あらすじ
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カモフラージュ、なりすまし、威嚇、死んだふり・・・虫の面白さは「擬態」にあり。なぜ虫はこんな色と形をしているのか。擬態を考察すると人間がわかる。解剖学者・養老孟司の思想の原点。初心者から本格的な虫好き(虫嫌い)まで、圧巻のビジュアルとともに<自然の見方>が学べる1冊。すべての現代人に贈る珠玉の虫エッセイ! オールカラー。
「私が虫なら、ヒトを笑う。こういう生き方があることを教えてやりたいよ」
擬態はゲノムのすることなのに、脳がすることにソックリである。もちろんそれは、神経系の機能の反映だからである。脳はそこに自分の秘密を見る。十九世紀およびそれ以前の科学者たちは、虫がする本能的行動を見て感嘆した。これこそ神の設計にほかならない、と。かれらは進化を知らなかった。だから、本能のほうが先で、神経系がそれに従って形成されたことに気づかなかったのである。かれらは虫を見て、本能を発見したつもりだったが、発見したのは、自分自身の出自だった。いまでもそうは思っていない人は、たくさんいるはずである。脳はなにか特別で、心というはたらきを示す。虫は馬鹿の一つ覚えをくりかえしているだけだ、と。(本文より)
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Posted by ブクログ
「虫は人の鏡」、このタイトルの意味が、本を読んでわかった。虫を含めた自然は学びの宝庫。私の場合は植物を通して学び続けていきたい。
〈本から〉
擬態は情報系内部の現象
われわれの網膜は三色原理だが、鳥は四色原理を使う
ピカピカ光って飛んでいるホタルは、つまり雄である。雌はジッとしていて、雄が光って飛んでくると、雄の信号に合わせて光る。
ゴキブリを馬鹿にする人は多いが、オーストラリアのゴキブリには、子どもを養育する種類が複数ある。種によっては腹に腺があって、その分泌液を子どもがなめる。早い話が、哺乳するのである。あるいはモグラオオゴキブリは、地中に穴を掘り、そこに餌を運んで子どもを育てる。こういう虫を見ていると、やはり私は感動する。自分はゴキブリにも劣る。そういう気がすることもある。
略
こうして考えていくと、対象がなんであれ、結局私にものを教えてくれてきたのは、自然だということを知る。
その自然は、見ようとする気持ちさえあれば、なにもテレビやインターネットの中だけではなく、皆さんの周辺にいくらでもあるはずである。この本が、いくらかでもそういうものを見よう、考えようという、皆さんの気持ちのきっかけになったとすれば、私にとって、それに勝る幸福はない。