あらすじ
明治維新後、日本は数十年にして近代民族国家としての自立に成功した。この近代化は同時に軍国化にほかならず、日本は帝国主義の時代に参加して日清・日露戦争に勝利した。
しかし、国際社会の一員として世界各国と協力し、互いに主権と独立を守という精神は次第に忘れられ、日本は軍国主義化の色彩を強めていく。軍部は立憲国家の枠を越えて独走、日本は国際的孤立化に陥った。施政者と世論を巻き込んで、大東亜戦争あるいは太平洋戦争へ至った経緯を詳説する。
巻末に著者の回想「軍国日本に生きる」を併録
目次
第一章 近代化と日清戦争/第二章 北清事変と日英同盟/第三章 日露戦争(Ⅰ)/第四章 日露戦争(Ⅱ)/第五章 韓国の併合/第六章 日米関係の緊張と軍国化/第七章 明治から大正へ/第八章 第一次世界大戦とロシア革命/第九章 軍縮と大正デモクラシー/第一〇章 金融恐慌と張作霖爆殺/第一一章 ロンドン会議と〝金解禁〟/第一二章 陸軍の発酵/第一三章 満洲事変/第一四章 五・一五事件と国際連盟脱退/第一五章 ヒトラー政権/第一六章 軍国主義化/第一七章 広田内閣/第一八章 自爆戦争へ/付録 「軍国日本に生きる 猪木正道回顧録」
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Posted by ブクログ
戦争について学びたいと思い、三鷹の「UNITE」さんで購入。
なかなか読解力が必要というか、難しい漢字にもフリガナがなかったり苦労しました。なのでしっかり理解しようと思わず、興味のあるところは抑えようという視点で読みました。
軍の人間が政治に介入しすぎ、完全に他国に遅れをとり、自爆戦争となった第二次世界大戦。
軍国という言葉が頭に刻まれました。
Posted by ブクログ
防衛大学校長も勤めた著者が、戦後日本の空想的平和主義 ー著者は、考え方が独善的で、国際的視野を欠いて一国主義的であることは、戦前・戦中の軍国主義と双生児のように似ている、と指摘するー を克服するためには、軍国主義へ至る歴史を振り返ることが必要と考えて、近代日本の歴史を概説したものである。
外交・軍事等の対外政策や、その時々の為政者や軍人の姿勢、態度に対する著者の見方や評価がかなりストレートに表されており、賛否はあるだろうが、非常に面白い。
特に興味深かったところ
・P93〜96 日露戦争勝利後の満州問題について
1906年5月の「満州問題に関する協議会」において、満州に地歩を築こうとする軍事当局者に対し、元老が文民統制を貫徹できたもの。ただ、この問題の根は深く、著者は、大日本帝国はこのため39年後に亡んだといっても過言ではないとする。
・P176 民政党内閣による金解禁について
金解禁と緊縮財政との経済政策は、浜口首相や井上蔵相をテロの犠牲にしたばかりでなく、社会的危機を招いた。柳条湖事件に始まる陸軍の膨張政策が広く国民の応援を勝ち得た背景には、浜口・井上の財政・金融政策の失敗があった。
・P245 ニ・ニ六事件等に見られる軍の考え方
動機さえ君国を思うに出たものであれば、「何をしても許される」という恐るべき動機主義の害毒が示されている。……陸軍主流に脈々と流れていたのは、法治主義や立憲主義とは両立しない天皇親政の神話思想であった。
近代日本が、どうして無謀な太平洋戦争に突入することになってしまったのかを、軍国化、軍国主義化という観点から捉えたもので、視点が明確でコンパクトにまとまっており、大変参考になると思う。