポートを行っている、他の国際コンクール同様に今大会もアジア勢の活躍が目立つ印象を受けた。
青柳氏が指摘するコンクールの難しさの中に、審査の基準が挙げられている。「楽譜に忠実に」「ショパンらしい演奏」「演奏者の個性」という、一見すると矛盾するような複数の課題を、出場者はバランスよく成立させなければならない。
唯一絶対的と思える楽譜に忠実というポイントも、実はショパン本人が書いた譜面は版によって違うらしく、審査の基準となる譜面が複数存在しているのだ。
今大会の優勝者は楽譜に忠実派で、王道を行ったチョ・ソンジンだった、しかし個性的な演奏スタイルの、リシャール・アムランが2位に入賞したのも興味深かった。やはり数ある基準の中でも楽譜に忠実である事が、優勝への第一条件であるのだろう。
もしショパン本人がショパン・コンクールに出場したら絶対に一次予選で落ちる、という青柳氏のコメントが非常に印象的だった。
Posted by ブクログ
2015年にBS1で放映された「もうひつとつのショパンコンクール・ピアノ調律師たちの闘い」という番組を見ました。ピアニストが競うコンクールですが、その舞台裏ではエントリーした演奏家がどのメーカーのピアノを選択するのかというピアノメーカーの闘いが繰り広げられており、それを現地でサポートする調律師達の仕事ぶりを紹介する秀逸のドキュメンタリーでした。そんな感じの内容を期待したんですが、本書は出場した各演奏家のパフォーマンスへのコメント、コンクールが求める理想の音楽像、コンクールが抱える問題点など音楽そのものに焦点を合わせた内容でした。テレビ番組なら出場者の演奏の一部でも聴きくことができますが、何せその演奏自体を全く聴いてない状態でその演奏のコメントを読んでも想像力が及ばずに理解しにくい部分が多かったです。ただ、著者の繰り広げる音楽を表現する文章、文言の豊かさには驚かされました。ピアノを演奏する方ならもっと共感できだんじゃないかなと思います。
コンクールの抱える問題点や、日本のピアノ演奏家がこれから取り組むべき方向性などの部分はよくわかりました。