あらすじ
天才科学者・山之内明が発明した「ペトロバグ」。それは、石油を生成するとてつもない細菌であった。世界の石油市場を根本から覆し、戦争にまで発展しかねない脅威を感じた石油メジャーは、山之内殺害およびペトロバグ略奪の指令を発した。目に見えない細菌が、時に驚くべき能力を発揮し、その強力さゆえに人類の危機をも引き起こす……。来るべき脅威に警鐘を鳴らす、著者の新たな予言の書。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
コロナの頃に買ったけれど、その厚さにビビって今まで読まなかったことを後悔しています。
読み始めたら止まらない。
日本人研究者が、石炭のような有機物から石油を生成することができるバクテリアを発見した。
その遺伝子情報を解き明かすことができたら、世界中どこの国も石油に困ることは無くなる、夢のような話のはずだった。
しかし中東の産油国やアメリカの石油メジャーは、石油から得る利益を独占するために、その科学者・山之内明を殺害し、バクテリア「ペトロバグ」の奪取をそれぞれに目論む。
その頃、そのバクテリアは単なる有機物だけではなく、生物に感染したらそれをも石油に変えてしまうことが明らかになった。
傷口などから感染したバクテリアは、血液の流れに乗ってまず脳を壊し、あっという間に感染主を死に至らしめる。
抗生物質が全く聞かない新型のバクテリアの遺伝子情報の解析が急がれるなか、研究者たちを次々と魔の手が襲う。
いや、もう、これどうなっちゃうの?
だって名うての殺し屋が狙っているのは、民間の研究所に勤める民間人なんだよ。
しかも山之内は過去に起きた事件のトラウマで、あまり自分の命を大事に思っていない節がある。
研究室を経営しているのは、かつて731部隊に所属して人体実験を行った経験のある林野史郎。
彼が最後に山之内に語った言葉が、自身の命を呈してまでも研究所のメンバーを守ろうとする理由なのだろう。
”私たち人間が自然の仕組みをすべて解明しようと考えるなんて、おこがましいとは思いませんか。それは、支配する側の考え方です。私たちは共存を目指さなければなりません。共存こそ、人類が生き残るただひとつの道です”
人類同士の共存のほかに、人類とバクテリアとの共存のことも考えるとすると、ウィズコロナより20年近くも前にこの本が書かれていたことに驚きを禁じ得ない。