あらすじ
風変わりな若い妻を迎えた男 秋の新婚の旅は 〈夜の宮殿〉その他の街を経て、機械の山へ 舞踏と浮遊/夜の芝地を埋め尽くす不眠の観衆たち/幾つかの寝室と寝台の謎 圧倒的なるイメジャリーに満ちみちた驚異と蠱惑の〈旅〉のものがたり
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Posted by ブクログ
気合の入っていた「ラピスラズリ」、ルールそれ自体の不透明性のため何が何やら見通しづらい「飛ぶ孔雀」と比べると、かなり読みやすい。
なにせ5日間の新婚旅行が時系列に沿って描かれる、それだけで随分親切な書き方なのだ。
が、そこで描きあげられるのはやはり茫漠と……それがいいのだが……まるで舞台劇のよう。
駅舎ホテル、〈山の宮殿〉、〈山のお屋敷〉という3つの巨大建造物が描かれ、それぞれに人々がごった返しているが、読者=観客の前で書割や装置が早変わりして、登場人物もそんなに多くはいないような印象。
対になっていたり、分身関係であったり。
だいいち舞踏集団の伯母が最重要人物なのだし、この伯母、作品全体をも操作できる強大な力を持っている……死後も……というとアリ・アスターのおっそろしい映画が思い出されるが、結末含め必ずしも的外れな連想ではないような気もする。
この伯母、なんでも「歪み真珠」のある短編にも登場しているんだとか、トマジっていう名前はどこかで聞いた気がするなとか、あからさまに「透明族に関するエスキス」と同じく破裂してひどい臭いというシーンもある。
感想としてまとめることも難しいが、難解というほどではない、少し肩の力を抜いて読み直してみたい。