【感想・ネタバレ】それでもあなたを「赦す」と言う——黒人差別が引き起こした教会銃乱射事件 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-11)のレビュー

あらすじ

【推薦!】
77発の銃弾が9人を殺戮。戦慄の果てに希望は見えるか。
——保坂展人氏(『相模原事件とヘイトクライム』著者、世田谷区長)

家族を殺した男をあなたは赦せますか?
——高橋ユキ氏(『つけびの村』著者)

2015年6月17日、アメリカ南部・チャールストンの由緒ある教会で事件は起きた。
「チャールストン教会銃乱射事件」である。

その日の夜、男は、毎週水曜日恒例の聖書勉強会に参加していた黒人信徒に向け銃を乱射。参加者12人のうち9人が死亡した。
——それはインターネットで仕入れた差別思想に影響を受けての凶行だった。

だが、事件後早々、生存者と遺族は犯人に対し「あなたを赦します」と発言。
全米を震撼させた理不尽な動機による大量殺人事件は、この発言によってさらに注目を集めることになった。

克明にあぶり出される事件の一部始終、
耳を疑うほどの犯行動機の論理破綻、
ネットをきっかけにヘイトスクラム(憎悪犯罪)が生まれる過程、
そして、残された人々の尽きせぬ悲しみの軌跡……。
——ピュリッツァー賞を受賞した地元紙の記者が生々しく描き出した、第一級のノンフィクション。

【目次】
プロローグ
第一部 邪悪な存在と目が合った
第二部 癒しを求めて
第三部 真相が明るみに出る
エピローグ
弔辞——クレメンタ・ピンクニー師に宛てたアメリカ合衆国大統領による追悼演説
謝辞
訳者あとがき

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Posted by ブクログ

2015年6月17日、アメリカ南部チャールストンにあるAMEエマニュエル教会で起きた「チャールストン教会銃乱射事件」のことを書いたノンフィクション。

犯人は21歳の白人至上主義者の青年。インターネットで得た差別思想に影響を受けて凶行に及んだ。教会での聖書勉強会に参加していた黒人信徒に銃を乱射。11人に計77発を発砲して命を奪った。

彼は逮捕された後も反省することはなく、自分はすべきことをしたと言い放つ。

そんな犯人に対して、被害者の娘は「あなたを赦す」と言う。「あなたにどうしても知ってほしいことがある。私はあなたを赦す。あなたは私からとても大切なものを奪った。もう二度と母と話すことはできない。二度と母を抱きしめることもできない。それでもあなたを赦す。そしてあなたの魂に神の慈悲があるように。あなたは私を傷つけた。沢山の人を傷つけた。でも神はあなたを赦す。だから私もあなたを赦す。」

私もクリスチャンだけど、私にはそんな犯人を赦すことは多分できない。
遺族全員が「赦す」と言っているわけではなく、クリスチャンだけど赦せない、という人たちもいる。
どちらにあっても、神様は一人一人の想いを分かってくださる。赦せない、という想いを抱えたままでも。

そのどちらの心の苦しさ、葛藤を神様は恵みでもって癒してくださる。それに応えてどう生きていくかが問われているのかな。

最後にオバマ大統領の弔辞が掲載されている。彼の言葉もまたいいです。

一つ気になったのは、「赦さなかったら、天国に行けない」と口にする遺族。私はそんなことはないと思う。

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2023年07月21日

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