あらすじ
日本文化の核を育み、社会の階層をかき回した、渾沌と沸騰の200年! 豊かな乱世の絢爛たる文化――
日本の歴史の中でも室町時代の200年ほど、混乱の極みを見せた時代はなかった。が、一方では、その「豊かな乱世」は、生け花、茶の湯、連歌、水墨画、能・狂言、作庭など、今日の日本文化の核をなす偉大な趣味が創造された時代でもあり、まさに日本のルネサンスというべき様相を呈していた。史上に際立つ輝かしい乱世を、足利尊氏や織田信長らの多彩な人物像を活写しつつ、独自の視点で鮮やかに照射する。
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Posted by ブクログ
大学院生の水野氏からお借りして読ませていただいた。氏は山崎正和さんに興味を持ち熱心に研究していて、この本の存在を私に教えてくれていた。
「日本の歴史10下克上」を読み終わったのでその復習ということで読んでみた。
室町時代に活躍した魅力ある人物が描かれていて、そこに変わりゆく世をいかにして生き延びるかということが鮮やかに抽出されている。
特に落ちぶれていく貴族の一人であった三条西実隆の項には次のようにある。
制度に支えられた自動的な人間関係が毀されたとき、人びとは手づくりの濃密な交渉を持たざるを得ないのであり、その煩に耐える強靭な人間好きだけがこういう時代を生きられたのである。
という指摘にはこれからの困難な時代を生き抜いてゆくためのヒントになると思う。
また、この本の後半に収められた「日本文化の底を流れるもの」という講演の中には、有名な世阿弥の「秘すれば花…」の解説があってとても参考になった。風姿花伝は芸能論ではあるが、日本の芸術は西洋の芸術とちょっと異なっていてそこにはコミュニケーションの問題が存在していて、その観点から読むととても有益だと思われる。なぜなら、変わりゆく時代に生き延びる手づくりの人間関係において、コミュニケーションはとても大切な要素である。