あらすじ
血で骨を洗う斎藤道三「父子の相克」一代記。
古く蝮を「くちばみ」と呼んだ。鋭い毒牙を持つその長虫は、親の腹を食い破って生まれてくるという――。
時は戦国、下剋上の世。「美濃の蝮」と畏れられた乱世の巨魁・斎藤道三は、京の荒ら屋で生を受けるも、母に見捨てられ、油を舐めて命を繋いでいた。油売りを生業にどん底から這い上がった父子は、いつしか国盗りという途轍もない野望を抱くようになる。狙うは天下の要・美濃国。父に続き美濃入りした道三は、守護・土岐頼芸を籠絡し、側室・深芳野と密かに心を通わせる。一方で、父の歪んだ支配欲に苛立ち、血の呪縛から逃れようと毒殺を夢想するようになる。政敵を次々に抹殺し、遂に主君頼芸を追放し、名実ともに国主となった道三。ところがその頃、長男義龍の胸中には、父への嫉妬と憎悪が渦巻いていた・・・。
本作品は、下剋上を成し遂げながらも実子に殺される道三の生涯を、三代にわたる「父子の相克」をテーマに活写する新感覚時代小説。「暴力と情愛」の筆運びはますます磨かれ、「悪の爽快感」に溢れる物語世界は圧巻! まさに花村時代小説の到達点と言える作品です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
エロでグロで冷徹な作者が描く斎藤道三三代記。
花村萬月が書く斎藤道三が面白くないわけがないと思って手に取ったが、期待は裏切らない。
最新の学術的発見とは合わないと作中で弁解しているが、題材となる史実をしっかり手をかけて料理している。
エピローグとなる斎藤義龍と奈良屋を継ぐ異母兄との会談は本書の主題を象徴している。
それにしてもあと書きにある奈良屋の末裔の正体が気になる。
Posted by ブクログ
おもしろかった!!斎藤道三のバイオグラフィ。諸説あるところは、これこれの理由でこの説を採用したというような作者の考えも所々に挿入されているが、違和感もないし、興をそがれることもなく、いいテンポで読める。多くの才能が列挙した時代、道三というとヴァレンティーノ公のイメージ、毒殺王みたいなのが付与されてしまっているが、秀吉とは違うタイプの人誑しの才能が描かれていて、大変興味深い。残念なのは後半、ざっくりと急ぎ足になってしまっていて、ちょっと物足りなさを感じた。
美男としても有名なのだが、個人的にこの時代の美形というと高貴な容姿というか、引目鉤鼻瓜実顔、いわゆる下膨れで色白な”色男”の想像をしていたが、装丁は金壺眼(現代風では美男だが)当時としてはブサイクな男性なのがイメージが違いすぎてモヤっとした。まあ、現存している肖像が審美的にハテナな感じなので、想像力で補うことにしよう。