あらすじ
本を読むことは、書き手との対話である。
だが、誰と対話するかは慎重に選ばなくてはならない——
恩師・井上洋治、遠藤周作、須賀敦子、神谷美恵子、池田晶子、柳宗悦……。
著者自身の「危機」を救ってきた言葉を紹介し、「確かに生きる」ヒントを探る。
知識ではなく、人生の手応えを与えてくれる「生涯の一冊」に出会うための方法も記す、読書をめぐるエッセイ集。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
一編一編に重みがあるエッセイ集だった。サラッと読んでしまうには勿体ない。就寝前に毎日一編ずつ読みたいと思える、そんな本だった。
良書誕生の条件が面白かった。条件のうちのひとつに「その本が読む者の変化に耐えうること」とある。その視点で考えたことがなかったので新鮮だった。読み手の変化に耐えられるとは、器が大きくないと達成できない。年月を経て何度読んでも新たな発見があるような本は、そう出会えるものではなく、だからこそ大事にしなければと思う。
私は読み通すことを自分に課しているので、著者の域にはまだ達せない。ここで紹介されている書籍は、なかには読んだことのあるものがあったけれど、私には深く読み解くことはできていないだろうと思った。単純に娯楽としての読書と、知識を得たい学習としての読書の範囲に留まっている。そこから更に踏み込み、考えつづける人生に寄り添ってくれるような書物にいつか出会えることを楽しみにしたい。
Posted by ブクログ
筆者の豊かな読書経験から、単なる「読み方」や「読書の効能」に留まらず、そこから人生に行き詰まった人への指針にもなる本であった。
個人的にはハウツー本やネット、SNSといった短く、すぐ結論がわかるようなものを多く読んでいた時期にこの本に出会った。筆者が言うところの浅い呼吸ばかりしており(筆者もそれ自体を否定していない)、深い呼吸ができていなかった。本を多く読むよりも深く読むことが重要である。ではそのためには何が必要か、「深く読むためには深く書く必要がある」のだ。この本で紹介された本を購入した。難しいものも多いが、「たましい」と対話して読みたいと思う。各篇それぞれに味わいがあり、すべて紹介できないが、とても読み応えありました。ありがとうございました。
Posted by ブクログ
感想を書いたつもりになっていた!自然な流れで様々な作家の話、読書の話になり、さらっと読んでしまう。でも、さらっと読んでしまうような内容ではない。若松さんの文章は読みやすいのだけれど、軽さの中に重さがあるというか、一つひとつの言葉の意味が大きい。若松さん自身の苦悩や悲しみもさらっと書かれているけれど、この言葉たちに到達するまでにどれだけの葛藤や悲しみ、苦しみがあったのだろうと想像する。これからも読み返していきたい本になった。
Posted by ブクログ
この本を読んで得たものを、言葉にしようとすると、まるで取り繕ったようになってしまう。
なので一番心に刺さった箇所を引用させていただきます。
“今も苦しみは、前ぶれなく私の人生を訪れる。その嵐の渦中にあるとき私は、「いったい、いつまで、いつまで、あした、また、あしたなのでしよう。どうして、いま、でないのでしょう。なぜ、いまこのときに、醜い私が終わらないのでしょう」というアウグスティヌスのうめきの祈りを思い出し、私のみじめな讃美を神に捧げるのである。”
姿がかき消えたら
それで終り ピリオド!
とひとびとは思っているらしい
ああおかしい なんという鈍さ
みんなには見えないらしいのです
わたくしのかたわらに あなたがいて
前よりも 烈しく
占領されてしまっているのが
茨木のり子『歳月』花神社
Posted by ブクログ
苦しみや「かなしみ」が私たちに教えるのは、答えではなく問いの深まりである。-情愛の泉
自分の生きる意味を探して、自分のために時間を費やすのではなく、他者に「時」をささげ、共感と理解を深めるなかにこそ人は、自らの「傷」を「愛」へと変容させる道を見出す。-いのちを生きる
だが、よく考えてみれば私たちはつねに、日々を死と隣り合わせに生きている。日ごろあまり意識しないが、人はつねに、生きつつあるとともに死につつある。
日々、死に近づいているにもかかわらず人は、いかに生きるかばかりを考え、いかに死を迎えるかという問題を見過ごしている。
「死の床にある人、絶望の底にある人を救うことができるのは、医療ではなくて言葉である。宗教でもなくて、言葉である」。「死」に力点を置いて読むとき、この一節が、異なる光を放つのが分かるだろう。-たましいの糧
わたしが地上を去るとき、別れのことばにこう言って逝かせてくださいー「この世でわたしが見てきたもの、それはたぐいなくすばらしいものでした」と。
「光の海に咲きほこるこの蓮華の秘められた蜜の甘さをわたしは味わった、こうしてわたしは祝福されたのです」ーこれをわたしの別れのことばにさせてください。-十読は一写に如かず
Posted by ブクログ
自分の生きる意味を探して、自分のために時間を費やすのではなく、他社に「時」をささげ、共感と理解を深めるなかにこそ人は、自らの「傷」を「愛」へと変容させる道を見出す。