あらすじ
コロナ禍により、営業継続の危機に瀕している日本の山小屋。
山小屋主人の肉声を多数取材し、山小屋存続のヒントを探る。
2020年、「コロナ禍」により、大半の山小屋が、定員を大幅に減らしての「営業継続」か、もしくは「休業」のいずれかの選択を余儀なくされた。
営業継続を選択した山小屋のほとんどが、売上は激減しながら、感染対策に多大な労力を強いられた。
その結果、民間経営の山小屋の多くが、営業継続の危機に陥っている。
山小屋は、ただ登山者を泊めるだけの存在ではない。
登山道整備、トイレやキャンプ指定地の管理、悪天候やケガ・病気などの際の避難場所、そして遭難救助の拠点にもなるなど、さまざまな公的な役割も担っている。
山小屋が営業をやめてしまえば、荒れた登山道を歩かざるをえなくなり、山小屋やテントを利用しての縦走ができなくなり、遭難者は増え……、と、登山愛好者にとってよいことは何ひとつない。
本書は、山小屋が2020年のシーズンをどのように過ごしたのか、多くの山小屋を取材し、実情をレポートする。
そして今後、山小屋はどうしたら存続できるのか?
私たち登山者は、山小屋存続のためにどんな協力ができるのか?そのヒントを探る。
[登場する小屋]
黒百合ヒュッテ(八ヶ岳)、高見石小屋(八ヶ岳)、池の平小屋(北アルプス)、北岳肩の小屋(南アルプス)、甲斐駒ヶ岳七丈小屋(南アルプス)、薬師沢小屋(北アルプス)、マナスル山荘本館(入笠山)、両俣小屋(南アルプス)、真砂沢ロッジ(北アルプス)、ほか。
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Posted by ブクログ
山小屋は基本的に、大部屋で登山客がギュウギュウになって寝るような場所だった。コロナ前は、1枚の布団で2人で寝たり、夜中は他人の足に蹴られたり、そこらじゅうのイビキで目が覚めたりした。食堂や談話室では、初対面の他人と山の話で盛り上がったりしたものだ。
当然ながら、「密」な状態であり、新型コロナの感染リスクが極めて高い場所だと言える。パンデミック以降、「完全予約制」「1人布団1枚&衝立仕切り」「談話室利用禁止」など、感染対策を施しながら、苦労して経営を続けている山小屋は多い。これらの対策があっても、人数制限を行うため、売り上げはコロナ前の半分程度というところか。
この本を読んで、山小屋の存在意義は必ずしも登山客の宿泊だけではないことを知った。高山植物維持・害獣(ニホンジカなど)駆除・登山道の清掃や整備など、環境維持の役割を担っていることが分かる。
主な収入減が登山客からになってしまうが、今後はサービスを出来るだけ維持しつつ、値上げに踏み切ることもやむを得ないと思う。また、登山客としては、予約なしで飛び込み宿泊をするような振る舞いは今後認められないと痛感した。