【感想・ネタバレ】実話怪事記 怨み禍のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

早くもこちらのシリーズは最終巻。シリーズを通して良質な怪談話が多く、あっという間に読み終えてしまった。名残惜しい気持ちで調べてみると、同じ著者が別の怪談集を多く出しているようなので、そちらも随時読んでいこうと思う。

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お気に入りの話は「代弁」、「空き部屋」、「木瓜業」、「時刻表」。 「代弁」は語り手が中学生の頃、教室で突然強烈な眠気に襲われ昏倒するように眠りに落ちてしまう。意識が戻るとクラスメイト達が自分の周りをおびえたような顔で取り囲んでいた。寝ている間に何があったのかと男子生徒に尋ねると、クラスの女子4人に向かって死の予言とも取れる暴言を吐いたのだという。身に覚えがない事実に、戦慄する語り手であったが、真の恐怖は数年後に来訪するのであった。 得体のしれない何かに突き動かされたように死の予言めいた発言をする語り手。その行動自体がかなり怖いが、その数年後に予言を伝えられた4人に悲劇的なことが起こったのは言わずもがな。誰が何の意図で予言を吐かせたのか分からないが、かなり悪意のある行為だと思う。予言を告げられた4人が行った行動が事件の発端と思われるが、軽い気持ちで行ったにしては代償があまりに大きすぎやしないだろうか。

「空き部屋」は割烹料理屋で見習いとして働いていた語り手。ある日、調理場の親方から同じく見習いとして働いていたTという人物が、最近来ていないので様子を見に行って欲しいといわれる。他の見習いたちを連れ立って数人でTの住むアパートを訪れると、そこには尋常ではない様相のTが佇んでいた。一言でいうなら不気味な話である。アパートに行ってみるとTが壁に向かってブツブツと何かをつぶやき続けているという、ホラー映画さながらの様子だが、何故Tがそうなってしまったのかが分からないので恐ろしい。呆けたようになってしまっているTから詳しい事情は聴けず、語り手が、帰り際に発見したドアが完全に塗り固められた開かずの間があるばかりである。その開かずの間がTをこの状態に至らしめたという事は推察できるのだが、その詳細が分からないのでひたすらに不気味で仕方がない。当初普通にしていたTがそのXデーに何を見てしまったのか、気になるところだが、知らない方がおそらく幸せであるだろう。

「木瓜業」はこちらも形容しがたい不気味さを湛えた怪談。僻地ともいえる田舎に住んでいた語り手。ある夜、家の外側がざわざわと騒がしいことに気づく。何をするわけでは無く不気味に佇む複数の人物。次第に怖くなってきた語り手は、寝ている父親を起こし、様子を見てくれるように頼んだ。寝ぼけ眼で言われるがまま外の様子を見ていた父親は、やがて食い入るように外を見始める。様子がおかしくなってきた父親に恐怖を覚え始めたころ、不意に父親が感情が欠落したような表情で、間延びした声を出した。そして、何事もなかったかのように寝室へと戻って行ってしまった。釈然としない語り手であったが、次の日から不気味な日常へ放り出されることとなってしまった。

都市伝説「くねくね」を思わせる怪談。父親は語り手に言われ見てしまい、それが何かを認識してしまったがゆえに、呆けたようになってしまったのだろう。それからというもの父親はすっかり無気力状態になってしまい、壊れたテープの様に間延びした声を出すだけ。会話はおそらく成り立つのだろうが、その様子はひどく不気味な事だろう。 そこから更に状況が悪化してしまうわけだが、その引き金を引いてしまったともいえる語り手はやるせない気持ちであることだろう。

「時刻表」は鉄オタは鉄オタでも時刻表を読んだり調べたりするスジ鉄であるとのこと。時刻表の誤表記を調べることにはまっていた語り手は時刻表を眺めては、怪しい部分を見つけ出し、実際にその駅に赴いて真偽を確かめるという作業に没頭していた。ある日、教室で時刻表を眺めていると、佐竹という男性が話しかけてくる。どうやら彼も鉄オタであるらしい。同年代の鉄オタ仲間に出会えた語り手は、今ハマっている時刻表の間違い探しについて佐竹に話すと、強い興味を持ってくれた様子だった。数か月後、面白い時刻表を見つけたと佐竹が興奮した様子でやってくる。見てみると、終点だったはずの駅から数個先の駅まで電車が走っている表記になっている。盛大な誤表記に興味を惹かれた語り手と佐竹は、二人で該当の駅へと出かけていくのであった。 これも都市伝説めいた話。終点の駅から更に数駅いった先に人知れずやってくる謎の電車。走っていないはずの区間を走り、謎の乗客を乗せてどこかへ運んでいく。全てが理解不能の展開の数々だが、佐竹がその電車に乗車しようと誘ってくるのだから、勘弁してくれという感じであった。明らかに乗ると大変な事になりそうなのに、乗ろうとする佐竹は異常だとしか言いようがない。この後更に追い打ちをかけるような衝撃の展開が待ち受けているわけだが、果たして佐竹の目的とは何だったのだろうか。怪談本には時々こういう異世界に連れていかれそうな話があるので、そういった話は非常に興味深いので好きである。

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2024年03月27日

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