【感想・ネタバレ】これでおしまいのレビュー

あらすじ

三月一日に一〇八年の生涯を閉じた篠田桃紅氏最後の著作。
世界で最も尊敬される日本人美術家が届ける「老いの哲学」と「人生の言葉」
こんなに魅力的なに日本人女性がいた!

この本の制作途中、「これが最後の本になる」とご本人は繰り返し言っていました。
篠田氏の人生哲学を短い言葉で伝える「ことば編」と、
これまでの人生を写真と文章で振り返る「人生編」、
二部構成でお届けする、最後にして渾身の著作です。

戦後、世界のアートシーンを牽引するニューヨークに単身で渡り、国際的な評価を得た篠田氏は、日本で最初に自由を希求した女性、と言えるかもしれません。その人生は冒険と波乱に満ちていましたが、自分の心のままに道なき道を歩いてきました。
いまより女性の生き方の選択肢がずっと狭く、さらに戦争、結核など、死と背中合わせにあった 昭和の時代に自由を貫くことは並大抵のことではありませんでした。「人生編」で桃紅さんはこう語ります。
「自由というのは、気ままにやりたい放題することではなく、自分というものを立てて、自分の責任で自分を生かしていくこと。やりたいように振る舞って、人にも頼る。それは自由ではありません。自分の行動に責任を持って考え、自分でやる。それが自由で、だから自らに由る(=因る、依る)という字を書くのです」

今の時代、自由の大切さを誰もがわかっているけれど、「自らに由って立つ」ことの難しさは変わっていないかもしれません。
本書の桃紅さんの言葉は、自分らしい人生を生きたいすべての人に向けての、エールとアドバイスになるでしょう。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

篠田桃紅さんの一生の振り返りと、彼女が残した数々の名言が列挙されています。
人間とは、芸術とは、幸福とは、数々の桃紅さんが残した言葉が心に刺さります。

以下、印象に残った言葉抜粋

・満ち足りている人っていうのは、自分の価値観を持ち得る人ですね。

・人のことを考えすぎる。そうすれば自分はあの人のためにやってきたんだと言い訳ができるから。

・幸福なんてものは主観ですから。
 客観的な幸福なんてものはないですよ。

・自分をなくすくらいじゃなければ、人を愛せないですよね。その人と自分のどちらかを立てなくてはならないとなったら、まず自分を立てるでしょう。だから人を愛するなんて偉そうなことは言えないんですよ、本当は。

・私が描いたものより、何も描いていない状態が一番いい。長く生きて、あらゆることをした上で悟った。何もしない状態が一番いいと悟るために人間はあらゆることをする。

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2021年05月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

コルベットさんの感想を読ませていただき、手に取りました。コルベットさん、ありがとうございます。

篠田桃紅さんという方、これまでほとんど知らずに生きてきてしまっていました。
107歳まで生きられて、自分の人生を振り返って発せられた言葉は、相当の重みと現実味を持って胸に届きました。

特に最後の方の芸術論が素晴らしかったです。

◯ルノワールのゴッホの絵、どっちがいいかと言われたらどっちにします?ルノワールとゴッホ、戦争になりませんよ。ルノワールはルノワールでいいんですよ。ゴッホはゴッホで良い。戦いませんよ。226

争うことを止めない人類が心に留めるべき考え方だと感じた。

◯絵というものは、現実を写すのではなく、現実が持っている夢や、怒りや悲しみのようなものを現実の中から引き出して、それを別の形に置き換えたものなのです。230

芸術の真髄を言い得ていると思った。

◯できるはずだと思い上がるから、行き詰まるんです。やってもやってもまだまだ何の表現もできていないから、行き詰まるなんて事は絶対にない行き詰まるはずがない。永遠にやったって、できないに決まっていることをやっているんだから。237

手痛い一言。バッハを弾いていると特にこれを感じる。

◯限られた道具で世の森羅万象を書くなんて事は不可能よ。なまじ色で具体的に表現するより、墨の濃紺だけで想像させる方がよっぽどいい。人々の想像力の方がずっと優れている。238

先日、「国宝」の映画を観てきた。映画自体は素晴らしいと思ったが、小説を先に読んでいたので物足りず、文字のみで表すことの奥深さ、終わりのなさ、人の想像力の壮大さを改めて知った。

◯余白の白は、墨に対立するということがない。ただ無為の深まりを示すばかり244

以前読んだ、白に関する本1冊よりも、この一文が余韻を深く残しながら、感覚に届いた。


◯私が描いたものより、何も描いていない状態が一番いい。長く生きて、あらゆることをした上で悟った。何もしない状態が一番いいと悟るために人間はあらゆることをする。248
 
音楽においても、何かを表現しようとする時、この言葉を強く意識したい。

◯あらゆることが矛盾に満ちている、。生まれてから人はあらゆることをしないと「無為」が「徳の至れり」だと悟れない。そういうふうにできている。

〜〜〜〜〜〜 備忘録   〜〜〜〜〜〜〜

人生論

一切は受け止めておく。それが人生を渡るのに上等まではいかないけど、まぁまぁ、無難な生き方かもね。106

芥川龍之介の言葉「運命は性格の中にある」
運命が性格を作るんじゃない。あなたの性格の中に運命があるのよ。132

どうでもいいやと自然の成り行きまかせ。いちいち、あー大変だ、あー不安だ、あー憎らしいってやってたら、忙しいすぎて生きていられない。たいていのことは、ああそうですかで済んじゃう。192
あまり数のない不思議な美しさとか面白さを持っているものに出合うと、この世にないものを心が夢見ることができるのよ。そういうところへ誘ってくれるものなのよ205
墨には明るさも暗さも、強さも弱さも,一切がある。(老子)205


欲望が少しでも満たされると、そこに人は生きがいがあると思ってしまう。生きている以上、そうした欲望の虜になって暮らしてもしようがない。欲望というものと、どういう風にしてうまく付き合っていくか。人間の歴史への問いかもしれませんね。211

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2025年06月20日

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