【感想・ネタバレ】マスク スペイン風邪をめぐる小説集のレビュー

あらすじ

100年前の日本人は、疫病とどう戦ったのか? 文庫オリジナル!
マスクをし、うがいをし、できるだけ外出をしない……あの文豪だって感染対策をしていた。

スペイン風邪が猛威をふるった100年前。作家の菊池寛は恰幅が良くて丈夫に見えるが、実は人一倍体が弱かった。
そこでうがいやマスクで感染予防を徹底。その様子はコロナ禍の現在となんら変わらない。スペイン風邪流行下の実体験をもとに描かれた短編「マスク」ほか8篇、心のひだを丹念に描き出す傑作小説集。

【収録作品「マスク」あらすじ】
見かけは頑健に思われているが、実は心臓も肺も、胃腸も弱い。そんな自分に医者は「流行性感冒にかかったら、助かりっこありません」と言う。だから、徹底的に感染予防に努めた。でも暖かくなったある晴れた日に、黒いマスクの男を見かけて――。

※この電子版には辻仁成氏の解説は収録していません。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

久米正雄がモデルの『神の如く弱し』目的で読んでみた。
菊池から見た破船事件後の様子が分かるのと、久米が何とも可愛かったので満足。

0
2021年08月02日

Posted by ブクログ

 2020年といえば新型コロナウイルスが世界中を脅かしていた年で、私もそのあまりに情報量の少ない得体の知れなさに恐怖を感じていた中、発売されていたのが実は本書だったのですが(2020年12月)、その発売時期の設定には当時の人達に向けた大切なメッセージが込められていたのです。

 というのも、本書には約100年前にスペイン風邪が流行していた時の、菊池寛自身の実体験を描いたような短編『マスク』が掲載されているからであり、読んでみると、『自分は極力外出しないようにした』や、『毎日の新聞に出る死亡者数の増減に依って、自分は一喜一憂した』、『もうマスクを掛けて居る人は殆どなくても、自分はまだ除けなかった』等、これじゃまるでコロナの時期の心境そのものではないかと思ってしまう程の共感を彼に寄せてしまうと共に、この作品を当時に読んでいれば少しは安心できたのになぁという、そんな心強さを感じたのです。

 ただ、『マスク』にはそうした話題性だけではなく、小説として最後にハッとさせられるものが潜まれていたことも印象に残り、そこには菊池寛自身の衒いのない純度100%とも思われる、人間の素晴らしい部分も嫌な部分も惜しげなく披露していたからこそ、こちらにも大きな共感を覚えることができたことに加えて、単に感情的なものと思われそうな心境に対し、客観的な見方で冷静に考察する一面も併せ持っていることを知ることによって、小説なんだけれども、それらからはまるで菊池寛の人柄が窺い知れたような感慨深さがあって、それは菊池寛自らを投影させた「雄吉」という主人公のみならず、本書に収録された全ての主人公に対しても同様の思いを抱かせてくれて、それがそのまま小説としての素晴らしさにもなっていることには、菊池寛って自分の押し通すべき意思は決して譲らない頑固な一面を持ってはいるものの、その裏には、もしかしたら異なる見方があるのかもしれないという可能性を捨て切れない一面や、人情家の一面もあるんだなということがよく分かります。


 ということで、本書には『マスク』以外の作品も収録されていて、それらはスペイン風邪とは関係ない異なるテーマで、中には時代小説もあるものの、それら全ての表向きの物語の裏に精神的統一性が垣間見えたことが、私にとって菊池寛への信頼度を高めてくれるきっかけとなった、それらの作品について、ちょっとだけ書いてみましょう。

「神の如く弱し」
 自分とは価値観の異なる友人の行動を見て、その友人の陰口を叩いてしまう時の心理とはどのようなものなのかを覗き見しているような印象があって、そこにはきっと友人のことが好きだからこそ、自分の中では価値があると思われるような行動を求めてしまう部分もあるのかなと思いつつ、その価値観も見方を変えれば、相反するような印象に変わることがあることを菊池寛は教えてくれます。

「簡単な死去」
 『皮肉な横柄な、その癖あまり悪気のない』沢田が亡くなったことを知った時、彼と同じ職場の者たちは誰一人悲しむことも無く、それは主人公である雄吉も同様であったのだが、その気持ちは読めば「分かる」と共感できるような、あまり気持ちの良くないタイプの人と感じながら、そんな沢田に対して後半の展開では憐れみを感じてしまうことや、タイトルもよくよく見てみると、思いの外に酷いことを書いているような気がしてきて、どんな人にも真底憎めない部分はあるのだということに気付かせてくれます。

「船医の立場」
 おそらくペリー提督が来航してきた時の物語なのだが、その船に乗せてもらってアメリカに行きたいという2人の勇敢な日本人の真摯さに、外国人たちはどう思い、何を感じたのかという展開に胸を打たれるものがあり、そして、終盤の展開にはタイトルから感じさせられる葛藤がよく効いてます。

「身投げ救助業」
 京都にも昔から自殺者が多かったけれども、よき身投げ場所がないという始まり方に衝撃を受けながら、物語は、自分の家の目の前で身投げをする人を頻繁に見るのが嫌で、彼らを助けるようになった老婆の、最後には皮肉にも自らの行動と相反するような心境となってしまったかのような、ここでは人間の持つ無意識的に矛盾した部分に見られる愛おしさが、じんわりと沁みてきます。

「島原心中」
 検事時代の経験を語る「自分」の物語では、『彼女の薄明に対する同情の涙』や、『あの若者が、何故罰せられなければ〜』等、検事でありながらも感じずにはいられない法への疑問点から、既に世の中のあり方の多様性を認めているような菊池寛の視点は、そのまま彼の人情家ぶりをよく表しているのだと思います。

「忠直卿行状記」
 忠直とは13歳で越前国北庄藩主になった、徳川家康の孫「松平忠直」のことで、忠直に関しては、彼に仕える者達への行いが後々酷いものになっていったことが伝えられているのですが、そこにあった真意というのが実は、忠直にとって誰からも理解されないような孤独さを秘めていたのではないかという、ここでも菊池寛のそうした視点というのは、人間の表向きのものだけではなく裏に潜まれたものも見ていることがよく分かりますし、この結末、私は好きです。

「仇討禁止令」
 明治時代前の新政府軍と旧幕府軍が対立していた時代に於いて決行された、ある人物の暗殺を成し遂げた男の誰にも言えずに抱え込んだ狂おしい心境は、男の仇討を企てる人達との間にある深い関係性によって更に辛いものとなっていくのですが、これは当時の時代性が見せるやるせなさが全てなのだと思いながら、どこまでも人倫の道にこだわり続ける、その真っ直ぐさには心打たれるものも確かにあったのです。

「私の日常道徳」
 菊池寛がどういう人なのかがよく分かる、箇条書きスタイル。

0
2026年04月02日

Posted by ブクログ

コロナ禍にある2020年の発行であることから、100年前に同じように猛威を振るったスペイン風邪の流行を扱った短編集が編まれることになったのかと推測する。
「マスク」はコロナ禍あるあるが満載されている。マスクをしないで混雑の中に出かけるのは、勇気ではなく蛮行である。
他に、流行性感冒にかかった友人や、流行性感冒で亡くなった同僚に対する周囲の対応を描いた作品が続く。
「船医の立場」は、流行性感冒がテーマではないものの、感染病と正義をテーマにしている。
「忠直卿行状記」は歴史物。他は、幕末から明治にかけての人々を描く。
どれも人間心理の描写が鋭く細やかで、考えさせられる。特に「仇討禁止令」に描かれる維新の悲劇はやるせない。
「私の日常道徳」には菊池寛の人柄を感じる。約束は破らない、ただし原稿の締め切りだけはやむを得ない、というのがふふふ・・・

【マスク】
流行性感冒が猛威をふるう。医師から心臓の異常を指摘されている私は、感染イコール死を意味する、と戦々恐々とする。
【神の如く弱し】
婚約者を親友に奪われてもはっきり抗議もできず、知り合いに愚痴ばかり垂れ流して生活を荒ませていく友に呆れ果てていた。
その友が流行性感冒にかかり、死の淵を彷徨う。
【簡単な死去】
社内でも嫌われ者の同僚が流行性感冒で急死した。故郷とは断絶しているので社で葬儀の世話をしようと上司は言うが・・・
【船医の立場】
盗んだ小舟で黒船に乗り込もうとした幕末の志士二人の願いを受け入れるかどうか。
【身投げ救助業】
京都、琵琶湖疏水の飛び込み名所の橋のたもとで茶店をいとなむ老婆は、多くの身投げ人を救ってきた。
【島原心中】
死にきれなかった心中の片割れの男を尋問した若き日の検事。そこで感じた、法における罪と、人の情において許せない行動と。
【忠直卿行状記】
家康の息子結城秀康を父に持ち、越前六七万石を継いだ忠直の寂しい暴君ぶり
【仇討禁止令】
高松藩の祖は、水戸光圀の兄。徳川宗家の中でも御三家に次ぐ家という自負が強い。
幕末、鳥羽伏見で負けて逃げ帰り、錦の御旗を掲げた土佐藩、丸亀藩に攻め込まれる危機が迫った。
佐幕を貫いて逆賊の汚名を着るか、それとも恭順か。
【私の日常道徳】
自分より金持ちからは遠慮なくもらい、金のない人には援助を惜しまない。
好意には好意を、悪意には悪意を。
『解説「百年の黙示」辻仁成』
百年前のパンデミックを描いた「マスク」は現代のコロナ禍そのもの。この時から日本人はマスクの重要性を認め、ヨーロッパのようにロックダウンに至らずに済んだ。菊池寛の先見の明よ。

0
2024年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

⚫︎受け取ったメッセージ
表題「マスク」より、人はいつでも自分本位…でもそこが人間らしさ。


⚫︎あらすじ(本概要より転載)➕ネタバレ注意

スペイン風邪が猛威をふるった100年前。作家の菊池寛は恰幅が良くて丈夫に見えるが、実は人一倍体が弱かった。そこでうがいやマスクで感染予防を徹底。その様子はコロナ禍の現在となんら変わらない。スペイン風邪流行下の実体験をもとに描かれた短編「マスク」ほか8篇、心のひだを丹念に描き出す傑作小説集。解説・辻仁成

【収録作品「マスク」】
見かけは頑健に思われているが、実は心臓も肺も、胃腸も弱い。そんな自分に医者は「流行性感冒にかかったら、助かりっこありません」と言う。だから、徹底的に感染予防に努めた。でも暖かくなったある晴れた日に、黒いマスクの男を見かけて――。

誰もマスクをしないときにマスクをするのが文明人!と思っていたうちは、マスクをつけている人を同士よ…と思えていたのに、自分がマスクを外している時に見かけたマスクの若者を見て、小憎らしい!と思ってしまう。

⚫︎感想
若者を見て、強者の態度を感じ取り、忸怩たる思いをする…という人間の自分本位な考えが浮き彫りになるのだが、マスクという軽い題材なので、クスッと笑える。

0
2023年10月29日

Posted by ブクログ

副題は「スペイン風邪をめぐる小説集」でありながら、パンデミックにかかわる話は前の三作だけ、残りの五作は現代(大正時代)や歴史小説です。

で、その「スペイン風邪」というのは今回の文庫本の目玉になるところだと思いましたが、確かに出版された当時の2020年末は、コロナのせいで生活が一変した一年を顧みることができる時期でした。しかし有り体に言えば、二年も経った現在ともなると、マスクをしつつ、「もううんざりだよ」「もう情報を聞きたくない」というイライラした気持ちが多いです。

この小説集の中に一番好きなのは「仇討禁止令」です。結末は少し弱いが、なんか私はそういう激動した時代の愛憎劇に惹かれやすい傾向があるかな。

0
2022年07月01日

Posted by ブクログ

主人公の心の動き。
自分がマスクをしている時としていない時の周りを見る目線がユーモアたっぷりに描かれている。笑っちゃいけにんだろうけど、つい。あ。

0
2022年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

目次
・マスク
・神の如く弱し
・簡単な死去
・船医の立場
・身投げ救助業
・島原心中
・忠直卿行状記
・仇討禁止令
・私の日常道徳

コロナ禍だからこそ出版された、菊池寛の短編集。
とはいえ、スペイン風邪をめぐる小説集というのは言い過ぎ。

表題作は、心臓の具合がよろしくないと言われた死を身近に感じておびえていた頃、流行性感冒が流行り始めてからの著者の行動が、全く現在のコロナかと被って面白かった。

”自分は、極力外出しないようにした。妻も女中も、成るべく外出させないようにした。そして朝夕には過酸化水素水で、含漱(うがい)をした。止むを得ない用事で、外出する時には、ガーゼを沢山詰めたマスクを掛けた。そして、出る時と帰った時に、叮嚀に含漱をした。”

”病気を怖れないで、伝染の危険を冒すなどと云うことは、それは野蛮人の勇気だよ。病気を怖れて伝染の危険を絶対に避けると云う方が、ぶんめいじんとしてのゆうきだよ。”

また。「簡単な死去」では流行性感冒で亡くなった同僚のお通夜に出席する人を決めるためのくじ引きを行う。
何しろみんな嫌なのだ。

”若(も)し当り籤が自分に残ったら、何(ど)うしよう。どちらかと云えば、病気恐怖症(ヒポコンデリック)な雄吉は、今度の感冒も極端に怖れて居る。社内で、誰よりも先に、呼吸保護器(マスク)を買ったのも、雄吉だった。硼酸(ほうさん)で嗽(うが)いもして居る。キナの丸薬さえ予防の為に、時々飲んで居る。”

まあまあ、スペイン風邪関係は最初の三編のみで、あとは時代物の有名な短編作品。

「船医の立場」は、アメリカに行こうと黒船に乗り込んだ吉田松陰の処遇について、「知性も品位も感じられる日本の有能な若者を、ぜひアメリカに連れて行きたい」という船長以下の意見に対して、船医の立場で意見を言った。ワトソン。
船から降ろす=命がないであろうということはわかっていたのだが、言わざるを得なかった。
しかし後に、狭い籠に押し込められた松陰たちを見て、自分の判断は一体正しかったのであろうかと思う。

「仇討禁止令」は、過去の非道を隠し続けられるのか、それともすべて破綻してしまうのか。
誰が悲劇的な最後をむかえるのか、と予想しながら読んだけれど、そう来たか。
明治になっても、出世しても、己の中の武士は生きていたのか。

0
2021年09月29日

Posted by ブクログ

マスクはワクチン普及前のコロナ禍とかなり感染症対策が重なっていることに驚かされる(極力外出しない、常に手を洗う、でかけるときはマスクでがっちりガード)マスクをしないで外出する他人を見て憎悪を感じたというエピソードもあり。
 一緒に収録された作品の中では、黒船に乗り込もうとした吉田松陰を皮膚病のゆえに乗船拒否したことをのちに悔やんだ船医の立場、張合やプライドを無くしてしまうと行動の生き甲斐がなくなるという身投げ救助業、検事の思い込みを強引に被疑者から誘導した経緯を詳細に説明したために高瀬舟よりも安楽死への追及に関する深みはなくなってしまった島原心中、部下のお追従にある日気づいてからは何も信じられなくなり乱行の限りを尽くようになり改易によって初めて心の平穏を取り戻した越前の暴君、松平直正の内心を巧みに描写した忠直卿行状記、許嫁の父である佐幕派の家老を闇討ちで暗殺したのちに明治維新をむかえ開明派の武士の苦悩を描いた仇討禁止令、こういうものが掲載されているが、やはり日本のオーヘンリー、非常に好みの作品が多かった。

0
2021年09月23日

Posted by ブクログ

「マスク」
大正時代にスペイン風邪が大流行したとき
その予防法として、やはりマスク着用が推奨されたらしい
しかし第一波の疲れが出て
第二派の到来するころには、もはや誰もマスクをつけなかった
そんなおり、筆者は野球場でマスクをつけた選手に出会い
なぜか不快さを感じる

「神の如く弱し」
師匠の娘に振られたことを根に持ち
小説のなかでさんざんにこき下ろしたりしたものの
スペイン風邪にやられて寝込んでしまったとき
師匠の家から親切な言葉をかけられ
それでやっぱり泣いてしまう
そんな男の、天然ダブルスタンダードを前にしては
情けなさよりも、むしろ恐怖が先に来るのだった
久米正雄がモデルの話だろう
師匠は夏目漱石である

「簡単な死去」
風邪にやられて新聞社の同僚が死んだ
実家とは縁が切れており、友人のひとりもない彼は
死んでなお周りの人に嘲笑されてしまう
死んだ彼も皮肉家で、世間を嘲笑してばかりだったが
しかし裏表のない人ではあった

「船医の立場」
吉田松陰が黒船におしかけたさい
船内には、これを擁護して
アメリカに同行させようという声も強くあったのだけど
船医の意見で却下されたという話
その時、松陰はたまたま疥癬にかかっていたため
防疫の観点から、渡航は認められないとする理屈だった
結果、吉田松陰は船を降りたのち処刑され
船医は自分の判断を悔やむことになる

「身投げ救助業」
明治時代、琵琶湖から京都に水をひいて、川が造られた
それが一時期、自殺の名所になっていたらしい
平安神宮に近い橋の下で商いをしていた婆さんは
自殺者を救助するたびに警察からの謝礼金を受け取って
ひと財産を築き上げるほどだった
ところが、その財産を娘に全部持ち逃げされてしまい
自分が川に飛び込んでしまった

「島原心中」
ここでいう島原は、京都にある花街のこと
その島原にあるおんぼろ遊郭の二階で、心中事件が発生した
取り調べに出向いた検事は、生存した男を巧みに誘導して
自殺幇助の罪を白状させた
それで内心得意になっていた検事だが
死んだ女に病の痕跡があることを知り
やむを得ない自殺の幇助がなぜ罪になるのかと自問する

「忠直卿行状記」
越前守松平忠直は、大阪夏の陣で大手柄を立てた武将だった
しかし甘やかされて育ったため、やや癇の強い性格だった
あるとき行った槍の仕合で
相手が手加減したことを偶然にも知ってしまい
そこから、孤独を感じるようになって
狂気におちいった
菊池寛の代表作のひとつである

「仇討禁止令」
幕末時代、讃岐・高松藩は佐幕派であったが
先導役の家老が何者かに暗殺され、じきに尊皇派へと鞍替えした
維新の後、暗殺者は東京に出て出世し、判事になっていた
彼は、家老の娘と婚約していたのだったが
心に隠した暗殺の事実が重荷になって
娘から逃げるように上京したのであった
しかし数年たって
そろそろ彼女も別の家に嫁いだろうと思ってた矢先
当の彼女が、弟をともなって上京してくる

0
2021年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題作の「マスク」は短いし、ぜひ皆に読んで欲しい。

私にはすごく刺さった。

疫病を恐れる心、でも、そうでない人の怪訝そうな視線に圧を感じたり、彼の一連の心の動きが正直に綴られていて、もう、私=菊池寛?! という位、激しく頷いてしまった。
こういう事は親しい間柄でも考えが違っていたりしてあまり話し合うことはないけれど、時代は変わっても、同じ思いをして乗り越えてきた人々がいるんだという事実に、辛い気持ちが少しだけ和らぐような気がした。

0
2021年01月22日

Posted by ブクログ

短編集で「スペイン風邪をめぐる小説集」を集めたもので
「100年前の日本人は、疫病とどう戦ったのか?」
というこんなご時世柄、文春文庫さんが文庫オリジナル版を編みなさったわけ。

「マスク」「神の如く弱し」「簡単な死去」「船医の立場」「身投げ救助業」「島原心中」「忠直卿行状記」「仇討禁止令」「私の日常道徳」

「マスク」
見かけは太っていて頑健そうに見えるが、実は弱いからだなんだ、と菊池寛らしい主人公は言う。何ですか、太っていたら成人病予備軍だよ、と突っ込みたくなるが100年前はね、栄養を取るのも大変だったでしょうからね、みんなガラガラにやせていたし、美味しいもの好きの主人公、ガッチリ美食していたのだね。案の定「インフルエンザにかかったら死にますよ」とお医者様に脅かされて、だから用心してマスクは手放せない。外出も避ける。死亡者数の増加に憂える。あら、今とおんなじだ。しかし、暑いような初夏にはとうとうマスクを外した。まだまだ感冒は流行していると新聞に書かれているのに、みんなしていないし・・・つける勇気が・・・でもでも、ある日、人だまりの野球場でマスクをしている人を一人みつけたよ!さあ、主人公はどう思ったか?

「スペイン風邪流行」ネタなのは「神の如く弱し」「簡単な死去」くらいで「船医の立場」「島原心中」は広義の意味で病気もの、「忠直卿行状記」「仇討禁止令」は有名時代ものだし「私の日常道徳」は作家の矜持がわかり、菊池寛は人間性を突く、おもしろい短編を書いた作家なのです。

0
2020年12月25日

Posted by ブクログ

表題の短編「マスク」では、今も明治も感染症対策は大差無いなと気づかされた。黒マスクって昔からあったのね。
「身投げ救助業」が印象的。川に身投げして溺れた者を救助して小銭を稼いでいた老婆が...

0
2022年08月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題が『マスク』だし、‘スペイン風邪をめぐる小説集’とあるので、その辺りの話ばかりかと思いきや、後半は特にそうではなく…その後半の作品たちが、とても面白かった。
人の心の動き、人と人との関係(今ならコミュニケーションという言葉で表すのだろうけれど、もっと複雑な)日本的なもの。心が痛くなる瞬間が何度もあったけれど、心の表裏の描き方に心を奪われた。

0
2021年12月12日

Posted by ブクログ

スペイン風邪の時代、文豪の書。
装丁がリアリティ、マスクは日本人にとってこの時代から、必需品である。
今は進化したマスクだけど、私の子供の頃のマスクは、著者の時代と変わらない仕様であったはず。それでも、マスクは効果的だったはず。
他に収録された7編もどれも読み応えあり。
そして、現在の作家である辻仁成の解説も秀悦。

0
2021年02月16日

Posted by ブクログ

マスクなど短編集。マスクは100年前のスペイン風邪の流行時の話。菊池寛先生の怯えなんかが、コロナ下の今とほぼ同じなのが面白かった。他の短編、忠直卿行状記、仇討禁止令も面白かった。

0
2021年01月31日

「小説」ランキング