あらすじ
内戦下の祖国シリアに一時帰還した作家が、絶え間ない爆撃の下、反体制派の人々の間で暮らしながら、それぞれの苦悩と挫折に耳を傾けた1年間の記録。語り伝えることを通じて、内戦の過酷な現実と向き合う、世界16か国で翻訳された話題作。
アサド大統領と同じくイスラーム教アラウィー派に属する一族の出身である著者は、2011年以降、一貫して反アサド政権の立場をとり、逮捕・拘束を経て同年夏にシリアを脱出した。本書は、2012年8月から2013年7月まで、3度にわたって祖国に戻り、兵士から女性や子供まで、反アサド政権の立場にあるさまざまな人々の声を集め、その体験を書き綴ったものである。
拠点としたのはシリア北西部のイドリブ県サラーキブ市で、住民である協力者一家の庇護を受けて取材を進めた。証言者の数が増えていくと同時に戦況は変化し、協力者一家の大半は出国を余儀なくされていく。
小説家、ジャーナリスト、編集者として活躍するかたわら、著者は女性の自立や子供の教育を支援するNPO団体を設立し、活動を続けている。近年のシリアを見据える新しい世代の特色を鮮やかに示すと同時に、内戦下で生きる市井の人々の声を拾い上げた記録文学の白眉。
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Posted by ブクログ
2011年のアラブの春を契機とした反アサド政権運動、武力闘争に発展した。シリアのイドブリ県等のトルコとの国境地域では、そこで生活していた市民の一部が武力蜂起し、一方で、この混乱に乗じ信仰の名の下に他国の傭兵で構成されるダーイシュ(イスラム国)等のテロ集団が跋扈する。元市民は、生活が困窮するなか、アサド政権軍とテロ集団に悩まされている。だが、武器は手放さない。
著者はシリアイドリブ県のサラーキブ出身、本書は故郷にとどまり、死と隣り合わせで故郷で暮らす市民や戦闘員の姿を克明に描いている。反政府闘争で始まったこの混乱、いつの間にかイスラム教の宗派間の争いになっている様を伝えている。
あまりに嘆かわしい、死と隣り合わせの(いや、死を前提とした生活と言うべき)この状況を多くの人に認識してもらいたい。