【感想・ネタバレ】刻のレビュー

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Posted by ブクログ

多分に私小説。ソウルで語学や踊りを習いながら暮らす日々の閉塞感……というか何とかしたいけど何ともならない気持ちが描かれる。全体に灰色がかったような世界。読んでいても苦しい。
この灰色がかったもどかしさは「在日」特有のものなのだろうか。母国と慣れ親しんだ暮らしがある国とが違い、さらにどちらの国の人間という意識もいまいちもてず「在日」というところに拠点をおこうとしながらも、その立場の弱さに煩悶するというような。
李恢成といい、この李良枝といい、少し下って鷺沢萠といい、根底にあるもどかしさは共通しているような気がする。彼・彼女らはなぜこうも煩悶するのだろうかと、その立場にない自分としては思う部分もある。
現代の在日作家で私が思い浮かぶのは深沢潮かな。『緑と赤』は少しもどかしさを描いている気がするけど、あれは私小説の路線とは違うだろうし、どこか「負(というのは語弊もあるだろうけど)の遺産」的に扱っていた「在日」というものが変わりつつもあるのだろうか。

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2022年10月30日

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