あらすじ
平和を愛さない人はいないだろう。だが平和主義となるとどうだろうか。今日では単なる理想論と片付けられがちだが、実はその思想や実践は多様である。本書は、「愛する人が襲われても無抵抗でよいのか」「正しい戦争もあるはず」「平和主義は非現実的だ」「虐殺を武力で止めないのは無責任」といった批判に丁寧に答え、説得力ある平和主義の姿を探る。感情論やレッテル貼りに陥らず、戦争と平和について明晰に考えるために。第35回石橋湛山賞受賞作。
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Posted by ブクログ
○平和主義=非暴力手段による平和を達成しようとすること
・無条件平和主義:100%非暴力
・条件付平和主義:原則非暴力、例外あり
・絶対平和主義:ずっと非暴力
・平和優先主義:例外あり
・義務論
・帰結主義
○非平和主義
・正戦論
・現実主義
・人道介入主義
とにかくわかりやすかった。
Posted by ブクログ
現在の国際情勢と平和主義(及び非平和主義)に関する現状を詳述し、民主的に非暴力か暴力かを選択する情報を提供したいという筆者の姿勢には完全に賛同するし、その意図はよく伝わってくる。
が、たぶん筆者が考えている以上に、この内容は難しい。参政権は18歳に引き下げられたが、これを読める高3生はほとんどいないだろうし、当然大学生にとっても状況はそう大きく変わらない。
本書の目的への共感と、丁寧な仕事への感服が大きいだけに、もっと優しい言葉で、もっと万人に向けたものを、と望まずにはいられない。
Posted by ブクログ
憲法改正問題がクローズアップされている中、長年の矛盾とされてきた、憲法9条と平和主義の問題。特に「平和のために戦うべきである」という問題をどのように考えるかによって、軍事力との関わり方・立ち位置が定まってくる。本書ではただ「平和主義」の字面だけで片付けることをせず、敢えて「平和主義」の内実を政治哲学的視点で分析し、よく言われる、ただ単なる「平和か武装か」の二元論にすぐに陥ることなく、「平和主義」のバリエーションを細かく且つクリアに提示する。その中で著者が「目指すべき平和主義」も提示されてはいるが、それは「平和主義」をめぐる議論のたたき台として留めておくこともできよう。考えるべきなのは、むしろ「平和主義」の内実をどのように考え、具体的な手立てとして想定するかであり、その考えた理念の下で限りある現実の選択肢の中で最善の行動を尽くすかである。
Posted by ブクログ
平和主義、正戦論、現実主義、の3つに加えて、人道介入主義が台頭。
平和主義に対しては、「愛する人が襲われても黙っているのか」という批判がある。これは一種のレトリック。公的問題と私的問題を一緒にしない。私情に訴えている。あり得ない条件を付けているだけで、こういう例を引き合いに出すのは「難事件は悪法をつくる」の例になる。
ガンジーの非暴力不服従主義が平和主義の一例。公的平和主義。公的な暴力行使を許さない。キング牧師にも影響を与えた。
多くの平和主義者は、例外がある条件付き平和主義。
平和主義の2類型=絶対平和主義=個人的信条としての平和主義、と平和優先主義=政治的選択としての平和主義。戦争は名を変えた殺人の容認である。
戦争はコスト的に合わないからやめるべき=帰結主義。殺人は事態を悪化させるからいけない。広義の功利主義者でもある。
戦争は、資本主義的利権の表れ。戦争は搾取の一形態。したがって社会主義者は戦争反対と表裏一体。
帰結主義的には、戦争は反対することになる。
ただし、絶対反対ではないところが平和主義とは違う点。最大多数の最大幸福に資するなら、戦争賛成に傾く。
自衛隊または軍隊は帰結主義的に言ってコストに合うことか。
正戦論=正しい戦争と正しくない戦争がある。テロへの戦争は正しい戦争。自衛戦争は正しい戦争。しかし線引きは常に問題が付きまとう。個人の防衛は個人の権利だが、国家も同じと考えてよいか。正戦とは何か。
二ーパーの批判=平和主義者に対して、不作為は追認と同じだ、という批判。間違いを恐れるあまり暴力を放棄するのは無責任。消極的に不正に加担している。
アメリカでは、良心的兵役拒否が認められている。クェーカーの団体にはノーベル平和賞が贈られている。兵役拒否者には、課徴金やボランティアで代替する必要がある。
100%の非暴力がないのと同様に100%の正戦もない。
現実主義=できるだけ避けようとするが、平和を達成する手段として暴力手段によらなければならない場合がある。世界には中央政府は存在しない。国家の生き残りは最優先課題。戦闘力はこれを達成するための必要手段。
=平和を望むなら、戦争を準備せよ。勢力均衡。
しかし、安全保障のジレンマ=お互いの安全保障を求めるレベルが上がる。パワーが目的化する。
他国を敵とするホッブス的文化、他国を競争相手とするロック的文化、味方として認識するカント的文化。
暴力が正当化不当か、というよりも、平和主義は有効ではない、という批判。オバマ大統領のノーベル平和賞受賞式の演説もこの現実主義に乗っ取っている。ヒットラーを止めることができなかった。=平和主義者からは論証が必要だとの批判がある。
人道介入主義
人権侵害を阻止するための武力行使は正しい。
PKOは相手国の同意がある。人道的介入にはない。人道介入は、権利ではなく義務、責任である。介入することで生じる市民の犠牲と、しないことで生じる犠牲のどちらが大きいか。
「善きサマリア人の法」=最大限の努力を行った結果であれば、結果責任を問わない。飛行機の中で急病人に歯医者が手当てをした場合。
平和主義への無責任との批判。人道主義者との対立。
軍事介入か、非軍事介入か。
絶対平和主義と平和優先主義の差異。
平和主義批判としての正戦論。逆に平和主義者は軍事介入ではなく非軍事介入を主張する。
平和優先主義が説得的ではないか。非暴力が主体、例外的に暴力を使用する。非軍事的介入を提案する。
民主主義が平和をもたらす。民主国同士は戦争をしない。ポピュリズムに流されないように立憲的制約をつけるのも一法。
Posted by ブクログ
「 平和主義とは何か 」 平和主義のあり方を考察した本。本書の立場は 自衛戦争を容認した 平和優先主義。
「愛する人が襲われても(平和主義を貫くのか」「なぜ殺人は禁止なのか」「正しい戦争はあるか」「平和主義は非現実的か」などの考え方を提示。法律家、政治家、メディアから 提示されたことがない主張で 大変 勉強になった。
平和主義とは=あるべき姿
*目的より手段により定義すべき=非暴力手段により平和という目的を達成しようとする主義
*絶対平和主義だけでなく、平和優先主義も平和主義
愛する人が襲われたら(平和主義者への)批判に答える
*戦争否定と 家族を守ることの否定は トリック
*平和主義には 絶対平和主義と 平和優先主義がある
*平和優先主義=私的場面または公的場面の暴力否定
*戦争否定=公的場面の暴力否定→私的場面の暴力を容認しても矛盾はない
なぜ殺人は禁止なのか
*義務論=行為の正しさを行為自体から判断する→ 殺人行為は 行為自体が道徳に反する
*無危害原理=危害発生を回避する=殺人禁止は義務
*正当防衛=責任者への対抗暴力は免責される→ 戦争と正当防衛の違いは その状況の責任者への対抗か否か
*非戦闘員保護の原則を守らない戦争は殺人
戦争はコストに見合うか
*帰結主義=行為の結果から 行為の正しさを判断する=最大多数の最大幸福→結果によっては戦争賛成
*戦争放棄=防衛費削減+機会費用(別選択時の利益)
*核兵器=人類にとって明らかに無意味な殺傷能力→帰結主義によれば 人は戦争を避ける
正しい戦争はありうるか(正戦論)
*戦争=侵略戦争+自衛戦争→正戦=自衛戦争
*両国が自衛戦争を主張=克服しえない無知
*正戦と不正な戦争の区別は困難
平和主義は非現実的か(現実主義)
*暴力の正当性は問わない→悪は実際に存在する→非暴力が有効でない
*中央政府のいない無政府世界→国家の責務は安全保障
*防衛力強化→相手国にとって脅威が増加→剣を取る者は皆 剣で滅びる
Posted by ブクログ
安倍晋三が言う「積極的平和主義」の概念がよく分からない。
これまで「積極的平和主義」と言うのは戦争や紛争がなく、
貧困や差別が存在しない社会を作ることだと思っていたのだ
けれどね。
どうも安倍晋三が口にする「積極的平和主義」は私が思っていた
概念と相当のかい離があるらしい。てか、よく分からないんだな。
安倍の言う「積極的平和主義」が。
教えて~。エライ人。
という訳で、「積極的平和主義」は脇に置いておいて「平和主義」
について考えてみた。
本書では平和主義を「絶対平和主義」と「平和優先主義」に2分類
している。これは非暴力の平和主義と条件付き平和主義ってこと
でいいのかな。
戦争や紛争がないに越したことはない。ただ、人類の歴史は
戦争の歴史でもあるんだよね。常々、思っているんだが戦争に
良いも悪いもない。それは、国が人を殺すことだから。
改憲が叫ばれるようになって久しい。日本国憲法は「平和憲法」
とも言われて来た。それを変えようとしている。否、変えたいと
強く願っている人たちがいる。
平和であっちゃいけないんだろうかと思う時がある。「平和ボケ」
と言われようと、平和であることは重要なことなんじゃないかな。
例えば日本がどこかの戦争や紛争に参加したとしよう。私自身が
そこで戦う訳じゃないんだが、そこで失われる命に無関心では
いられないと思うんだよね。
日本では武器輸出三原則が見直された。海外に供与される日本の
武器が誰かを殺傷する。考えただけで嫌だわ。
Posted by ブクログ
平和主義・・・
暴力ではなく非暴力によって問題解決をはかろうとする姿勢のこと・・・
暴力に対して暴力で応答しない・・・
他国から侵略を受けても武力に武力で応戦しない!あくまでも外交努力や非軍事的措置で解決するんだ!
うむ・・・
これに対して・・・
他国から攻め込まれたらどうするんだ!?
応戦しないんか!?好き勝手されても何もしないで降参するんか?!攻め込まれたらやり返すだろ!
と平和主義をお花畑ヤロー扱いして批判する人々・・・
暴力に対して暴力で問題解決することを辞さない、こういう考えの人々を非平和主義というんだそうな・・・
本書では、正戦論、現実主義、人道介入主義が対象とされている・・・
うむ・・・
で、非平和主義者から平和主義者に対する究極の質問があります・・・
平和平和言うのは良いけど、愛する人が襲われたらどうするの?
何もしないの?放っておける?助けないの?戦うでしょ?ホレホレ?
やっぱり戦うんじゃん?何が非暴力だよー。
というよくある批判のヤツね・・・
著者はそれについてこう答える・・・
平和主義にはいろんなタイプがある・・・
強度(無条件なのか条件付なのか)や範囲(私的や公的にどうか)といった面から平和主義は細分化されるが、大きく分けると・・・
どんな場合でも、断じて非暴力を貫く絶対平和主義と・・・
場合によっては・・・と例外は認める平和優先主義に分かれる・・・
そのように平和主義といったっていろいろあるんだから平和主義の人はそんな質問で悩むことないよ、としている・・・
うーむ・・・
読んでると何だか歯切れが悪いように感じます・・・
ちゃんと答えになっているか微妙なような・・・
そもそも、平和優先主義って何?
それって、前述のような非平和主義と何が違うの?
戦争やりたがっているような極一部のクレイジーなヤバい人以外・・・
つまりほとんどの人は平和優先主義じゃないの?
正戦論者であれ、現実主義者であれ、人道介入主義者であれ、全速力で暴力(武力)だけによる解決に走らないよね?
外交努力もするし、非軍事的措置もするし・・・
しないの?するよね?してるよね?
場合によっては暴力による解決も辞さないってだけで・・・
場合によっては暴力による解決も辞さないってことは平和優先主義と非平和主義ってほとんど同じですよね?
絶対平和主義の方と戦争やりたがるクレイジーなヤバい人以外は、それぞれ【場合によっては】の条件が違うだけでみんな平和優先主義じゃないですかね?
読んでいて、著者は無理に分けようとしてる感じがしてならない・・・
あ、いや、逆にだからこそ感情論に陥らず、みんなでもっと議論をしようよってことなのかな?
うーむ・・・
上の点については疑問があるものの、その他は結構良くてですね・・・
自分がどの主義、観点に拠ってものを考えるのか?の良いパンフレットになっております・・・
平和主義の論拠として、義務論『ダメなものはダメ』と帰結主義『結果的に損ならダメ』の考え方・・・
正戦論の考え方と正戦論者に対してのツッコミ・・・
・双方ともに正義を振りかざすのに、自衛/侵略を正しく判別できるのか?
現実主義の考え方と現実主義者へのツッコミ・・・
・定番の安全保障のジレンマ
逆に現実主義から平和主義へのツッコミ・・・
・ヒトラー止められなかったじゃん
人道介入主義の考え方と人道介入主義者へのツッコミ・・・
・現行の国際法に照らして、違法とは言わないけど、結構超法規的な措置だよね?
・そうは言っても結局暴力は暴力を生むよね?
・そもそも紛争当事者に武器を持たせないようにするべきじゃない?まずは武器売りつけないでよ?
といった内容になっておりまして、現代の国際関係に関する政治哲学の概要をザッと確認できるという点で良書だと思います・・・
平和主義者と非平和主義者って、お互いにあーだこーだ言い合うんですよね・・・
結構な溝がある・・・
その溝が埋まらない・・・
そこで著者・・・
「重要な点は、平和主義者と非平和主義者が、単なる好き嫌いの次元を超えて、その理由を相互に説明できる議論の土俵を共有することである。」
健全で妥当な議論によってその溝を埋めるための一助に、という一冊でもある・・・
オススメです・・・
Posted by ブクログ
トルストイの『戦争と平和』を読んでいる最中に目に入ったので、手に取る。
とても現実的な視線で書かれた「平和主義」の入門書だと思う。平和主義のパターンを類型化した上で、対象的な立場や、批判的な立場からの反論も検証していく。
タイトルに「政治哲学」とあるように、検証の仕方は論理に論理を重ねていく思考実験的で、私などそれに慣れない人間には読んでいるとちょっと頭が疲れてくるかもしれないが、豊富な引用や例があり文章はわかりやすい。
ただ絶対的に平和を唱えるのではなく、それぞれの利点や主張をバランスよく取り入れ、時は現実を考慮し妥協もしながら、著者はなぜ「それでも」平和主義が現在においても魅力的な主張であるかを説いていく。
本書を読んでもっとも思ったのは、やはり現代社会において平和主義を選ぶのは、相当の覚悟がいるだろうなぁ、ということだった。
非暴力を(強弱・範囲の差はあれど)主義として貫くことは、やはり、並大抵の覚悟でできることではない。
しかし、それでもこの平和主義の考え方は、多くの人が潜在的に望んでいることなのだろうと思う。
本書を読んで、私の中で平和主義そのものに対する何か胡散臭いイメージが、だいぶん払拭された気がする。
そして、圧巻は最後の読書案内! 平和主義を考えたい、勉強したいという人だけでなく、少しでもこれらのことに関わることを学びたい、という人にとって、素晴らしい導きとなるであろうリストだ。
そういう方面を勉強する学生が本書に出会ったらと思うと、その学生が羨ましい限りだ。
Posted by ブクログ
政治哲学の見地から見た平和主義の解説。
手法としてはまず平和主義にどのような分類があるか整理したうえで、様々な非平和主義の主張と「対話」するスタイルを取っている。
その結果として
(1)戦争と平和に関する主義・立場について政治哲学的見地から広く理解できる。
(2)非平和主義の主張を紹介し、相対化することで、平和主義の立場をより浮き彫りにすることに成功している。
(3)平和主義の立場に立ちながらも非平和主義の主張を頭ごなしに却下しておらず、読者に考える余地を提供している。
何せ歴史的に議論の積み重ねが非常に多い分野であるから、本書一冊で網羅することは当然かなわないことだが、この分野について今まで全く触れたことのない私にとっては、深さ・広さともに程よい本だった。
あくまで哲学書なので、論理に論理を重ねて推し進める論調であるため、通勤電車の中でとぎれとぎれに読むと時々ついていけなくなることもあったが、概ね平易に解説されている良書。
Posted by ブクログ
平和主義という概念がいかなる意味内実をもち、異なる立場と比較した場合、平和主義理論がいかなる思考を提供してくれるかを平明に解説している。国際関係論における、国際関係はいかにあるべきか、という問題に対する様々なアプローチを現実主義や人道介入主義として取り上げているが、国際関係論を専門的に学んだ人にとってはなかなか納得しがたい議論も含まれているように思われる。それでもやはり、平和をめぐる政治学的言説を出来る限り網羅しようとしていて、平和論への導入として非常に優れた新書であると思う。
Posted by ブクログ
「愛する人が襲われても無抵抗で良いのか?」という命題に対して,古今東西の各種考え方を提示.すこし読みづらいが考え方の整理にはなる.最終的な結論は自ら出すしかない.