【感想・ネタバレ】続 明暗のレビュー

あらすじ

漱石の死とともに未完に終わった『明暗』──津田が、新妻のお延をいつわり、かつての恋人清子に会おうと温泉へと旅立った所で絶筆となった。東京に残されたお延、温泉場で再会した津田と清子はいったいどうなるのか。日本近代文学の最高峰が、今ここに完結を迎える。漱石の文体そのままで綴られて話題をよび、すでに古典となった作品。芸術選奨新人賞受賞。

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Posted by ブクログ

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「一体何処から遣り直しがきかなくなってしまったのだろう」

単行本が出版されてすぐに読んだ記憶があるので、1990年以来の再読となる。
黒船的な登場は衝撃だった。
明暗の続きをそのまま読みたいという願いが叶ってしまった。

文庫の裏にもあるが、この作品自体がすでに古典。
奇跡の一冊。

個人的に集中して漱石全小説を再読した後に読むと、感無量としか言いようがない。

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2020年06月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

漱石はお延に対して、もう少し距離のある描き方をしていたし、それに比例して、吉川夫人のヒールぶりは本作で高まっている。
小説としては面白い。おそらく漱石が完結させていたよりも。

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2014年01月24日

Posted by ブクログ

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予想以上に自然な繋がり方だった。原作と最も自然な繋がり方を探った、とあとがきにあったが、よくここまで再現できたな、という感想である。
何度も滝へ身投げした女性の描写があるので、お延の運命を暗示しているのかと単純に思わせておいて、最後はお延の自然に身を委ねる、吹っ切れた姿で終わるのがなんとも清々しくて良い。
あとがきにあった通り、漱石は文明論を登場人物に語らせるので、どうしてもストーリーへの興味が失せがちだったのが、続明暗では、そのくだりが全くなかったので、漱石のストーリー性と人物描写の巧みさを抽出して読んだかのようで、とっつきやすかった。

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2019年01月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

異彩を放つ本歌取り――   2005.10.19記
 漱石の「明暗」を読んでもいないくせに水村美苗の「続 明暗」を読んでみた。いわば本歌取りを鑑賞して未知の本歌を偲ぶという、本末転倒と謗りを受けても仕方のないような野暮なのだろうが、それなりにおもしろく楽しめた。
本書冒頭は、漱石の死によって未完のまま閉じられた「明暗」末尾の百八十八回の原文そのままに置かれ、津田と延子の夫婦と津田のかつての恋人清子との三角関係を書き継いでいく、という意表をついた手法が採られている。
換骨奪胎という言葉があるが、過去の作品世界を引用、原典を擬し異化し、そこに自己流の世界を構築するという手法は、古くは「本歌取り」などめずらしくもなく、今日では文芸に限らずあらゆる表現分野に遍くひろまっているとしても、本書の成り立ち方はとりわけ異彩を放つだろう。
著者は文庫版あとがきで「漱石の小説を続ける私は漱石ではない。漱石ではないどころか何者でもない。「続明暗」を手にした読者は皆それを知っている。興味と不信感と反発のなかで「続明暗」を読み始めるその読者を、作者が漱石であろうとなかろうとどうでもよくなるところまでもっていくには、よほど面白くなければならない。私は「続明暗」が「明暗」に比べてより「面白い読み物」になるように試みたのである」という。
小説細部は晦渋に満ちた漱石味はかなり薄らいでいるとみえるも、なお漱石的世界として運ばれゆくが、延子の夫津田への不信と絶望に苛まれ死の淵を彷徨った末に、新しき自己の覚醒にめざめゆく終章クライマックスにおいては、もはや漱石的世界から完全に解き放たれて作者自身の固有の世界となった。

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2022年10月12日

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