【感想・ネタバレ】新装版 お腹召しませのレビュー

あらすじ

えっ、その責任おれがとるの!?
仕事と、家庭と、世の中と――戦う男の本分とは。
司馬遼太郎賞・中央公論文芸賞受賞。
『一路』『流人道中記』の浅田次郎が贈る、笑って泣ける傑作時代小説。

婿養子が公金を持ち出し失踪。不祥事の責任を取りお家を守るため、妻子や部下に「お腹召しませ」とせっつかれる高津又兵衛が、最後に下した決断とは……。武士の本義が薄れた幕末期。あふれ出す男の悩みを、侍たちはどう乗り越えたのか。表題作ほか全六篇に書き下ろしエッセイを特別収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

エッセイ~時代小説の構成で6編。外で務めに翻弄され家では妻女に冷たくされる男の可笑しみ、実直ゆえに時に身勝手な男の心境、これを書かせたら著者はほんとうに上手いと思う。明治の御一新のすぐ前は江戸時代。著者は祖父を通じて自分とひとつながりに幕末の時代がぼんやりと見えていたのだという。少し倦んだ空気が漂う太平の世の末も著者の作品の舞台にぴったりだ。

P22 妻ならば娘ならば、も少し悲しげな顔で、ここは万已むを得ずお覚悟なされませ、というほどのことは言うてほしい。それを、まるで物言う鳥のごとく声を揃えて、オハラメシマセはなかろう。

P65 恐怖と滑稽がないまぜとなり、互いにどういう顔をしてよいものかわからぬ。【中略】「はい、神隠しに遭うた、と。」そこでとうとう二人は、見つめ合うたまま噴き出した。悲しみとおかしみが背中合わせであるということは葬式の折などで知ってはいるが、怖ろしさとおかしみも紙一重であるというのは、人生の一大発見であった。

P88 父祖が命をかけて手にした太平の世には、もはや我ら武方の活躍する場所はない。

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2022年06月25日

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