【感想・ネタバレ】パトリックと本を読む:絶望から立ち上がるための読書会のレビュー

あらすじ

ハーバード大学を卒業した著者は、ロースクールへ進む前に、アメリカ南部の最貧地域の町で2年間、ボランティアの教師となることを決める。だが、劣悪な環境で育った黒人の生徒たちに読書を通じて学ぶ楽しさを教え、誇りを持たせたいという著者の理想は、最初からつまずく。読書以前に、生徒たちの読み書き能力は年齢よりはるかに劣っていたのだ。自治体に予算がなく人々に職のない小さな町で、生徒は将来を思い描けず、学校は生徒を罰することしか考えていない。それでも著者の奮闘の甲斐あって生徒たちは本に親しみはじめるが、当局の方針によって学校が廃校になってしまう。
ロースクールへ進んだ著者はある日、もっとも才能のあった教え子、パトリックが人を殺したという知らせを受ける。数年ぶりの彼は読み書きもおぼつかず、自分が犯した過ちに比べて重すぎる罪に問われていることが理解できていなかった。かつての聡明さを失った姿に衝撃を受けた著者は、拘置所を訪ねてともに本を読むことで、貧困からくる悪循環にあえぐ青年の心に寄り添おうとする。同時にそれは、ひとりの教師・法学生の自己発見と他者理解をめぐる、感動的な記録ともなった。

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Posted by ブクログ

ミシェルと、彼女が課した「本を読む」という課題に真摯に取り組んだパトリックとの間に実際に起きた出来事を描いた本書は、読書を通じて人はここまで変容し得るのか、思考はこれほどまでに転換し得るのかと、強い印象を残す内容であった。
同時に、ミシェルのパトリックへの深いまなざしと、パトリック自身の変わりたいという揺るぎない意志にも心を動かされるものがあった。
一方で、他者が介在できる範囲には限界があり、最終的には本人の意思に委ねられるという、社会の現実の一端を突きつけられたようにも感じた。

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2025年09月28日

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数年に一度しか出会えないであろう素晴らしい本だった。読みながら学び、考え、文学を味わうことができる。

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2025年02月12日

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図らずも殺人を犯した黒人少年と、
中国系アメリカ人女性教師の、
2人だけの読書会。

今年No.1だった。
読み終わり高揚感のせいでやや壮大な気持ちになってるが、まさに人間讃歌。そして教師という職業の神聖さにも感動した。

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2023年10月06日

Posted by ブクログ

いろいろなことが詰まりすぎていて、何を書いていいのかわからない。
ヘレナの学校での出来事、パトリックとの出会い、作者がセレナを去った翌年のパトリックの殺人、拘置所のパトリックとの読書会。どこをとっても一つ一つが重く暗く美しく尊い。
作者自身の個人的な事情、家庭状況も書かれている。作者の心の声も事細かに記され、ここまで丁寧に詳しく赤裸々に教えてくれなくてもと思いつつ、作者自身の人間的な魅力に惹かれていく。
特に最後に「もし自分がデルタに残っていたなら」というのが、わざわざ書かれているのが、私にはとてもうれしかった。「もしあの時こうしてたなら」というのはおそらく誰にでもあるのではないか。私などはあえて考えない。わざと振り返らない。振り返ることを禁じる。なんか負けてしまうような気がして。でも本当はその妄想に浸りたい。このような優れた人でも、そのようなことを考えるのか最後まで、と思うと個人的にすごく安心した。
人と人との出会い、読書の素晴らしさを深く感じさせてくれた。
こんな感想では全然足りない濃い内容の本であった。
高橋源一郎さんの「飛ぶ教室」で紹介されていて手に取ることになったが、たくさんの人に読まれるといいなと思う。

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2023年03月11日

Posted by ブクログ

台湾系アメリカ人、家族の期待に応えて勉強して大学進学し、後に司法試験を受け、「成功」している立場の著者が、黒人の権利獲得運動に共感することで、出口のない貧困地域で教員の経験をし、そこで出会った人との深い交流を通して綴ったルポルタージュ

家族の期待に応えなければいけない、というアジア系特有(?)の息苦しさと、自分が善と信じることをしたい、でもそれは本当に善いことなのか、という葛藤

言葉を信じ、教育によって表現することを学べば、世界は言葉によって開かれるということ

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2022年07月19日

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丸の内の丸善でノンフィクションの特集の本棚に置いてあった。

初めは気づかなかったが、「パトリックと本を読む」というタイトルが目に入った。読書会に関する本かなと思い、手に取って帯に書いてある「自己発見と他者理解」という言葉に惹かれた。

それは自分にとっての本を読むという行為、読書会をしていて思う、その本質を言い表しているような気がしたからだ。
買って一週間もたたずに読んでしまった。

本書のあらすじとしては、アジア系アメリカ人の作者が大学時代にボランティアとして黒人差別とその抵抗運動が激しかったデルタ地域に赴く。
しかし、今はそのような名残もなく貧困と諦めが蔓延している学校で、彼女は教師として学生と本や詩を通じて向き合う。
その後、司法試験のためにこの地を離れ、弁護士のインターンを目前に再びこのデルタ地域に戻る。教え子はかつての輝きを失った姿として現れる、というものだ。

作者の読書に関する一連の文章がとても良かった。
「パトリックと本を読んでいたとき、彼がまるで初めて出会った、私が理解し始めたばかりの人のように思える瞬間が何度もあった。その一瞬一瞬、私たちのあいだには、不思議な、根本的な、ありそうにもない平等さがあるように思えた。本を読めばたとえつかのまだろうと、人は予測を超えた存在になれる。それが読書の力だ。本を読んでいるとき、その人は別のだれかかが『こういうタイプ』と決めつけることのできる人間ではなく、あらかじめ規定されていない素のままの人になっている」(342ページ)
このような気づきや丁寧な自己の描写が繰り返し、重複しつつも進んで行く。
自分と他者を見つめる中からアメリカのある地方の歴史、公民権運動の過程、司法制度等様々な環境を描写していく。

言葉が連なってできる文章が本という形態をとる事によって、または詩という形態をとる事によって、その形態が何を引き起こしうるのかという事の一つの事例でもあるように思う。

立場や認知の異なる人々を乗り越えて同じ景色を見るという現象が起きている。
そういう事を自分も目の前で見ているようだった。それは次の瞬間には揺らいでしまうものだったりもするけれども。

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2021年09月12日

Posted by ブクログ

ーむしろ私は信じなくてはならないのだ。
あるとき、ある場所でふたりの人間が互いに
大きな影響を与えあえるということを。

そう、信じなければいけない。
それこそが、世界を変える。
いや、それしか世界を変える方法はない。

そう思える希望の本。

アメリカの最下層に生きるパトリック。
救おうとする作者。
ブルデューの「ディスタンクシオン」によれば、人生は、置かれている環境によってほぼ決まっている。
であるならば、一介の教師が生徒を救うことはできないのか?
置かれた環境に抗って、抜け出せる程の影響を与えることはできないのか?
この本を読むと、たった一人の生徒を、一生かけてケアしても、救うことは難しいと分かる。
たった一人を、だ。
一生かけても、だ。

それでも、信じて行動する。
それしかないのだ。
たった一人の隣人を救おうとすることの尊さを感じた、そんな忘れ得ない読者体験だった。

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2021年01月30日

Posted by ブクログ

とても静かで美しい文章。ひとつひとつの文が、撒いた水が土に染み込むように、身体に入ってくるようだった。

黒人の歴史が横糸となり、自身の将来への希望と不安、家族等との関係を交えた選択が縦糸となって織られていく。そこへパトリックの物語が絡んで立体的な織物となり、時には調和し、時には解れ、ひとつの作品になっていった。

著者が多くの本を読んでいたこと、とくに詩に親しんでいたことが、そういった文章に表れているのだと思う。

目に浮かぶのは、子供たちと車でミシシッピ川にかかるヘレナ橋を渡る場面。大きな川を越えることは、将来への明るい希望を表しているようでもあり、一方で立ちはだかるとてもとても大きな困難を表しているようにも感じた。
車内に満ちる静寂は、純粋に感じる川の大きさと美しさ、抑圧からの開放、そして心の奥底にある、将来訪れるであろう抑圧に対する達観なのではないか。

アーカンソー州を例として、黒人のおかれた状況はとても厳しい。小学生にして、将来を諦める状況をしり、諦めてしまわざるを得ない描写は、読んでいて辛い。それでも少しだけでも希望はたしかにある。いくつかの芽はある。
私自身は大きなことはできないけれど、できることをやっていかなければ、と思う。

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2020年08月28日

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「参考文献」ページに書かれている「アーカンソー州の子どもと家族を守る会」の情報によると、2013年の時点でも、黒人生徒が校内謹慎処分を受ける頻度は白人生徒の約3倍、校外謹慎処分に至っては5倍以上、黒人生徒が体罰を受ける頻度も2倍。
警官によって男性が殺害された件をきっかけに、アメリカで大きな抗議行動が起きているが、その背景を垣間見ることができる貴重な本。差別はアンクルトムや、キング牧師の時代とは形を変えて、多くの黒人の前に立ちふさがっている。アジア系から視点で書かれているこの本は入門編として最適。また、学ぶこと、本を読むこと、立場を越えて人と人がつながること、そうした大切さも教えてくれる。

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2020年07月11日

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罪を犯してしまった黒人の少年と、元教師の歩んだ道のり。
拘置所での面会時に重ねられる授業。
少しずつ着実に学びを深める少年。
黒人人種差別問題についての記述も多く、その置かれる状況も奥行きを持って知る事ができる。

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2020年06月21日

Posted by ブクログ

時代小説は、私にとってよく知った友人みたいなものだ。

スルスルと流れるように入ってくる文章は

「読む」行為そのものが楽しい。



けれど、時折好きか嫌いかわからない「読み物」も

必要なのだ。

偶然の出会いの中から、時に後々まで印象に残る

大切な本当の出会いがある。



この本は、まさしくそうだ。



初めての執筆となったミシェル・クオは

台湾からやってきた移民の夫婦の娘。



夫婦は、それこそ働きに働いて娘に教育を授けた。

英語もわからず、資格もないまま台湾から移住した夫婦には

一生懸命働き、後ろ指刺されない生活こそが

まるで教義のように第一であった。



そんなミシェルはハーバード大を卒業し、のちに

ロースクールも卒業する才媛。



少女の頃から本が大好きだったミシェルは

ミシシッピ州アーカンソーの片田舎、

そう黒人にとって未来が見えない地域へ行くことにした。

両親の希望とは違った決定だった。



そこで黒人の生活、そこに至った歴史が

昔のことではなく今のその瞬間にも

延々を続いていることを気づく。



黒人ばかりの、それも他で問題があった生徒が流れ着く学校。

そこで、パトリックという少年と出会う。











アメリカでは、今黒人が警官に殺された事件が

大きなムーブメントになっている。

日本にいてはわからない根深い問題の大きさ、深さ

まさしく、この本はそれを描いている。



字体が少々小さめで、読みにくさも否めないが

我慢して4分の1ほどを読み進めれば

あなたは、もう途中で放り投げないだろう。



機会があれば、ぜひ読んでいただきたい1冊。

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2020年06月10日

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よかった。貧困と犯罪の世界からどうやったら抜け出せるのか、抜け出すことは可能なのか…などと思いながら読んでいたが、中ほどからは、それよりもパトリックの豊かな読みに驚かされ嬉しくなり、読書の純粋な歓びを再確認することとなった。難を言えば、パトリックの状況は解決されたわけではないし、ここまで献身的な著者の関わりも例外的かとは思うけれど、なんにせよ、パトリックが詩を朗読したり詩を作ったりしていくシーンには幸福感と言っていいものがある。

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2020年05月19日

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ミス・クオがパトリックと共に読むことと書くことを通して視角や感性を広げていく。アメリカ南部アーカンソー州のデルタ地帯の現状、クオが直面するアジア系移民とその子世代をとりまくまなざし、ハーバードのエリート達が選びとる進路の揺らぎなど、いろいろな視点から読むことができる。

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2025年05月07日

Posted by ブクログ

教師は生徒をすこやかに生きる力を与られるが、今より明るい未来へ導けるか、そして相互間に信頼関係を結べるか?
そう言うことを考えさせられた。
荒れ果てすさんだデルタ、仕事もなく犯罪の巣のような町で生きることに投げやりな人々。根強い黒人蔑視、筆者自身も中国系ということで差別体験はあり、そのような泥沼感に理解がある。だからクオ先生の記録としても興味深い。
そして何より筆者がパトリックを助けようとキャリアを犠牲にして刑務所に通い本を読みながら共有した時間、会話に感動した。
最後、あったかもしれない未来に思いを馳せるところ胸に響いています。

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2021年08月17日

Posted by ブクログ

アメリカの黒人差別がどれだけ酷いものかがわかる。
生まれながらに蚊帳の外に追いやられ、自由がほとんどなかった時代。

暴力や殺人が当たり前、警察は見て見ぬふり。

警察が見て見ぬ振りとか意味あるのか?
当時の話を聞いてるとただの給料泥棒にしか感じない。

それが親子代々に受け継がれていく。
というか、なにが「普通」かわからない。心から。
それだけ当時は黒人差別が酷かった。近年も人種差別に関する運動は過激になっている。

パトリックがミシェル・クオと本を通じて成長していく姿に感動しました。実話なので、リアルに、鮮明に感情や情景が思い浮かびました。

私自身も今年に入って読書をたくさんするようになりました。ジャンル問わず、どんな本からもインスピレーションを得て、成長につながっている実感があります。

そして、本を通じてもっと世界の知らないことや、文化が異なる人々の価値観を知りたいとより強く思えた本でした。

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2021年06月14日

Posted by ブクログ

アメリカの人種差別を土台にした、教師と生徒の物語。
パトリックの側からも主人公側からも共感できる部分もあった。

1番好きだったのが、p359でパトリックが線を引いていた場面。「抑圧された人々には割く時間もエネルギーもない」という一文に、私も共感した。

抑圧された人々とは、
自分がそれを手にできることを知らない、自分を守ることを知らない、自分のことに関心がない人だと考える。

知らないことを知るとどうしようも無い苦悩の日々が始まる。

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2021年06月06日

Posted by ブクログ

アメリカの今、BLM、格差、教育、貧困、差別、様々なことが要因で起きる事件、事故、犯罪・・・

そして、人との出会い。
人生で著者のような「先生」に出会える確率はどれぐらいなのか。ここに書かれた記録を見て、絶望から立ち上がるために、人は何ができるのか、改めて考えさせられた。

人によって「絶望」する事象は違う。どうすれば生き直しができるのか。更生という言葉では表現できないものを感じた。教育者として教え子たちの背景に気付ける著者の能力の高さと行動力に参りました。

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2021年01月21日

Posted by ブクログ

貧困や犯罪、教育の遅れなどの悪循環から逃げることができない生徒たちを本を通して変えようとする。
分厚めの本であるが読みやすい文章で数日で読んでしまった。
教育を受けられる幸せを実感すると共に、人間の愚かさも考えさせられる。

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2020年09月04日

Posted by ブクログ

著者・ミシェルは米国生まれの台湾系アメリカ人。両親が台湾からの移民である。ハーバード大学を卒業後、南部アーカンソー州の学校で英語を教える。その学校は公立学校だが、州内で最低のレベルの学校だった。生徒は全員黒人で、卒業できる生徒はわずかしかいなかった。そこでパトリックと出会う。学校をさぼりがちなパトリックだったが、才能を表す。周囲の生徒からも一目置かれるようになる。だが、ミシェルが学校を辞め弁護士資格の勉強をしているとき、パトリックが友人を殺し刑務所に入っていることを知る。面会に行ったミシェルは、パトリックの学力的な変わりようにショックを受け、毎日のように面会に行き二人きりの読書会をする。

米国の抱える深い人種問題。ちょうど今、米国では白人警官が無抵抗の黒人を殺してしまったことから、国中で差別撤廃のデモが続いていいる。まさに、この本に出てくる世界だった。ミシェルは、自分がずっとその学校にいたとしても事態が変わっていたとは限らない事は知っている。それでも少し悔やむ。パトリックは出所後、前科があることでなりたい職業につけない。それでも、家族に囲まれ少しづつ前に進む。わずかな希望を読者に与える。

訳者は、たぶんこだわりを持って「ライオンと魔女と衣装だんす」と訳したのだと思うが、「ライオンと魔女」のほうが良かったのでは。確かに原題には「衣装だんす」までついているのだが、日本人には「ライオンと魔女」がナルニア国だと思っていると思う。訳者のこだわりがわからない。

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2020年07月13日

Posted by ブクログ

私は恥ずかしながらアメリカの歴史を知らない。白人の黒人への差別問題もなんとなく学生の頃に授業で触れた程度で詳しくは知らなかった。
アジア人への差別問題も、耳にすることはあっても経験もないため実感は持てないのが現実だ。
アメリカに対しては、世の中の雰囲気的にもどこか「憧れるべき国」だという印象があって、このことと繋がらないこともあるだろう。

この本を読んで1番よかったと思えるのは、今でも根付いているこの問題は、私たちが「差別はよくないよね」「差別はやめよう」と言って通じるほど単純な問題ではないのかもしれない…と言うことに気付いたことだ。

作者のミシェル・クオは台湾系のアメリカ人。その説明だけでも、改めてアメリカには本当に多くの人種が暮らしているのだということが分かる。

ハーバード大学卒業後にTeach For Americaのプログラムに参加した彼女は、アメリカ国内で最も極貧地域のひとつであるデルタ地域に教師として2年間、赴任することになる。
その時出会った生徒の1人がタイトルにも名のあるパトリックだ。
デルタのヘレナで2年を過ごし、ロースクールへ進学するために生徒たちと離れたクオだが、ある時パトリックが殺人を犯して拘置所に入っていることを知り、会いに行く決心をする。そこで拘置所での面会という形で、数年前の授業の続きを行うことになった。

クオは時には厳しくしながらも根気よく、文字の綴り方からパトリックに教えていく。黒人であるパトリックを取り巻く環境や生活の問題、私が普段生きているだけでは見えないことやわからないことがたくさん出てくるのでひとつひとつに衝撃を受ける。
単に「ハーバードを出たアジア系アメリカ人の女性が黒人の貧困層の教え子に無償でずっと教え続けた」などという簡単な言葉で済まされるような美談ではない。
著者自身の、時に迷ったり、猛省したり、もがきながらパトリックに向き合う姿は、読んでいるだけで、ものすごくエネルギーを使う。とてもしんどい本だった。読むだけでは当然理解もできていないことが悔しい。

心に響いたのは、まだ16歳のパトリックの諦めにも似た言葉だった。何となく、頭ではそういう人たちもいるとわかっていたものの、自分の生きていく先に希望を見出せないということがどういうことか、ほんの少しだけ現実のこととして感じることができたように思う。

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2020年06月26日

Posted by ブクログ

パトリックと本を読むのは主に後半から。
パトリックとの出会いや経験を通じて、自身と他人の人生のままならさと向き合う話。
本を読むのは良い。

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2023年09月28日

Posted by ブクログ

台湾系アメリカ人の筆者が、未だアメリカ国内で人種差別が激しく、最貧地域のひとつミシシッピ・デルタのヘレナで、殺人を犯して捕まったかつての教え子のいる刑務所に本を届け、読書会を催し彼を再生していく物語。

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2021年01月23日

Posted by ブクログ

著者とかつての教え子パトリックが「読書」を通して、他社理解、自己理解を深めていく記録である。

著者が文中において引用される文献から、彼女の膨大な読書量や知力が垣間見れる。また、強い信念と行動力には頭が下がるが、彼女を突き動かしているものは、アジア系アメリカ人という出自にヒントがある。

黒人差別だけでなく、黄色人種の差別もさらりと触れており、アメリカにおける人種差別の根深い問題を軸に、著者は他者理解の難しさ、理想と現実のギャップを綺麗事を並べることなく、素直に語っている。

唯一救われるのは、静かな環境とたくさんの本、大人の少しの導きがあれば知的成長は誰にでも約束されるということを証明してくれていること。
しかしながら、「読書」によりパトリックは最終的に救われたのか。NOでもYESでもない。現実は厳しい。でも諦めてはいけない。

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2020年09月20日

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