【感想・ネタバレ】地方選 無風王国の「変人」を追うのレビュー

あらすじ

『無敗の男』で政治家と永田町を描き尽くしたライターが全国7町村の首長選の現場、土地の風土、そこに映る「にんげん」の本質までを描き出す――

マグロと原発の町、「飛び地」の村、60年も無投票が続く島……
“選挙を旅する”異色ノンフィクション。
コンビニ店員、国際派テレビマン、サーファー漁師、発明家は、
【再選率84.2%】の壁になぜ挑んだのか?

「改革幻想に囚われ、国政政党の合従連衡に明け暮れた平成政治とは異なる令和の政治がこれから始まるとするならば、その主人公は地べたの暮らしに疎くなった永田町の住民ではなく、土の香りがする地方の首長の中から生まれるであろう」(「プロローグ」より)

愛なき“勝ち組の政治”を打ち破るのは、田舎の荒野でもがく「変わり者」だ!

【目次】*小見出しは一部
プロローグ
コロナ以後の「ニュースの主人公」
2020年は地方政治再評価の出発点
「安倍一強」が逆なでした地方のプライド

第1章 えふりこぎ(青森県大間町長選)
原発マネーが漁師町を変えた
「選挙は親戚の数で決まる」

第2章 コンビニ店員の逆襲(北海道中札内村長選)
毎日の接客が選挙運動になった
最後は鈴木宗男が持っていった

第3章 風にとまどう神代の小島(大分県姫島村長選)
竹下登が駆け寄ってくる
61年ぶりの選挙は島を変えた

第4章 ドンの5日間戦争(愛媛県松野町長選)
「老人ホームに入れなくなるよ」

第5章 国道ファースト主義(和歌山県北山村長選)
村民の9割が二階俊博を支持

第6章 仏頂面と波乗り男(北海道えりも町長選)
「私が東京と話をつけようか」

第7章 嘘つきと呼ばれて(佐賀県上峰町長選)
「原口一博」という後ろ盾

エピローグ
英雄探しよりも「機能する変人」の発掘を

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

かなり密に取材されていて読み応えがあった。
一方、地方の首長選挙の多くがこんな血生臭いものではない。
変人を追ったのが本書であるが、志高い首長にフューチャーしたルポも読んでみたい。

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2021年11月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読後感が悪い
こういうムラ社会には生きたくないと思う
本書の見解だけを信じてはいけないが平板に描くことでムラの感じを浮き立たせていると思う

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2021年05月01日

Posted by ブクログ

畠山理人氏の黙殺を読んで面白かったので類書として読みました。人口数千人規模の市町村の選挙を取材し、政治とまちづくりの関係を明らかにし、住民の選択を見届けていきます。

政治に興味がない層としては、変革を望む若手、本書でいう変人を応援しながら読んでしまいます。しかし、まちづくりと政治の過去を見ると、必ずしも利権、癒着から離れた潔癖な政治だけが地域を発展させる訳ではないと分かります。しがらみの破壊を望まない人も一定数いるのです。

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2021年05月19日

Posted by ブクログ

8期連続無投票当選など、「無風王国」のもと首長のワンマン行政が続く小さな自治体。2015年の統一地方選では、町村長選挙のうち、全体の約43%が無投票、現職の再選率については、84.2%という実態がある。しかし、一方で、周囲からは「変人」扱いされながら、変わらない過疎の集落に捨て身になって風穴を広げようとするチャレンジャーも現れている。
著者はそんな「変人」を追って、マイナーな地方選の現場に足を運び、各地の選挙事情はもとより、そこにある政治の裏表、そこに映る人間の本性を取材した。そして、いわば選挙の民俗学、首長の文化人類学というような切り口から本書をまとめあげた。
選挙のために汗をかいた親戚の多寡が雌雄を決したマグロと原発の町・大間、コンビニ店員が村長になった北海道・中札内村、親子で村長を務め60年も無投票が続く大分県姫島村、国道ファースト主義の治世が令和になっても続く和歌山県北山村、「若者、バカ者、よそ者」で変革しようと、サーファー漁師が立ち上がった北海道・えりも町・・・
「パトロン・クライアント」関係、すなわち庶民に最低限の生活や安全(庇護)を保障する代わりに、彼らから恭順を得る、ポスター掲示場設置条例のない町村が全国に24ある、道路港湾等の整備が一段落すると、半土建農民は観光産業、一村一品などへ向かい、田中軍団タイプの政治家は役に立たなくなる、役場の存在が地方選の結果を左右するなど、現場を見ている著者だからこそ、実感として伝わってくることが多々あった。
また、冒頭に書かれていたように、大災害時に避難勧告を出すタイミング、コロナ拡大防止や救済策、さらには、ポストコロナにおける財政破綻をどう防ぐかなど、今後、各地の首長はこれまでになく評価が別れ、資質が問われる場面が増えてくるというくだりには全く同感である。
さらには、各章の導入部は各地域の風土、人間性が紹介され、紀行文を読むような楽しみかたもできた。


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2020年11月10日

Posted by ブクログ

地方の首長選挙は8割現職が勝つ。とくに過疎地域においては無投票や後継指名による禅譲が常態となっており、数十年にもわたって無風のところも少なくない。

公共工事の誘致と再分配によって「住みやすい北朝鮮」とも揶揄される離島、与野党相乗りで支援を受ける“無所属”現職、役所内の主流派反主流派が交互に政権を取る派閥抗争、、ローカルでの仕事をしていると多かれ少なかれ衝突する現実である。

変革と独裁は紙一重である。とくに国という左右のイデオロギーと団体による動員力によって政局が決まるホワイトカラーの政治体制に対抗するためには、地域住民から長期にわたって支持されてきた実績と権力構造を持つ首長こそが、変化を先んじて取り入れて地域において具現化できる立場だろう。

土着の名望家(農協、漁協、森林組合、土地改良区、商工会、大地主、郵便局長)と叩き上げの自営業者(土建屋、運輸業、造園業、電気工事、燃料販売、自動車工場、老健施設、幼稚園)といったブルーカラーな地域の仕事に関わる票の取りまとめは、とくに都市部からは見えづらいウェットな田舎の構造だ。

昔は暴力沙汰になったり、現金が飛び交うようなこともあったからこそ、事前の根回しによって無風を演出することが好まれるようになった。そして今また、コロナ禍においてはこの構造の下部に虐げられてきた女性や若者たちの反乱の萌芽も見て取れるようになってきた。まったく関わりたくないが、観察する上では興味深い現象だと捉えている。

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2025年05月22日

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