【感想・ネタバレ】ジョブ型人事制度の教科書のレビュー

あらすじ

●本書「はじめに」より
残念ながら、「ジョブ型」についての誤解が多いことを実感する。例えば、「ジョブ型は成果主義のことだ」「ジョブ型はリストラのためにおこなわれるものだ」といった誤解である。それは、日本において「ジョブ型」を体系的に学ぶための機会が圧倒的に不足していることによるからだ。

「ジョブ型」は確かに日本の人事慣行と相容れない部分のある難しい仕組みである。
しかし、日本以外のグローバルではほとんどが「ジョブ型」を採用しており、日本でも「ブーム」となって何度となく上陸するのは、「ジョブ型」の持つ普遍性ゆえであろう。
その普遍性とは「処遇は職務の価値によって与えられるものであり、年齢・性別・人種などによって変えられるべきものではない」ということである。

日本においては、「年功序列」がやり玉にあがることが多いが、「年齢が高い者が高い処遇を得るのではなく、職務価値が高い者が高い処遇を得る」ということを志向しているとも捉えられる。誤った理解に基づき、このような本質を見誤るのは望ましいことではない。

本書は、「ジョブ型」の持つ良い点も悪い点も含めて、体系的に整理し、まさにこれから導入する日本企業の「教科書」として役立つことを期待している。

【主な目次】
第1章 なぜジョブ型人事制度が求められるのか
第3次ジョブ型人事制度の到来
いま、ジョブ型制度が求められる背景

第2章 ジョブ型制度の普及拡大の実態
普及が大きく進むジョブ型制度
日本企業がジョブ型制度を導入する狙い
非管理職へも広がりつつあるジョブ型制度
全面的なジョブ型制度への移行増加

第3章 日本の労働慣行とのギャップ
日本と海外の労働慣行の違い
ジョブ型制度における異動の捉え方
新卒一括採用、ゼネラリスト育成との兼ね合い
日本企業にマッチするジョブ型制度の構築・運用ポイント

第4章 ジョブ型制度における等級制度
ジョブ型制度の根幹をなす職務等級
職務評価とは
職務評価の実際のプロセス
職務評価の留意点
職務評価を踏まえた等級体系の構築
職務記述書とは
職務記述書を整備する意味合い
職務記述書と職務評価の運用

第5章 ジョブ型制度における評価制度
ジョブ型制度における評価制度の位置づけ
職務に基づく業績評価(目標管理制度)
業績評価を巡る昨今の論点
職務遂行に求められる行動特性の評価(コンピテンシー評価)
評価運用を上手く進めるための3つの要点

第6章 ジョブ型制度における報酬制度
ジョブ型制度における報酬制度の位置づけ
全社共通の報酬制度vs職種別の報酬制度
報酬設計上の4つのポイント
ジョブ型制度における昇降給
手当の考え方
賞与の考え方

第7章 導入コミュニケーション
導入コミュニケーションの重要性
全体と個別に対するコミュニケーションの使い分け
実際のコミュニケーションの進め方
社員への人事制度の開示レベル

第8章 ジョブ型制度における運用体制・プロセス
ジョブ型制度の運用体制・プロセス上のポイント
人事部の役割・機能の変化
人事部のジョブ型制度ノウハウの蓄積・継承
ジョブ型人事制度を支えるシステム

第9章 ジョブ型制度の導入事例
[CASE1]管理職と報酬の適正化に対応した事例 大手通信業A社
[CASE2]グローバル化に対応した事例 大手制御装置メーカーB社
[CASE3]生産性向上に対応した事例 中堅精密機器メーカーC社
[CASE4]ダイバーシティに対応した事例 大手消費財メーカーD社

第10章 ジョブ型制度の導入における課題
ジョブ型制度の導入と運用を阻むもの
日本企業に染み付いているメンバーシップ型雇用の発想
運用主体である人事部門の改革

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Posted by ブクログ

メンバーシップ型、ジョブ型の意味すら正確に理解できいなかった私にとっては、日本企業におけるジョブ型人事制度導入の課題やキーワードを理解するためにとても良い本だった。
もしジョブ型制度導入の案件についたら、立ち返って読みたい本。

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2023年01月28日

Posted by ブクログ

人事制度改定実務者は読んでおくべき。
ジョブ型と銘打っているが、制度改定のポイントも押さえられていて名著です。

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2021年05月20日

Posted by ブクログ

【メモ】
・部分的な制度導入
①報酬制度にのみジョブ型制度の考え方を反映する
→職責に準じた手当を上乗せする。導入はしやすいが、貢献度が高い人材に報いるという点では十分な仕組みとは言えない。
②人材育成・配置転換にのみジョブ型制度の考え方を反映する
→人材育成・配置転換のためだけに別の等級制度を構築する。段階的措置のような位置づけ。

・ジョブ型制度を運用していると、自然と個々のキャリアもスキルもノウハウが活かせるスペシャリスト型キャリアが本流になる→総合的な判断が求められる経営者の育成には課題が残る→後継者育成プランが必要

・職務記述書と職務評価に関する2種類の運用
①都度のメンテナンス
-組織体制が変わった際、ポストの職責が変わった際に、そのタイミングで職務記述書と職務評価の見直しをする
-どこで変化が生じたのか、何が変わったのかを把握するための仕掛けが重要
②定期的なメンテナンス
-数年に一度、定期的なタイミングで全社的に職務記述書と職務評価の見直しをする
-職務記述書と職務評価の全社的な整合性を確保する目的を有する

・ジョブ型制度における評価の意味合いは、「各ポストにおける職務の全う度合い」と「職務を遂行するうえで必要な能力の開発度合い」を評価することにある。前者は目標管理による業績評価によって、後者は行動評価によっておこなわれる。
・ジョブ型制度では、各自に割り当てられた職責に整合する形で目標を立てる必要がある。
・ジョブ型制度における行動評価とは、発揮能力を指す。能力を保有しているか否かではなく、発揮しているか否かが評価の視点になる。

・ジョブ型制度は全社人事戦略と部門人事戦略を上手く整合させて運用する必要がある
-全社人事戦略:全社視点での戦略的な人材配置や人事異動、各部門の組織編成や登用に対する牽制
-部門戦略に合致した組織設計や人材配置
→CoEとBPの導入

・BPの役割
①部門責任者の組織・人事面での戦略提言
②部門内の人材リソースの最適活用
③全社人事戦略の展開・フィードバック
④部門内の良好なカルチャーの醸成
⑤ビジネスリーダーの成長支援

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2024年12月24日

Posted by ブクログ

グローバルにジョブ型人事制度を導入実績のあるコーンフェリー社が書いており、ジョブ型制度を検討するにあたり必要な考えがまとめられている。人事の今後のあるべき姿なども記載があり、勉強になる。

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2024年08月25日

Posted by ブクログ

 ジョブ型人事制度について、3大グローバル人事コンサルティング社の1つに在籍する著者らの執筆。ジョブ型導入の背景や課題のような枕テーマは全体の1/5で、残りは実務家に参考になるように執筆されている。ところどころ日本企業での導入時に生じた問題等に付言され、読者を実務から遠ざけない工夫がある。
 出発点として、ジョブ型等級制度(2015年にコーンフェリー社に買収されたヘイ社が培ってきた「ヘイ・ガイドチャート法」)について、等級は職務価値スコアによってき決まる仕組みが一部事例とともに解説される。原理は何となく理解できるが、手を動かすには、自社独自のチャート作りをするか、コーンフェリーへ頼むか、になると思われ、その関門は相応の作業量を感じさせる。
 戦略人事を実践することがベースの制度なので、ジョブ型移行の前に中期経営計画作りがあるべき。上記の等級制度等の見直しも中計に関係してくる。中計の策定プロセスに織り込んで全社工程表の中で進めていくのがスマートという印象。

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2021年07月19日

Posted by ブクログ

ジョブ型にあまり興味はないのですが、
仕事で必要になったので、仕方なくパラパラと読む。
特にコーンフェリーの考え方を知りたかったので、
コーンフェリーのジョブ型の本を選びました。

本を読んでみて、自分はちゃんとジョブ型人事制度について、
理解できていなかったとちょっと反省。
同時に、この人事制度って、ちゃんとインプリできる企業って、
果たしてどれくらい存在するのか…?
そのために、コーンフェリーのような人事コンサルが必要なんです!
みたいな感じもあって、あんまりしっくりこない。。

いや、こーやって、反対意見ばっかり言ってる奴がダメなんだ、
と反省するものの、モヤモヤ感は完全には払しょくされず。。

書籍でも述べられていますが、各ジョブの仕事内容を定義する
職務記述書を作るのがとんでもない労力、
かつ職務記述書をアップデートしていくのがとても大変で、
これを完璧に実行できるイメージがあまり持てないんですよね。。

人事部の皆さん、頑張って!って感じですが(他人事)、
「ジョブ型」という声が聞こえ始めたら、
こういった本で概要を理解するには有意義だと思います。

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2023年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2000年の成果主義ブーム、2010年のグローバル人事ブーム、最近のジョブ型人事制度ブーム。

ジョブ型の背景
変化が激しい=資本効率、年功を排した人の割当て
同一労働統一賃金
高齢化社会=年功制の打破
海外経営者の増加
スペシャリスト人材を活用したい
適材適所より、適所適材=職務に合わせて人を配置する

ヒト基準=職能資格制度
役割等級制度=過渡的、役職による給与、
職務等級制度=ジョブ型、ジョブ基準

ジョブ型の壁
企業文化
異動の柔軟性の阻害
運用負担の増大=職務記述書が役に立たない
ゼネラリスト型とスペシャリスト型のギャップ。
新卒一括採用、終身雇用、ゼネラリスト、ジョブローテーション、職種をまたいだ異動、雇用継続義務、人を中心とした組織設計、が職能制度とマッチした。
ジョブ型では、職務がなくなったら雇用は終了。定期異動はなし、人中心ではなく組織要請に従って設計し人を当てはめる。
海外では新卒も即戦力。ジョブ型では異動は合理的ではない。リーダーを育てる仕組みは、別仕立て。サクセッションプログラム。

Openworkなど口コミサイトなどで他社の情報が得られるようになった。
中途市場の活性化=新卒一括採用の変化の兆し。

職能型からジョブ型へシフトするハイブリッド型の制度。
職務価値を把握して相応の給料を払う必要がある。
スペシャリストの処遇をどうするか。職務等級の扱い。
IT関連では新卒でも1000万がありうる。
職務記述書は、都度、定期的なメンテナンスが必要。
目標管理制度と成果責任との整合性。

コンピテンシーディクショナリー=行動要件の定義一覧。

健全な管理職比率は20%。
ジョブ型の好事例は武田薬品工業
職務と人を切り離せるか。
欧米では、スペシャリストとしてのキャリアパスが存在している。

日立製作所や富士通は在宅勤務を標準にシフトしている。

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2022年02月07日

Posted by ブクログ

ジョブ型人事制度の「教科書」という題名にふさわしい内容。ジョブ型制度による等級制度・評価制度・報酬制度・導入の仕方・運用体制・導入事例などを網羅的に扱っている。網羅的に扱っているがゆえに、ひとつひとつの内容はそんなに詳しいものではないが、ジョブ型人事制度の概要、あるいは、イメージをつかみたい方には好適な入門書だと思う。
ジョブ型というか、職務を基本に人事制度を組むのは、日本以外の国では当たり前のことである。要するに日本の人事制度のみがグローバルスタンダードからずれている。新卒一括採用、長期雇用、年功的な賃金、ゼネラリスト型育成等が日本の人事制度の特徴と一般的に言われている。
実態を大企業の大卒標準者を例にとって言えば、大学卒業と同時に入社。平均的には15年ほどかけて、色々な職務経験をしながら課長になる。企業によって多少の違いはあるが、課長級の資格に到達しない人はそんなに多くない。また。課長になる年齢も、最も早い人と最も遅い人で、せいぜい7,8歳の違い。一方で日本以外の国では、新卒一括採用という習慣は多くはなく、職務ごとに空きが出たときにキャリア採用を行うことが基本、その時の報酬は市場価値ベース。
日本型の人事システムのことを、ジョブ型に対比させて、メンバーシップ型と呼ぶことが多いが、企業の中の人事制度だけが違うわけではなく、雇用慣行やキャリア採用市場の充実度や学校教育などが「全体の仕組み」として異なる。そのあたりのことも、実際にジョブ型制度に変えようとする際には、考慮しておかなければならないことなのだと思う。

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2021年06月05日

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