あらすじ
2060年代後期。個人情報を企業に提供することにより収入を得られる世界で人々が「個」を失いかけていたさなか、データを管理するトランスパランス(透明性)社の元社長が、殺人の罪に問われる。 温暖化で存亡の危機が迫る人類に、彼女が用意した壮大な計画とは
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Posted by ブクログ
とても難しかった。自分の生きてきた環境から来る根底の哲学とシニカルさが、AIで完全に平等にできない葛藤を少し垣間見ることができてよかった。
そしてゲームチェンジしてすぐ思考転換できないのは、どんなにトップにいようもみんなそうなんだなという安心があった。
でも最後、呆気なかったなぁ…あれは本当にそうなのかなぁとも思っちゃった。
Posted by ブクログ
・気候変動が悪化して、人々が北欧地域で生活する一方で、ITは発達。
Googleに行動履歴や閲覧履歴、生体情報という自分に関する
個人情報を渡すことに承諾すれば、毎月暮らせるだけの収入をもらえて、
一部の人を覗いて、googleのベーシックインカムに加入している世界
Googleが国家と肩を並べている状態。
主人公は、Googleの支配と環境問題への対策として、
個人情報を人工的な体に写すことによって、
不死を実現する計画を実行する。
・不死にする人は、精神的な価値や地球環境にやさしい生き方をしているか
とかとか
お金もってるかとか関係ない
宗教も国も関係ない。まさに神
・ちょっと怖さを感じさせる。
書かれている世界は、便利になればなるほど
より人間らしさがなくなる
Posted by ブクログ
ありそうな40年後。グーグルが個人情報を管理し自由意志を操作、環境破壊が進んで北欧にしか住めなくなった人類。今このまま手をこまねいていれば、そこにたどり着く。そういう意味では警鐘ではあるよね。
個人的には”エンドレス・プログラム”は希望しないと思う、永遠の生命がほしいわけではないので。やはり、限りがあるからいいじゃないかな、限りは時には救いになることもあるんじゃないかな、と思う。
Posted by ブクログ
環境問題,グローバル企業によるデータの掌握,宗教問題,トランスヒューマニズム,ベーシックインカムといったまさに現代の問題がテーマになっている.不死の存在,預言者の誕生によって,市場第一主義の経済界,権利主義の政治・宗教を完全に解体するのは今の社会へのアンチテーゼであると感じた.タイトルの「透明性」はデータを完全に開示することによって個人が透明になるという意味だが,このような世界でも本当は不死の技術は存在しないということを誰も見抜けなかったというのは皮肉だと感じた.
Posted by ブクログ
フラン人作家マルク・デュガンの『透明性』を読みました。
一言でいうなれば大金持ちなったテック系ギークである女社長の哲学問答、という中身です。
ジャンルも設定もSFなのですが、必ずしもSFへの興味や知識は必要ありません。
2068年の地球を舞台に、強力なテクノロジーを背景に地球上のあらゆる産業、企業を手中に収め、トランスヒューマン(オルダード・カーボンで言うところのスリービング)・・・魂を腐らない鉱物材料で出来た人体そっくりな入れ物に移植して不死を実現させた地球上最高の権力者である女性が、神になる事を拒否し、独裁的権力を否定しつつ、自分の家族や世界の宗教家、政治家、情報機関と対話し、モノローグする過程でバックキャスティング的にいま我々の生きている世界の生命倫理、あるとすれば生命の目的、宗教観、政治、社会保障、エネルギー・環境問題、セックス、家族観、資本、経済、消費、知の体系についての通念に次々と疑問を投げかけてくる構成になっているからです。そう、作中で問われているのは殆どが「現代」なのです。
ここが上手い。「このままいくとえらいことになるよ」という警句ではなく、革命が起こりあらゆる秩序が変わり果てた世界の中心人物から「あの時はこんなおかしなことをやっていたけども」と語らせ、我々の現在の世界観、固定観念をグリグリと抉ってくるのです。
フラン人らしい皮肉たっぷりにキリスト教会教皇や米国やフランスの大統領をこき下ろし、やり込める。「半世紀前には・・・」と作品中2度ほどトランプの事をくさしているのもタイムリーで非常に面白い。
通底するテーマとしては、人間がデジタルに「常時接続」していることへの危機感とそのために起こる劣化について書かれていて、ドイツ人哲学者のマルクス・ガブリエルが「グーグルはユーザーからタダでデータを吸い上げ、労働搾取している」「インターネットこそが我々の民主主義を破壊している」と言っていることに共通している問題意識がありました。
プラットフォーマーに対する制裁金措置などを見ても、通商問題や産業競争とは別のフレームで、ヨーロッパの知性や哲学はインターネットとデジタルに対して主導権奪取の戦いを仕掛けているように見えます。それは19世紀的世界秩序への回帰であるとマルクス・ガブリエルは説明していますが、デジタルへの不快感や警戒感がヨーロッパから強く聞こえてくるのは興味深いですね。
ジャーナリズム、ノンフィクション出身の書き手のためか非常に読みやすくてスッと頭に入ってくる文章でした。
Posted by ブクログ
2060年の近未来を舞台にしたSF小説
人類から死という概念を解放することを実現した際に起こる未来を描いた作品
主人公自体が完璧であるような描き方ではなく、家族関係においては不完全さを持っている部分に現実味を感じた。
最後の種明かしのような部分は結局欺瞞がどこまで蔓延るのか、AIが人間を半分支配しているような印象を受けた(根拠のないような現実を信じすぎているのではないか?人間の判断自体は所詮その程度なのかもしれない。)。
Posted by ブクログ
SF。ファンタジー色はほぼなく、現代と現実に沿った設定で、現在でも知られていないだけで、起こっていると言われればそんな気もする。グーグルみたいな会社がグーグルを乗っ取って「選ばれた人」のみしか生きられない社会を作る→大批判→宇宙行き。二十歳くらいから新興宗教の勧誘でしょっちゅう「選ばれた人のみが天国にいける。他は全部地獄」とか堂々とファミレスとか一方的に喚かれた経験が多々あって、もう、全員、●朝●のミサイルに乗っちゃえ♪とか感じた。天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。義務教育で習うだろ?
Posted by ブクログ
フランスの知識層が書いた「なろう小説」的な感じを受けました。近未来SFの形を取りつつ、環境問題や行き過ぎたデジタル化、拝金主義への危惧と批判など。