【感想・ネタバレ】パンデミック以後 米中激突と日本の最終選択のレビュー

あらすじ

新型コロナは国家の衝突と教育階層の分断を決定的なものにした。社会格差と宗教対立も深刻で、トランプ退場後もグローバルな地殻変動は続く。中国の覇権も勢いづく。日本はこの危機とどう向き合えばよいか。世界と人類の大転換を現代最高の知性が読み解く。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

人口動態の専門家でそれに関しては納得できる内容だった。
経済的な観点のみで政策を進めると長期的な視点を失いやすい、という記述にも同意。
ただ、各国の経済政策については他の専門家の著書も読んで考えたいなと思った。

概ねの主張としては
今後新自由主義的なグローバルな政策から各国とも保護主義的な政策へ舵を取るべき。そういう局面に来ている。

ナショナリズムと保護主義は=ではなく、差別をしなくても保護主義は達成できると著者は考えている。
各国それぞれに課題がある。
日本は何より人口動態の問題が深刻だが、能動的帰属意識がない。

日本の制度や意識改革、既存の組織方針を刷新をするのは容易ではないので正直悲観的になりそうな気持ち。

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2022年11月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いろいろな人達のトッド氏の評判が高いので、著書を読みたいと以前から思っていました。

本書ではコロナ、トランプ氏、中国、フランス、ロシア、ドイツ、欧州、グローバル経済・自由貿易と保護主義、日本の人口動態問題に関してのことが語られています。

「ロシアは騙された。NATOが約束を破って勢力を拡大し、ロシアが追い込まれた」と。

グローバル経済・自由主義は宗教に近い。自由貿易の「自由」とは奴隷制と関係がある。言葉遊び。世界の富裕層が、貧しい人々を安い労働力として使うということ。「自由」ということばそのものが嘘。
自由主義者はいつもいかに支払いを抑えるかと考えます。しかし保護主義は国家がとる自然に備わった能力。社会のなかの力のバランスを変える、格差を解消し、エンジニア、科学者、モノを想像する人にアドバンテージがあるような社会へと移行する。保護主義とは何かを創造することで、生産やテクノロジーを考え、まず労働に何かしらの重要性を与えている。

日本人向けのインタビューの内容でもあり、ほとんどは日本の人口動態の話です。
聞き手の大野博人氏が:解決があまりにむずかしい問題を前にすると、問題自体をないことにしてしまいたくなる。


選択肢は、今のままでいるか、変わるかではない。悪い方に変わるか、よい方に変わるか、でしかありません。
日本の人口動態の問題は深刻。すべての政治を超えた、国の存続の問題。
人口は減り、その人口も老いている、それはもう今までとは同じ社会ではあり続けられないという恐ろしいことが起こっているのに、日本人は議論はしても行動には移さない。
他の問題ばかり語って人口問題を絶対的な優先課題にしないで後回しにできると考えているのであれば、それは日本の幻想。
幻想として、問題の解決策が経済の中にあるように思っていること。少子高齢化の原因は家族関係、男女関係。

明治維新の時は国民全体が大変な努力をした。
明治時代の経済の方向の努力の方が物理的にはずっと大変だったと思う。 けれども当時は人々の間に非常に強い帰属意識があった。

「”人口問題に取り組むには、とても強い帰属意識が必要。ただみんなで快適に一緒に暮らす、自分は日本人だとかいうだけで満足する、受動的な帰属意識とは違う、社会で物事を前進させる力。日本人同士で何かを一緒に成し遂げようと望む意志、国民の結束する力。
人口動態問題で気づいたことは、日本は確かに文化的にはちゃんと存在する。しかしそれは能動的な私たちではない。それがあるなら人口動態にすでに取り組んでいたはず。
これだけの日本の存続の危機に、手をこまねいて見ている日本人の社会に能動的な私たちがあるとは考えにくい。ナショナリズムでさえもありません。”」

取り組まなければならない課題は、子供を持てるかどうか。社会は家族がいて、子供を作り家庭教育する。子供は色々なことを学び、働くようになる。でもそれは経済活動ではない。



出生率が理にかなっている国では、人々の姿勢ではなく、制度的な仕組みが整備されている。

プーチン氏・ロシア人は日本人と違って、ただ語っているだけではなかった。
経済をあまりに重視しすぎると長期的な視点を見失います。
人は労働力になる前に、生まれ教育を受けなければならないという事実を忘れてい待っている。長い歴史という時間軸で物事を考えていない。

日本と韓国を比較すれば、一見日本よりも深刻化しそうな人口動態問題を抱えていても、中国国内に朝鮮人はたくさんいるし、北朝鮮ともやがて統一することを考えれば、日本とはまったく異なります。

日本は島国で、自分たち自身であり続けたいと望むことを許されているように感じている。
日本文化の基本的な特徴として、極端な礼節があります。他人に迷惑をかけないなどの日本人同士の中で暮らす技術。
日本人は特殊な問題を抱えています。日本人なりの暮らし方があるせいだと思います。ただそれはそれでもっと深刻な問題でもあります。

日本の安全保障問題に関しては、憲法改正問題を議論すること自体が、問題の本質から目を逸らさせ、むしろ中国の政治指導者のゲームの中に入っていくことにもなる。
日本の歴史の基本的な部分はほとんど他国と戦争をしていないことは簡単に証明できる。
帝国主義、植民地主義的な国だったのは極めて短い期間。
人口の半分が50歳以上になるほどの老いた国の年齢構成の国にどんな防衛策が可能なのかの視点抜きで法律や装備を議論しても仕方がない。
長期にわたって可能な防衛手段は核武装。

安全保障という点でもまずは優先するべきは人口問題。

東京は見た目は問題がない。でも地方に行けば、東京からそう遠くないところで、たとえば下田では、空き家、さびたシャッター、古ぼけた家財などを目にします。地方では、老化,老朽化、荒廃しているものを目にすることになります。

複雑なことは理解しようとするともっと複雑になる。
日本人には普遍的なものを追求する能力があります。日本人自分自身への信頼の問題。
社会が出産と子供の教育に投資することこそが長期的に見返りのなる投資なのです。

根本的に人づくりが大切なことで、確かに日本人全体が、根本的に日本の存続にもかかわる、大変深刻な少子高齢化の人口動態の問題から目を逸らしていると思わされました。

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2022年11月19日

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