あらすじ
アジア辺境の納豆の存在を突き止めた著者が、今度は、IS出没地域から南北軍事境界線まで、幻の納豆を追い求める。隠れキリシタン納豆とは。ハイビスカスやバオバブからも納豆がつくられていた!? そして、人類の食文化を揺るがす新説「サピエンス納豆」とは一体。執念と狂気の取材が結実した、これぞ、高野ワークスの集大成。
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Posted by ブクログ
納豆追いかけてアフリカに行くのがこの人のすごいところ。ツルマメ納豆は感動。ひきわりなら野生でも納豆になる、そこから栽培化にいくというのはちょっと逆ぽい気もしないでもないが、この人の話の流れに乗って読むのがいいのだろう。今はなかなかどこにもいかれないから。
Posted by ブクログ
本書の書評を見て読みたくなったため、前著の「謎のアジア納豆」を読み、ようやくアフリカ納豆に到達しました。足掛け7年の超大作。体当たり取材というか、納豆が好き、というだけでここまで情熱をかけられるのが凄い。
読書の醍醐味は、”追体験”であることを改めて感じた本です。
著者らしく、前半というか7割は取材した国々のルポ(タイトルとは唯一異なる国が韓国)で、後半の2割は、ちょっとだけ科学っぽい話、最後に文化人類学的考察に納豆が使われるというスタイルは前著と同じ流れ。
アジアの納豆民族は、すべて少数民族(マイノリティ)であり、内陸部の山岳地帯や盆地に住んでいることが多く、肉・魚介類、塩、油といった食材・調味料を入手しにく、これが納豆が貴重なたんぱく源にして、調味料であるという事実という前著の結果をさらに深堀すべく、いざアフリカへ。
ルポの中で、とりわけ気に入ったネタが、セネガルの「ネテトウ」。『日本にもネテトウがあるんです』『え!セネガルから輸入しているの?』『いえ、日本で昔から作って食べているんですよ。臭くてネバネバする』『本当?信じられない!』『名前はナットウと言います』『ナットウ?ネテトウとそっくりじゃない!!』という下りは笑いました。
納豆は、日本のソウルフードだけど、他の国にもナットウは存在するのは間違いないです。はい。
ブルキナファソの絶品料理で、タイ料理のガイヤーンに似ているそうですが、「魚(=鯉)のスンバラ(=現地の豆)鉄板焼き。しかも魚が豆の中に埋まっており、赤いトマトソースで煮込んである料理」が、とにかく絶品だそうな。その件で、「どうしてこういう料理が日本や他のアジア、アフリカになかったのだろう。魚や鶏を中華鍋でざっと炒めてから、納豆、油、トマトソースで煮浸しにすれば、似たような料理ができるような気がする」とあり、納豆を調味料として使うという発想は、是非、うちでも試してみたいと思った。
後半にあった、第1回納豆ワールドカップも笑った。各地の納豆を持って帰ってきて、そこから納豆菌(枯草菌)らしきものを分離し、分離した菌を日本の大豆を使って納豆を作成し、味見をして順位付けするもの。
・アジア選抜:ミャンマー・シャン州 「トナオ」/ブータン「リビ・イッパ」
・東アジア代表:韓国「チョングッチャン」/岩手県「雪納豆」
・アフリカ代表:ナイジェリア「ダワダワ(豆はパルキアという種類)と(大豆)」/ブルキナファソ「スンバラ(パルキア)と(ハイビスカス納豆)と(バオバブ納豆)」
順位は本書を是非参照のこと。ハイビスカスの種やバオバブの実から”ナットウ”を作れることが自体が驚き。
最後に、日本において、縄文時代の遺跡から発掘された本物の石臼を用い、”ツルマメ(現代では食用ではない)”を使って、ハイビスカスやバオバブと同じように引いてから発酵させてみると、むしろアフリカ納豆に近い味になったという実験(?)から、ホモ・サピエンスの知恵はぐるぐる回って、今、学問の最先端にある。それが何よりもエキサイティングで楽しい、という締めの言葉にぐっときました。
学問的に100%正しい手順ではないかもしれないけれど、危険な地域に踏み込んで取材するところは本当に素晴らしいと思います。気を付けつつ、さらに頑張っていただきたいとエールを送りたい気持ちで本書を閉じました。