あらすじ
ネット上の行動履歴から利用者の特性を把握し、カスタマイズした情報を流すことで行動に影響を及ぼす「マイクロターゲティング」。フェイスブックから膨大な個人情報を盗みこれを利用したのがケンブリッジ・アナリティカなる組織だ。彼らは何のために国家の分断を煽り、選挙結果を操ったのか。元社員による衝撃の告発。
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Posted by ブクログ
ドキュメンタリーの『グレートハック』を見て衝撃を受け、主要人物クリストファーワイリーの本を読んでみた。ケンブリッジ・アナリティカ(CA)という軍事コンサル会社がブレグジットとトランプ政権誕生の両方に深く関与している顛末を、CA創設メンバーの一人クリスが内部告発した書である。フェイスブックから得た膨大なでデータを使って、選挙権を持つ人々の行動を操作するという、SFみたいな実話である。読みながら、人類の将来に対する暗澹たる絶望感に苛まされた。米英という自由と民主主義を標榜する国で起きたこの事件と、過去の「なぜこんなことが?」という疑問を照らし合わせると、深く納得する部分が多くあり、超優秀な頭脳が悪用された時の恐怖を味わった。CAは消滅したが、こんな成功例を見せられては悪用しない手はない。今後ますますこういう事例は増えるだろう。もしかしたら次のターゲットはEUの内部崩壊か?
Posted by ブクログ
最近YoutubeやFacebook、陰謀論的広告出てきて胡散臭いなと思っていたら、その感覚にぴったりの本だった。『ブルシット・ジョブ』に出てきそうなITエリートの話でもあり、マイノリティ目線から見たアメリカ、イギリス(著者はイギリス人でゲイで車椅子経験者だ)論という意味で『壁の向こうの住人たち』が想起され、充実した読書体験になった。
Posted by ブクログ
最近友人にすすめられてNetflix のthe social dilemma というドキュメンタリーを見て、ソーシャルメディアによる選挙操作や政治的暴走に興味が湧いてきたところ、話題の一冊の邦訳が最近出ていたので早速読んでみた。
本書は、Cambridge Analiticaという会社で主にFacebook のデータを使って、さまざまな選挙活動操作を行なっていた、若きエンジニアの内部告発本。
Facebookのデータ、そして銀行口座やマイレージなど、その他のルートで入手したデータ、心理学的性格判断を組み合わせることで、高度にその人の思考、嗜好を予測できるようになる。そして、どのようなフェイクニュースを見れせば、クライアントが望むような行動に扇動できるのか、を研究して、実際にフェイクニュースなどをターゲットのアカウントに集中的に流して、選挙などの投票活動を操る。
アフリカやカリブ海の小国、アメリカの州内選挙などで実験を繰り返して、要点を掴み、例えばイギリスのEU離脱選挙や2016年のアメリカの大統領選挙などでも行なっていたという。
具体的には、各政党の固定支持層ではなく、これまで選挙に行かなかったような層を、ターゲットにする。特にアメリカでは白人男性のインセル(involuntarily celibate: 不本意の独身者, 恋愛や結婚などを望んでいるにもかかわらず、貧困などでそれができず、不本意ながら現実に甘んじている人たち)をターゲットに定める。特にソーシャルネットワークでは、怒りの感情が伝達しやすく、そのような層に集中的にフェイクニュースや陰謀論を流しつづけ、さらには実際にイベントなどを企画して確信を強めさせ、票を操作する。
実際にアメリカの大統領選ではロシアの関与が疑われるなど、このような情報戦ではさまざな勢力の介入が可能なのだとか。
Facebook は今やInstagram もWhatsApp
も買収して破竹の勢いでデータを入手しつつあり、いくらでも悪用できてしまう。個々人のネットリテラシーとともに、グローバルなゆえに責任の追及するところが定め難い問題に対してどれだけ規制ができるのかがこれからの課題かも。
Posted by ブクログ
人が、初めてネットの海を知り、その世界に漕ぎ出した時は、新しい出会いに胸を膨らませていたと思う。
たとえ、今、実際に周りにはいなくても、この広い世界には、きっと同じ思いの人がいる、、、って。
現実ではなかなか出会えない誰かと出会えて、新しい繋がりを生み出してくれる夢のような世界、
・・・そんなふうにネットの世界に期待した人はたくさんいるんじゃないのかな?
それなのに。
今、ネットでは、個人情報を掴んで、それぞれの人を狭い枠の中にカテゴライズし、それぞれの枠のなかで心地よい情報だけを流すことで、異なるもの同士の深刻な分断を生み出している
ことを、この本は暴露している。