あらすじ
シリア内戦、「イスラーム国」、「アラブの春」、石油依存経済、パレスチナ問題……中東では今も多くの問題が起こっている。しかし報道や時事解説を通してこうした事実を「知る」ことはできても、「なぜ」起こったのか、その原因を「理解する」ことはなかなか難しい。本書は、中東政治学のエッセンスを紹介しながら、国家、独裁、紛争、石油、宗教という五つのテーマをめぐり、その「なぜ」を読み解いていく。中東という大きな課題に向きあっていくために必読の一冊。
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Posted by ブクログ
たいへん意欲的な仕上がりになっていて目からウロコの一冊だ。
「中東」については、普段新聞で何らかの事件などをきっかけに、断片的に「宗教」や「政治・政体」について知る機会があるがどうもすっーと頭に入らない。本著のように中東を包括的に宗教や政治・政体、経済をつなげて解説していただくと理解が深まる、というか中東というものをとりあえず頭のなかで整理できる。
本著で紹介されている「石油の呪い」が大変興味深い。なぜ産油国は莫大な収益がありながら独自の先端産業が発展しないのだろうと思っていた。その理油が3つの呪いだ。
1 経済成長が不安定になる
石油価格の乱高下の影響やオランダ病が原因で国内の 工業化が思うように進まない。
2 紛争が発生するリスクが高まる
大きな富を生み出す石油産業だが、限定された地域や 雇用者に富が偏ることにより、持たざるものが武力で 利得を追求する。
3 家父長制が持続しやすくなる
国内産業が伸びないこと(オランダ病)や石油輸出収 入の国民への分配が増えることにより、女性の就労の 機会や意欲が低下してしまう。