【感想・ネタバレ】生まれてこないほうが良かったのか? ――生命の哲学へ!のレビュー

あらすじ

「生まれてこないほうがよかった」という思想は、人類2500年の歴史をもつ。本書では、古代ギリシアの文学、古代インドの宗教哲学、ブッダの原始仏教、ゲーテやショーペンハウアー、ニーチェなど近代の文学と哲学、そして「誕生害悪論」を説くベネターら現代の分析哲学を取り上げ、徹底的に考察。人間がこの世に生まれてくることは誤りであり、生まれてこないようにしたほうがよいとする反出生主義を世界思想史の中に位置づけ、その超克の道を探っていく。反出生主義の全体像が分かる本邦初の書である。

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Posted by ブクログ

夢中で読みました。明確な言葉で論理的に繰り返し確認しながら書いてくれてるので読みやすかった。また読み返します。何回かにわたって講義を受けた気分。手軽なハウツー本ではなくこれからも考えてゆく途上にある哲学です。人間への愛がある。自分の陥ってる状況がわかってきたし行き詰まった感覚から緩やかに解放されていくだろうという希望が見えました。

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2022年06月17日

Posted by ブクログ

とても平易な文章で読みやすかった。
ベネターの誕生害悪論から反出生主義の変遷を古代ギリシャまで遡り、西洋から東洋へ、その横断を辿るのも面白かったし各章の論考も充実。最終的には誕生の肯定を目指す本なので、読み終える頃には気持ちが軽くなっていた。

個人的にはショーペンハウアーと仏教の章が特に面白かったのだけど多分それはショーペンハウアーの哲学をほとんど知らなかったからだと思う。逆にインド哲学が難しくてわかるようなわからんような…そしてこの文脈にニーチェを乗せると彼がいかにぶっ飛んだかが分かって面白かった。人を超えるのだ…

シリーズもののようだけどこれ一冊でも十分楽しめたかな。けど出産の同意不在論についてはもっと読みたかった…まだ発展途上の議論のようだけど(川上未映子『夏物語』に繋がりますね)。
そして気になってくるのがハンス・ヨナスなのだった。次の本でヨナス哲学にもっと切り込んでいくなら買いたい。

各章のサブタイトルが「世界と人生に対する呪詛」とか「自殺について」とか「無意志こそ最強」みたいなネガティブワードばっかりでそれだけで面白かったのに極め付けにブッダの章で「一切皆苦」が出てきたときには堪えきれずに笑ってしまった もう生まれてきたくない人たちがこんなにたくさん…

でも反出生主義が自殺を必ずしも肯定しないというのは興味深かった。「生まれない方が良かった」と「じゃあ自殺すればいい」は違う話でこれは時代も超えてショーペンハウアーもベネターも意見が同じでへえーなんかすごいなと思ったのだった
何れにしても皆さんの立場は一切皆苦なんですけどね…

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2021年02月06日

Posted by ブクログ

「生まれてこなければよかった」という思想の歴史の長さに驚かされる。洋の東西を問わず、様々な時代の様々な歴史家や小説家、哲学者が向き合ってきた思想。個人的にもう少し掘り下げてみたい思想もあり、読んでよかった。

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2021年02月06日

Posted by ブクログ

この分野の基礎文献。

反出生主義は文学も含め、多くの分野に根を下ろしていたのか。

ニーチェを生の肯定の哲学として読む試みは刺激的。かれをさらに乗り越えていこうというのも重ねて刺激的。

心理的と哲学的なレベルを分けて終盤は論じている。

本当に多くの論点と難題が横たわっている「世界哲学」のテーマであることがよく分かった。

著者の切実さに基づいた思索は、論拠を何度も崩しては堅め直し、哲学するとは何かも学べる。

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2020年12月04日

Posted by ブクログ

生まれてしまっているという現実を受け入れたところからはじまる、「生まれてこないほうが良かったのではないか」という問いをめぐる古今の思想家の紹介や批評。
著者は、このような問いを含む「生命の哲学」の構築をめざしているという。

なんのために生きるのか(生きているのか)、という問いの問題圏で類似する幾つかの問いの形があるが、そのなかでも、この問いの切り口を採用したからこそ浮かび上がる問題とその考察を、心地よく感じた。

分かりやす答えがあるわけではないが、考えの整理と著者なりの、肯定に向けた(意思ある)見解が示されている。

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2025年08月04日

Posted by ブクログ

存在することと生成することの違いに基づく議論は難しかったが、反出生の考え方が古代にまで遡り、常に存在し続けてきたことに驚き。
本題とは逸れるがニーチェの永遠回帰という考え方は初めて知り、刺激的だった。

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2023年06月26日

Posted by ブクログ

面白かった!
誕生肯定とニーチェの運命愛の概念が特に好きで、自分の人生観を変えてくれたと言っても過言では無い。

ブッダやショーペンハウアーの考え方も分かる。
(数年前まではうつ病もあり他者には強要しない反出生主義の立場だったので、辛い時人間はこうなっていたかもしれない平行世界の存在を考えてしまうというのも嫌という程当時は実感した。)
そして歴史的に苦悩を抱える人間達が存在したこと自体も自分にとっては凄く救いになったので反出生主義の人達も存在はしていて欲しい。

だがやはり何が実現可能かを考え続けない限り無駄に苦しむだけという事も理解しているので今の精神状態でこの本が読めて良かったと思う。

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2022年11月20日

Posted by ブクログ

初めて反出生主義に触れた時、「感覚的にわかる気がする」と思った。現代の病理、はしかみたいなもの、誰もが生きてりゃ思うことをそれっぽく言ってみた露悪的なもの、と「見做したい」欲望を感じた。
が、反出生主義こそ逆説的に生を考える契機となっていることを評価しなければならない。優生思想然り、わたしたちは克服できるのか、人生にYESと言える言えるのか。
著者が指摘するまでもなく、原始仏教やユダヤ、キリスト教のように現世を超えた世界に理想を見る考え方は広義の反出生主義だ。
この意味で言えば、反出生主義は決して現代思想ではない。ただ、科学技術が進歩して人間が生命の在り方に介入できる余地がどんどん膨らんできたからこそ突きつけられた課題である。
本書は、これまでの哲学が積み上げてきた成果から反出生主義に挑むための武器を抽出してみせる。本書で答えは出ない。戦士自らが記した、旅のプロローグであり、同志に送るエールである。

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2022年04月16日

Posted by ブクログ


反出生主義本が新聞で特集されていたので気になって。

生まれてこなければよかったと考えるのは確かにそうで、ベネターの著作によって反出生主義が注目されていることに対する考察本。

単に「生まれてこなければよかった」一言で片付けられてしまいがちだが、その思考をヨーロッパ哲学や仏教を紐解きながら整理していく。7章で言及されているように、「生まれてこなければよかった」という思想は綿密に紐解けるものであり、そもそも比較不能なものであり議論としては不完全なものである。(ここが肝なのだがちょっとその辺りの議論を理解するのに骨が折れて流し読みしてしまった…)

作者も述べているように、「生まれてこなければよかった」という思いには常に絡め取られ続ける。

個人的には、そう考える方が楽だし。
そうした考えを読み解き答え続けなければならないし、先人達もそうしてきた。

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2021年05月09日

Posted by ブクログ

ショーペンハウアー、デイヴィッドベネター、ウパニシャッドの本も読みたくなりますね。「人間の生命はなんの意味もない」「人類は計画的に絶滅するべきである」そして自殺反対論。地球上に一番いらなかったのは○○だったのか、と感心しました。でも、このような考えを人間が考えることができたのなら、そこだけは人間が必要だったのかもしれないね。とても考えることが楽しくなる本でした。

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2021年04月08日

Posted by ブクログ

「私が存在していないこと」という反実仮想はありえるとしても「私が生まれてこなかったこと」という反実仮想は不可能だ(p.285)、というのは面白い論点。
しかしそうすると、結論は宗教性を脱色した予定説のようなものに落ち着いてしまいそうな気もする。
続刊を待ちたい。

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2021年03月06日

Posted by ブクログ

初めての本格的な哲学書だと思う。嫌われる勇気はちょっと違うと判断して。
難解そうだったので勉強するつもりでノートに書き出したりしながら読んだ。
心理学、精神医学的な「生きていたくない」話はたくさん目にしたけど、哲学的に考えるやり方は新鮮だった。
そして大変明快で最後には腑に落ちた。
高卒の40代発達障害の脳で何とか浅く、ではあろうが理解ができた。
物心ついてよりまとわりついていた「希死念慮」が薄らいでいる。
この先も著作がある予定なので楽しみ。

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2021年01月10日

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ニーチェに関する内田樹先生の批判を読んだ後だったので、とても面白かった。ニーチェ、わりと神秘学的な傾向をもってたのね。
吉野弘さんの「I was born」を読んで腑に落ちなかった人は、読んでみるといいかもしれない。併せ読みでシェリー・ケーガン先生の『DEATH』も。
あと、男性側からの考察だけでは手落ちにすぎる感が拭えないので、ぜひ、女性、出来れば出産や育児を経験した論客からの考察が読みたい。

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2020年12月29日

Posted by ブクログ

私は哲学の面からじゃなく生物学的な面から反出生主義を見たかったんだなと、読み始めてから気付いた。が、「生きようとしているのは個体ではなく種属」、「人間が生き続けようとするのは生への愛着からではなく死への恐怖があるから」、「親が産むのはこの私でなくてもよかったのでは?」など、いくつか「そうそう〜」と頷きたくなる考えも見つかった。
要するにこの本が言いたいのは、「生まれてこない方がよかったって、生まれてきてない世界を生まれてるあなたが想像できるわけないよね?もう生まれてるんだからこれからの人生のことを考えようぜ」ってことかな。

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2025年12月04日

Posted by ブクログ

反出生主義的な思想について、古代ギリシャの詩人テオグニスから仏教、ショーペンハウアー、ニーチェ、ベネターと続く背景を知れる前半部分は面白かった。

特にショーペンハウアーのペシミズム的な思想から始まり、ニーチェは永劫回帰や運命愛という真逆な発想に辿り着いた箇所は面白かった。

ただし、ベネターの思想を否定する後半箇所は、そんなに面白くなかった。私自身、ベネターの反出生主義や人類を絶滅させるべきといった極端の思想には賛成しない。しかし著者による誕生肯定の論理には、どうにも結論ありきの欺瞞のようなものを感じて、あまり納得できなかった。

著者自身も生まれてこなければ良かったと思うことがあると述べており、誕生否定を乗り越えて誕生肯定したい気持ちはあると十分理解できる。私もできたらそれを信じたい。しかしそれは論理だけでは不十分なんだろうなと感じる。(もちろん著者もそれは十分承知していると思われるが)

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2025年04月02日

Posted by ブクログ

時間がかかった。子を産むことに対する疑問が出てきて読み始めたものの、自分がどういうマインドで生きていきたいかが分かった。
「生まれてこないほうがよかった」は実現不可能。それならば未来に向けてその思いを解体する道筋を探していく。

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2024年10月02日

Posted by ブクログ

「生まれてこなければよかったのか?」という問いは、宗教的な背景を持つ身として幾度となく考えてきたテーマです。
著者の森岡氏は、自身もそんな問いを抱えつつ、哲学的な視点から反出生主義に理解を示しつつ、それを超克するための「誕生肯定の哲学」を模索します。
読んでいくと、哲学的な理解を前提とするかなりハードな内容で、半分も理解できたかどうか…というところです。
ただ、森岡氏のような「誕生肯定の哲学」は待ち望んでいたところでもあったので、この後出版されるものにも期待しつつ、己の哲学としても深めていきたいところです。

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2024年06月29日

Posted by ブクログ

読みながら頭に流れるのは「砂の果実」。調べたら太宰の「生まれて、すみません」からヒントを得た歌詞だった。anti-natalismはっきりと「反出生主義」という訳が与えられたのはいつなのだろう。昔から哲学で論じられ宗教でも語られた思想が、明確な日本語となって一大ブームとなっている。思想として捉えるべきものであり、考えなしに踏み込むには毒薬である。だから産むなは短絡的が過ぎる。

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2021年03月13日

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