あらすじ
一九四五年八月、ソ連軍の侵攻から逃れるため、満洲から多くの日本人が北朝鮮に避難した。飢え、寒さ、伝染病。本土終戦の日から始まった地獄の難民生活で、人々は次々と命を落とす。国はなぜ彼らを棄てたのか。世界史の中でも稀に見る悲惨な難民だった彼らの存在は、なぜ黙殺されたのか?「戦後史の闇」に光を当てた本格ノンフィクション。
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Posted by ブクログ
満州引き揚げ者の大半は大連から戻ってきたのかと思っていたが、これは朝鮮半島を経由して帰国しようとした人々の辛酸を記録したもの。
新京から北朝鮮の郭山という街に逃れた1000人余りの人びとの顛末だが、現地の統括組織が壊滅していたことに加え、日本政府が彼らに対し何の手も打たなかったこと、ソ連軍が38度以北を支配し帰国に積極的でなかったことなどが重なり、難民化してしまう。北朝鮮の冬は寒く、疫病なども蔓延し、女性・子供がばたばたと死んでいく。筆者は手記や当事者への聞き取りでその様子を再構成しているが、読み進めるのが辛い。
満州引き揚げの問題点は、数十万という民間人が終戦後に亡くなっているーそれもかなり悲惨な形でーのに、それがほとんど可視化されていないという点だろう。沖縄、広島・長崎、大都市への空襲は語られても、北朝鮮にとどめ置かれその地で亡くなった人々は、未だどことも知れぬ地にひっそりと眠っているのだ。
ジャーナリストである筆者は国際難民の報道に携わってきたが、朝鮮半島に残された日本人難民はかなりひどい体験をしているのに、それが全く表にでてこない事実からこの本の執筆にとりかかったという。悲惨な状況下にあっても状況を書き留め、終戦後も内内で連絡を取り合い、状況を語り継いできた関係者たちの無念が、この詳細なルポに結晶している。
Posted by ブクログ
涙なくして読めない、生々しくただ生きることだけの毎日の記録を噛み締めました。
先に読んだ、「流るる星は生きている」「太平洋戦争の収支決算報告書」の内容と重なるものがあり確認したり深い背景を想像できました。
満州を脱出しまずは現在の北朝鮮にあたるところで留め置かれる。現在の少ない北朝鮮情報でも、冬の寒さは北海道を超えるものだと想像できる。
劣悪な環境の終わりが見えず、蔓延する病と不衛生な環境に次々と倒れていく。
日本の植民地となって様々な恨みを持った中国・朝鮮の人たちに仕打ちを受けて、それでも見かねて手を差し伸べる北朝鮮の人も。
土まんじゅうに祈りを、そして終戦を外地で迎えた日本の先人たちに哀悼の気持ちを込めて。