あらすじ
コーヒーや紅茶同様、いや、それ以上に日本人に無くてはならない飲み物といえば、お茶。鎌倉時代に「苦いお茶」の効能を力説した『喫茶養生記』、室町時代以来の空前のロングセラー『君台観左右帳記』、茶の湯界のスーパースター・千利休の肉声を書き残した『宗湛日記』、江戸時代の茶道具の名物図鑑『古今名物類聚』、質量ともに他を圧倒する全11巻の大著『大正名器鑑』……。本書では茶の湯を知る上で欠かせない古典24冊と、それらに関わる人物22名をガイド役に、先人たちの茶の湯愛を体感できる全50話を収録。鎌倉時代から近代に至るまでの茶の湯悠久の歴史約800年を駆け抜けます。「『茶の湯』って敷居が高そう」「『古典』ってムズカシいんでしょう?」と思われたあなたに贈る、初心者向けの茶の湯入門ガイド。
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Posted by ブクログ
鎌倉・室町時代、戦国時代、信長の時代、秀吉の時代、伝承の中の利休、江戸時代から近代という章立てで、様々な古典を紐解きつつ茶の湯の歴史を辿る。歴史学的には問題があることを踏まえたうえで、茶人の精神に大きな影響を与えている利休像も取り上げていて、歴史学的な正確さと茶人の伝承をバランスよく扱っている。古典の著者に現代語で語らせるスタイルも面白く読みやすい。ここで取り上げられている古典でまだ目を通していないものはいずれじっくり。
Posted by ブクログ
〈概要〉鎌倉〜昭和初期、約800年にわたる茶の湯の歴史的歩みを、著者及び古典に登場する人物の「語り」で辿る。茶の湯の変遷を6章に分け、50話で24冊の古典とこれに関わる22名の人物について紹介、各期の特色が理解しやすいように構成されている。
〈感想〉手に取りやすく、わかりやすく、読みやすい本だった。
月刊『淡交』に連載されていたものがベースなので、基本的な知識とそれなりの動機がある読者を想定しているとは思うけれど、冒頭には、茶の湯あるいは茶道を特別な存在に感じながらも、覗いてみたいと思う「ペットボトルを含め、日々お茶を飲むすべての方々」が対象と書かれている。茶の湯、茶道史に関する書物は本当に山ほどあり、どれを、あるいは、どれから読めばよいのかはとても難しいが、オーソドックスな通史、人物史は一冊読むとして、あわせて読むのに、良い本ではないかと思う。
なお、茶器、茶道具の名が出てくるが、同書にはほとんど写真は掲載されていない。実物が残っているものは実見するのが一番、とはいえ、直ぐには無理。でも、関心はある。今はスマホで検索できるので便利。あまり不自由は感じなかった。
Posted by ブクログ
お茶を習ったことも知識もないのにお茶の世界が気になって仕方ない
しかしながら自分が何をどうしたいのかさっぱりわからないため、少しずつ本を読んでみることに…
将軍も、天下人も、お坊さんも、商人も、みんなお茶に夢中だった
帯にこう書いてある
何故だか気になりますよね…
もともとお茶は700年代半ばに中国から入ってきた
いわゆる粉末の茶葉を攪拌する「抹茶」が中国より伝わったのは1100年代
ここではその時代を出発点として鎌倉・室町時代から昭和初期までのお茶の歴史を50話にまとめてある
構成も凝っていて歴史上の人物のインタビュー形式なんかも出てくる(笑)
インタビューに応じてくれたのは…
能阿弥、今井宗久、ルイス・フロイス、松井有閑、山上宗二などなど
鎌倉・室町時代では健康で長生きするための薬として推奨されていたようだ
栄西曰く、濃い方がなお良く、苦味が大事とのこと(この時代のお茶は遠慮したいなぁ)
そして戦国時代になると寄合の文芸、茶の湯として定着してくる
さらに織田信長の時代になると茶の湯が政治と密接に結びつく
秀吉の時代も然り
ここで信長と秀吉の茶の湯の比較が面白いので紹介したい
■特徴
信長→大名茶の湯(保守的)
秀吉→利休のわび茶(革新的)
■茶の湯座敷
信長→貴人用の六畳敷、逆勝手
秀吉→利休好みの三畳、二畳
■コレクション
信長→200点、室町ブランド、唐物名物
秀吉→3000点、唐物、和物、高麗物、ルソン物、多国籍
■代表的な茶頭
信長→側近の松井有閑
秀吉→千利休を後に側近に
■濃茶の出し方
信長→本来の各服点
秀吉→すい茶(回し飲み)
■会席
信長→自ら配膳やお酌を行う
秀吉→客人と同席
■茶会の規模
信長→比較的少人数、客人を厳選
秀吉→大人数、茶会のイベント化
■しぐさ
信長→亭主は片膝立て、客人は安座
秀吉→正座の導入
もちろん千利休について、あさがおの茶の湯、黒い茶碗など多くの逸話があるが省略
利休は死によって永遠に生きることになったと著者は言う
江戸時代から近代
井伊直弼
「茶湯一会集」茶会での心技体を説く
茶会における主客の心得二十一か条もシビれる!
〜亭主と客人が同じ顔ぶれでも今日この日は二度とない
すべてに心を配り、どんな小さなことも疎かにせず、誠心誠意を尽くし…
どのような会でも一生にただ一度きりの会を実践するにあたり、最も大切なことは主客の心の持ちようと考える一期一会(ふむふむ素敵だ)〜
そして茶会後
〜急いで片付けを始めてはならぬ
亭主は心静かに茶室に戻るのだ
今日の会を振り返りつつ…一人お茶を点てて飲む
ここに茶会の極意があるという(独座観念)〜
お茶をやっていらっしゃる方には、当たり前のことなのでしょうか?
こんなに丁寧な時間を過ごすのはとてつもない贅沢ですなぁ
こんな素敵なお茶会にぜひ参加してみたいものだ
そして、お茶に関する古典書の多さに驚いた
知らない古典ばかり!
さらに悲しいことに茶道具がわからない
これは致命的
はい、勉強します!
そして著者の暖かくシビアな目線が良い
お茶に対する深い愛情と一方では史実を見極めようとする冷静さ
本を読むだけで著者は素敵な人物だとわかる
一読では実にもったいない
もう少し知識を増やして読み直したいなぁ
ガイド本的に手元に置きたくなる本書でした