あらすじ
米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の終了を決定。リーマン・ショック以降6年間続いた超金融緩和からの脱出を主導するのは、女性初のFRB議長ジャネット・イエレンだ。夫アカロフと師トービンはともにノーベル経済学賞の受賞者、自身も経済学者からセントラルバンカーに転じたイエレンは、どのような経済観の持ち主か。そして出口戦略の舵取りをどのように進めようとしているのか。ワシントンで現地取材にあたった記者が、その実像に迫る力作。
雇用を大事にする「ハト派」セントラルバンカーと見られていたイエレンが出口を主導する真意は?金融正常化に足踏みする日本との違いは?――「テイパーリング」「フォワード・ガイダンス」など出口戦略を読み解くキーワードの解説を交えながら、グローバル・マネー経済のこれからを読み解く。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
・さすがのグリーンスパンもイエレンのしつこさに負けて、「インフレ率が適切に計測されるのであれば、ゼロだと思う」と告白した。
物価が上がりもしなければ下がりもしない状況。それが最適な状態とグリーンスパンは考えていたのである。これはインフレとの戦いを最重視していた1970年代以降のセントラル・バンカーに多い考え方だ。だからプラスのインフレ目標設定にも慎重なのだ。
だが、経済学者の間では、インフレ目標はインフレ抑制だけでなくデフレ阻止のためにも有効で、統計上のインフレ率が物価の実勢よりも高めに出る傾向があることを考慮すると、その適正水準はゼロではなく、2%程度の緩やかなプラスという見方が多かった。
・FOMC(連邦公開市場委員会)の「お笑い指数(Laughter Index)」というのがある。FRBはFOMCの議事録を5年後に公開しているが、その中には討議中に起こる笑い(Laughter)も記録されている。この笑いの回数を米調査会社ビアンコ・リサーチが集計したところ、議長がグリーンスパンからバーナンキに交代した2006年以降に笑いの数が急増、サブプライム危機が表面化する直前の07年6月27~28日に笑いの数は81回とピークに達した。独裁者グリーンスパンから解放されて、和やかになったバーナンキ体制の初期。だがその時に、住宅・信用バブルは膨らみ続けていたのだ。