【感想・ネタバレ】ニューロダイバーシティの教科書のレビュー

あらすじ

neuro(「脳・神経」)、そしてdiversity(「多様性」)。
この2つの言葉から生まれたneurodiversity(ニューロダイバーシティ)は、「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方であり、社会運動を指す言葉です。

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Posted by ブクログ

個人的な評価ともいえるが、とても良い本。
いわゆるアスペルガーから触れていき、障害やマイノリティーなどの『ニューロダイバーシティ』をわかりやすく解説している良書。
脳の神経の違いにすぎない、などの科学的根拠に基づく多様性の考え方が身につく。

ところで、僕はADHDだが、日本では悪のレッテルが貼られ差別されることも多い。非ADHD者が多数派、というだけなのだが「数のチカラ」は厄介といわざるをえない。

これまでは、精神医学や心理学によるアピールではなく、遺伝学や人類学、論理学、歴史などの知識を使って、「なぜADHDという名称なのか」からはじめ、その妥当性、科学的根拠がないことなどを他人にがんばって説明してきた。

それはもう、ものすごい労力と時間を使う。非常に疲れるのだ。

そんな中、この本のタイトルにあるとおり「ニューロダイバーシティ」という言葉が存在することを知って衝撃を受けた。

これまで苦労してきたことをこの言葉を使えば簡単に省略してしまえるのだから。
これからは、
「ニューロダイバーシティという考え方がある。今は主流となっている」などと言えば済むわけだ。

言葉の威力とは、すごいものだ。

これからは、何か科学的な、あるいは論理に矛盾があるけれど説明に労力を要することについては、なにか造語を作ってしまえばいいな、などと不思議な気づきにつながった。感謝する。

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2025年01月20日

Posted by ブクログ

脳や神経由来の異文化ということにハッとしました。
つい息子にどうして当たり前にできないんだろう…と思っていたことが、まさに注目する視点の違いだったりと、色々と気づきを得ることができました。
とても良い入門書でした。

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2022年02月09日

Posted by ブクログ

誰でも得意不得意があり、それは脳や神経のメカニズムの違いだという。能力差を「障害」「個性」のどちらと受け止めるかは、環境とのマッチングの問題であり、能力差自体に良い悪いはないという。自分と全く同じ人などいないのだから、それぞれの違いを互いに受け止めつつ、よい方向を向ける社会でありたい。

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2021年06月27日

Posted by ブクログ

ニューロダイバーシティという言葉についての意味や考え方がわかった。筆者の私見も散見されるがこの部分も踏まえて、この言葉の持つ意味を知ることができると思う。一つ思うのは「障害」という言葉が環境との相互作用によるものという視点があるなら、個に頼る議論ではなく環境による議論もしてほしかった。

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2021年08月10日

Posted by ブクログ

「神経多様性」という観点から、特性の違いを見ていこうというもの。

ひとりひとりの違いを、相互に尊重し合う世の中を目指すこと。

ひとつでも多くの「半径10mの社会適応」を生み出していくこと。

とても興味深い内容の本でした。

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2021年03月25日

Posted by ブクログ

発達障害について、多文化共生・ダイバーシティの観点から捉えようとする考え方は新鮮だった。ろう文化や浦河べてるの家の先例、今も発達界隈で日々行われている様々な活動を踏まえれば、妥当性もあるなと感じる。
また脳科学は眉唾という先入観があったが、そちらの研究は急ピッチで進んでいるという記述があり、考えを改めて今後に期待したいと思う。

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2021年03月21日

Posted by ブクログ

このところろくに本を読んでこなかった。
Twitterで見かけてなんとなく気になって注文した、
久しぶりの紙の本。
厚さに圧迫感がなかったこともあって、
久しぶりにそのまま開いて読み進めることができた。

自閉症スペクトラム障害を切り口に、
(知識として知る)ことと
(仕組みや理屈から)理解することとの違いとか、
脳の話が絡むのはやっぱり面白いなあ…

そもそもこの手の障害とされるものの実態は、
何かの欠落や欠損ではなく
むしろ脳の処理方法の時点での違いによる
文化の差とでもいうべきものなのだ、
とか、

コンピュータでいうところのアプリの有無というよりはOSの違いによる差であるという例えとか、
それこそその仕組みも表出もスペクトラムなのであって、
私ら全員がその多様性の中身なのだとか。

現実問題としては
そんなにニュートラルな人間ではいられないだろうけれど、
ニューロダイバーシティという視点を
頭に入れておくことで、
もう少し世界とうまく付き合えるように
頑張れるかもしれない。

相手が小鳥や鈴であれば
「みんなちがってみんないい」は
むしろすんなり成り立つんだけど、
人間どうしの場合でもそうなるためには、
まず「みんなちがう」ことを現実問題として共有した上で、
じゃあ「みんないい」状況に
どうやって持っていくかを
きちんと組み立てていかないといかんのだよな。

ここで書かれていることは、
筆者も語る通り理想論なのだろうけれど、
もがいてでも到達する価値のある理想だと思った。

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2020年12月16日

Posted by ブクログ

私たちはどのような状態であろうとも、孤立することなく、社会や制度、そして、集団と関わることで、性別、国籍、肌の色、生まれ、環境等、障がいの有無を問わず本質的な意味での多様性を説く良書である。
多様性は一時期誤った解釈で捉えられてしまい、現代(2025)において、誤った解釈としての多様性は社会という大きな流れとして国内外で収束している。だが、それが残した摩擦と傷跡は大きい。
本著が主張する多様性とは一体何だろうか。その本質的な多様性は「全員が違いを許容し合う」だけでは成立しないという点であり、全員誰もに「違いがあること」を前提にし、時には妥協や線引きも含む現実的な共存の枠組みが重要だ。「認め合う」だけでなく、「違い同士の摩擦や矛盾」に向き合う姿勢が問われている。
そして、多様性という言葉の枠組み自体が新たな排除や暴力性を生み出す場合があるため、「多様性を『認めない』立場の排除は真の多様性ではない」など、内包的で構造的な問い直しが必要だと私は理解し解釈している。
現代において、多様性という概念が形骸化・逆風にさらされている今こそ、安易な価値判断やラベル付けを脱し、本質的な「違いの活用」「環境の変化」が問われているという点で私たちに新たな視点と問いと思索を深めることができるだろう。
私は目に見えることも目に見えないことも自分や他人のことを全てを許容し完全に理解することは不可能だと思っている。だが、それを知り、私やあなたの手が届く範囲で寄り添い、無理をしない、負担を強いない距離でいられるのであればそれは健全な距離感と言えるだろう。無論、これは私的な話である。職業的で専門家においては、積極的に関わる姿勢が重要であろう。
これは他人事ではなく、私やあなたという個人への尊重を兼ねた内容ということを理解するとより内容を深く理解するであろう。本著は多様性とは何かを知る切っ掛けと思索を巡らせて問い続けるために必要な良書であると言えるだろう。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

科学的(神経学的)にどのような差異があり、それに対してどのような理解をしていけばよいかという内容ではない。
あくまでも医学的診断=治療する対象という視点をとりはらって、どのように個性としてその多様性を尊重した社会にしていけるかという話。
ニューロダイバーシティについて、どのような議論があるか紹介されている点もよいし、個人的には「著者自身はこう考える(願いもこめて)」という主張が入っている点に好感をもった。

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2025年10月19日

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