あらすじ
かつて『大鴉の啼く冬』の事件で重要な役割をはたしたマグナス老人が病死した。ペレス警部たちが参列したささやかな葬儀の最中、墓地や近くの農場が巻きこまれる大きな地滑りが発生。被害状況を確認すると、土砂が直撃した空き家から身元不明の女性の遺体が見つかる。ところが検死の結果、女性は地滑りの起きる前に死んでおり、しかもその死は他殺と判明。ペレス警部は被害者の身元割り出しを急ぐが、思わぬ事実が明らかに……。シェトランド諸島を舞台に英国現代本格ミステリの進化と深化を実証しつづける名シリーズの、新たなマイルストーン。/解説=吉野 仁
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Posted by ブクログ
シェトランド島シリーズの七作目。
一作目に登場した、いや重要人物だったといって良い隣人が亡くなり、
その葬儀の最中に地滑りが発生する。
土砂が直撃し破壊した家は人が住んでいないはずだったが、
女性の遺体が発見され、検死で殺人だと判明する。
女性は誰なのか、なぜ空き家にいたのか。
サンディは前作で再会した昔の同級生と付き合いはじめていて、良かった。
事件がらみで出会う若い女性にいちいち目を奪われないようになったのもあり、
粘り強い聞き込みで成果をだしたり、
重要な情報を発見したり、
どんどん捜査に役立っていて、嬉しくなってくる。
女性の身元が判明するかと意気揚々とかけたペレス警部がかけた電話で、
本人がでてしまった場面や、
ペレス警部とウィロー主任警部が一晩過ごした後のよそよそしさを、
サンディが仲違いと誤解していた場面が面白かった。
四季折々のシェトランド島の自然や天候も楽しめた
このシリーズもあと一作。
早く翻訳してほしい。
Posted by ブクログ
アン・クリーブスの、シェトランドシリーズ第二弾、三作目。前のシリーズで最愛のフランを亡くして以降、まだ立ち直れなかったペレス警部だったけれど次第に以前の冴えとその人となりを武器にした捜査力を取り戻してゆく姿にホッとした。しかも、今回は主任警部(上司)との一歩前進した関係も。
狭い島の多くはない人間達の様々な人間模様が浮かび上がってくる。土地に根ざした人、外から影響を及ぼす人、どんなストーリーにもそれは欠かせないけれど。
また、美しいシェトランド地方の風景も四季を通して眺めることが出来るのがこのシリーズの楽しみのひとつ。
四作目もあるようなので、待ち遠しい。
Posted by ブクログ
比較的懇意にしていた知人の葬儀の最中、轟音と共に大規模な地すべりが発生。
土砂は丘の斜面を駆け抜け、幹線道路を挟んだ農家を直撃。
亡き恋人フランの墓石も流されてしまうような惨事の中、落ち着きを取り戻したジミー・ペレスは被害の状況を確認しに農家へと向かう。
そこで発見された赤いドレスに着飾った美しい女性の死体。
その農家は空き家だったはずなのに、この女性は一体誰なのか。
さらに検死で判明した事実。
女性は地すべりにより命を落としたのではなく、その前の時点で殺されていたという。。。
女性の身元を辿るうちに、またしても「ここはシェトランド」の狭く濃密なコミュニティの人間関係が複雑に交錯していく物語。
『水の葬送』では腑抜け気味だったペレスもスタートからだいぶ調子いいなぁと思っていたのだが、「今回で島に来るのは3回目」というウィローの発言で気付いた。
あれー、1作飛ばしている。
1作飛ばしているはずなのに思ったほど進展していないペレスとウィローの関係。
様子を探り合いながらじりじりと縮まっていく二人の距離にやきもきしながらも、公私を分け、サンディを入れた3人のチームで和気あいあいといった風情で事件解決に向かっていく構図が印象的。
冒頭の知人マグナス・テイトはシリーズ1作目『大鴉の鳴く冬』のキーパーソン。
お馴染みのシェトランドの地図だったり、ここへ来て1作目を絡めてくる演出だったり、すっかりこの土地を知る者の気分にさせられる。
作品世界に対する没入感、物語をリードするジミー・ペレスとその仲間達の心理の善良さ。
やっぱりアン・クリーヴスは心地よい。
ペレスとウィローの行く末を先取りしてしまった(つまり1作前では何も起こらないのだろう)のはしくじりだったが、一旦The Four Element Quartetの2作目『空の幻像』に戻ります。
Posted by ブクログ
ジミー・ペレスの新作「炎の爪痕」を読もうとしたら、1個前の作品を読んでなかった。前回ウィローが出てきた時、あんまり好きになれないなと思ったが、今回ジミーとの仲が進展して、彼女の印象も変わって、素直に良かったなあと思えた。
事件は、地滑りで流された家で殺された女性が見つかるところから始まる。近くに住む、どこか張り詰めた様子のジェーン一家、一向に良くならないシェトランド島の荒天。2件の殺人で更に全体の雰囲気が重苦しくなっていく。サンディの存在だけが軽くて明るい。最後あたりで犯人はこの人かなと分かったが、ウィローまでも?とヒヤヒヤしたが助かって良かった。
Posted by ブクログ
忘れがたいシェットランド四重奏の衝撃の結末が未だに尾を引いているのだが、
その後のペレス警部シリーズも3作目となる。
なるほど、マイルストーンね。
主役はシェットランドの地とも言えるこのシリーズの冬の部を、こちらも極寒の季節に読めるというのは至福。
何人もの目撃者が異常に記憶力よいのと、後出し的な都合の良すぎる部分が謎解きとしては少々気にはなったが、それよりも派手なところのない登場人物たちがとても好きなので楽しかった。
シェットランドにスペイン系のハンサムがいたらそりゃかっこよさが際立ちますわ。しかも世界一優しい!
ミステリに恋愛要素が入るのは好きでなく、まして捜査員同士というのはとてもいやなのだが、まあ今回は許容範囲。結局人によるのかなぁ。
亡くなった人のかげが色濃く、冬のシェットランドがさらに暗くなる。