あらすじ
彼女は本当に夫を殺したのか!? 逆転無罪を狙い、息詰まる法廷場面。目撃証言の矛盾を突く、傑作法廷ミステリー!
二つの焦点の交叉・照応。これが深谷ミステリのキーワードだ。場所と時間を隔てた二つの目撃と記憶の物語。それらが深い一貫した深谷式交叉を達成していることに読者は驚くだろう。――野崎六助氏(解説より)
幼い頃、母が父を刺殺する現場を目撃した曽我。成人し、作家になった後もその暗い過去は心の隅に淀んでいた。そんな彼のもとに東京拘置所から一通の手紙が届く。差出人は関山夏美。曽我の母親同様、夫を殺害したとして懲役十年の有罪判決を受け、服役中の受刑者だ。手紙の内容は、無実の罪を着せられた自分を助けてほしいというもの。くしくも夏美の担当弁護士・服部朋子は、曽我の大学時代の友人だった。朋子にも依頼され、曽我は関山夏美の控訴審に関わることに……。傑作法廷ミステリー。
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Posted by ブクログ
夫を殺害したとして有罪判決を受けた妻。しかし、本人は殺していないと主張しつづけている。控訴をしようと奔走する女弁護士。一方、暗い過去を持った小説家が、ある1通の手紙から、事件と関わるようになります。果たして、事件の真相は?
この作品、なんといっても約630ページという読み応えのある内容でした。いかにして、妻を無罪にさせるのか。有罪をひっくり返させるような事実をどう掴んでいくのかが楽しめます。詳細に丁寧にその過程が描かれているので、現実にあったんじゃないかと思うくらい、リアリティがありました。
さらにこの事件だけでなく、小説家の暗い過去の事件にもフューチャーされています。事件と似ている部分もあり、二つの事件の中心に小説家と弁護士の二人の視点が交互に進行していきます。
「目撃」という人の記憶が招く証言。時間が経っての完璧な記憶って存在しないんだなと改めて感じました。曖昧な記憶や周りからの影響によって培われて、あたかもあったかのように形成される。目撃証言の問題点を突いた作品で楽しめました。
次々と明らかになっていく事件の真相。深みにハマるかのようにどんどん意外な真実が出てきて、さらに読みやすかったので、どんどんページが進んでいきました。
ラストは…わかった部分があったり、うやむやな部分もあったりと全て解決というわけではありませんでしたが、そこが現実的でもありました。
人の記憶の曖昧さ、人と人との言葉のぶつけ合い、事件解決へと導く過程がゆっくり堪能できた作品でした。