【感想・ネタバレ】ダリウスは今日も生きづらいのレビュー

あらすじ

イラン出身の母と白人の父をもつ、ペルシア系アメリカ人のダリウス。家でも学校でも疎外感を覚える彼は、母の故郷ヤズドを家族で訪れることに。そこではじめての友達を見つけ……。アメリカの様々な年間ベストブックスに次々と選出されたベストセラー! 民族、人種、性的指向、うつ病、多重のアイデンティティに悩む16歳の青春物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

アメリカのポートランドに住むダリウスはイラン人の母とアメリカ人の父を持つペルシャ系アメリカ人。高校2年生。小2の妹ラレーがいる。ペルシャ系とはいえ、ペルシャ語はあまり話せない。ラレーはその点、小さな頃から教えられていた為ペルシャ語で祖父母と会話できる。
高校ではいじめを受けているが、親にはあまり話せずにいる。言えばガッカリさせてしまうから。
ダリウスは13歳から鬱の薬を飲んでいる。父からの遺伝で、父も鬱病。建築事務所の共同経営者をしているが、ダリウスは数学が苦手で、跡継ぎにはなれないだろう。
ダリウスは母や妹の事をとても大事にしている。しかし、父の事は素直に受け入れられない。父は跡継ぎにはなれそうもない、お茶が好きで、パッとしない自分の事を恥じているのではないか。ラレーがいれば自分はいなくてもいいのではないか、というマイナス思考に取り憑かれている。
そんなある日、母方の祖父の病が判明し、母の故郷ヤズドに行く事になる。
そこで、ソフラーブに出会う。初めての友達。サッカーを通して地元の子たちとも知り合う。傷つきやすいダリウスの心をソフラーブはわかってくれた。ソフラーブもまた、宗教の為、疎外されていたのだ。
ヤズドでは、美しい地元の観光名所も巡り、祖母の作る美味しい料理を堪能する。自分とつながる祖父、祖母、おじさん、おばさん、いとこなどなどから可愛がられ、自分がイラン人である事を誇りに思う。無償の愛に涙がこぼれる。
ダリウスは父とスタートレックシリーズを1話ずつ毎日観ていた。父を独り占めできる時間。それがヤズドで破られた。ラレーも一緒に観る事になった。その事がダリウスには裏切りに感じられた。

繊細なダリウスの心模様が丹念に書き込まれ、なんでそうマイナスに考えてしまうのか、と読みながら何度も思ったが、でも、そういう時が自分にもあったし、今だって考えすぎればそうなるかも。ヒガミちゃんと自分を揶揄して、回避する努力はしていたけど、家族はさぞかし迷惑だっただろう。自己肯定感が低い若者が多い、というけれど、大人だって同じだと思う。
ダリウスの親の気持ちもよくわかる。辛くて泣けた。
ダリウスは周りをよく観察していて、とても優しい。気配りができる。自分を持っている。だけど、その良さに気づいていない。
自分を肯定できず落ち込みやすい人には読んでほしい。
それにしても、ダリウスのためにペルシャ語ではなく英語で話そうぜ、とのソフラーブの提案で、サラッと英語に切り替えられるとは、すごい。

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2023年09月26日

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