あらすじ
「……僕は大人の女性を愛せません。僕の好きな人は、大人でも女性でもないんです」甥に対する密かな欲望を抱え、妄想に囚われ苦しむ百貨店のエリート外商・久瀬圭祐。欲望がいつか暴走するのではと恐怖し、治療を求めて精神科クリニックを訪れるのだが――。小学校教師の森下伸春は遠い昔、幼い少女に繰り返し恋をした。そんな自分の嗜好を知りつつも、ある一線を越え、欲望を解き放ち、そしてその果てに待っていたものは……。本能に弄ばれる二人の男と、その周囲の人たちの心の葛藤をリアルに描いた、異色の連作小説。BL界の巨匠・木原音瀬が挑んだ衝撃作。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
以前に読んだ事のある作者の作品で興味があって読み始めた。第一章はこの作者らしい作品であった。
でも第二章はかなりやられた。ゾクッとする怖さがあった。
この二章は特別だが全体として作品のバランスが良く出来ている言う感がある。
Posted by ブクログ
ずっと自分の考えを問いかけられている気分だった。私はこの物語を消費して、読み終わったら苦しさと重さから一旦離れられるが、当事者は自分の生まれながらの性質を実行することが社会的に許されざる事実から逃れられない。子供に手を出すことは絶対許されないし裁かれるべきという考えは変わらないが、葛藤を抱えて生きる人たちに対して自分は何ができるのだろうかと思った。
伸さんは特に他責な考え方で、相手の感情や相手への影響を考えられていないという印象を受けた。ずっと自分の生理的な欲を合法的に解消できない人は一体どうすれば良いんだろう。
Posted by ブクログ
ある意味タブーとされている「小児性愛」について触れた本。いいとか悪いとかの二元論で語れる話じゃないなと思った。エピローグで、小児性愛を抱える久瀬の表層だけを捉えてその従兄弟が「羨ましい」と言っていたけれど、「羨ましい」なんて感情は結局主観でしかなくて、「普通」っていうのも主観でしかなくて、みんながみんな何かしらを抱えて生きているんだろうな、と思った。
朝井リョウの「正欲」を去年読んだけれど、この本のテーマに惹かれた人はハマると思う。
Posted by ブクログ
ぺドフィリア、小児性愛者という言葉は知っていた。
知ってはいたが、本当の意味では理解できていなかった。
ぺドフィリア=犯罪者ではなく、ぺドフィリアの人たちは制御できている人が多いことを知った。
実際に幼い子供に卑劣な行為を行う輩はチャイルド・マレスターと呼ぶらしい。(wikipediaで読んだ)
混同することによって、苦しみながら何とか制御している人たちにとって差別的な目を向けてしまう。
そのことで追い詰めてしまう可能性があるかもしれないと思った。
伸さんも制御できていた
しかし海外で買春をしたことによりその制御が緩んでしまったのではないかと思う。
久瀬氏は伸さんにそういった行為をされ、そういうことでしか性的興奮を得られなくなってしまったのかと思ったが違ったのかな?
制御できていることも年を重ねるにつれてタガが外れることもあるのかと思うと、冒頭に出てきた薬物治療が発展し、苦しむ人が減ればよいなと思った。
自分のなかの偏見に気付くことが出来た。
苦しい一冊だったが、色々考えることが出来たのはとてもよかった。
自分がいかに恵まれているかを再確認した。
好きになってはいけない、欲情してはいけないのは既婚者のみであることの幸せ。
生きていくのは難しい。