【感想・ネタバレ】ダブルハーベスト―――勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザインのレビュー

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ネタバレ

ある作業をデジタルに置き換えただけの直線的なデジタルシフトではなく、AIに新しく学習させるためのデータを自走的に作り出して再学習させるループを何重にも回していけることが重要という点はとても腹落ち。この点、前職の事業会社でDXの名の下で行われてたことも思い返せば前者だったのだなとなかった視点。所々、それは本当に差別化できるユニークなループなのか疑問な点はあったものの総じて新しい視点が得られた。特にユーザーインザループの構造で、ユーザーが気づかない無意識な行動で新しくデータを生み出させるGoogleの例は面白く、行動と結びついたUXのデザインと密接に結びついていくのだなと思いながら読み進めてたらその通りに書いてあった。

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2023年01月10日

Posted by ブクログ

AI(人工知能)を、技術的に論じたものではなく、ビジネスモデルの中で戦略デザインとして位置づけたものです。

■わかりやすく、前半は、ビジネスモデルなどの解説、後半は、ケーススタディをつかった実例を扱っています。
■AIがコモディティ化し、ゲームの焦点が、「技術」でなくなったいま、もとめられているのはAI活用の「戦略デザイン」です。
■それは、ダブルハーベストループという戦略モデルです。
すくなくとも、実務ベースと金融ベースの二重ループが作れるわけで、このダブルハーベストループを回し続ければライバルは追いつけなくなるというのが本書の最大のメッセージである。
■勝ち続けるための仕組みとしてAIの深層学習をベースにおいたループ構造をつくって回す
■他者の模倣ができないように、ループも二重三重につくって、複数の競争優位を築き上げる

AIは人間の仕事を奪うのではなく、人間の仕事をアシストしてくれる存在
3つのアプローチがある
①ヒューマン・イン・ザ・ループ 人間とAIのコラボ 深層学習と追学習で成長する。さらにその中には人力検査型、人間バックアップ型、監査型の3つの型がある
②エキスパート・イン・ザ・ループ 専門家の能力を最大化する
③ユーザ・イン・ザ・ループ ユーザに参加してもらってAIの精度を上げていく

AIが発揮している価値は5種
①売上増大 ②コスト削減 ③リスク・損失予測 ④UX向上 ⑤R&D加速

AIの機能は3種
①認識 ②予測 ③対処

業務の全体最適とAI ボトルネックにAIを適用して大きな効果を得る
(全体にはAIは適用できないのでどこに適用するのが効果があるのかを検討する)
・レスデータ 少数の有効なデータをつかって、迅速にAIを立ち上げる GANなど作られたデータなどを使う
・トランスラーニング 領域Xで開発したAIを領域Yに適用する

UVP:ユニークバリュープロポジション 他社にはない唯一無二の価値を追求する

100人が必要な業務にAIを適用して、たとえば85%が上限になった場合、その85%をサチュレーションという
飽和均衡になった業務は人がやるが、85%の効果があった。さらに学習で95%になった場合、残15%を残5%にしたわけなので、そこから、さらに3倍の効果があったことになる。

ループを一重にしておくと、他社から模倣されて、レッドオーシャンになってしまう。それを防ぐために、二重三重のループを形成する

どんなデータをためればいいのか?
①IDに紐づいた個人データ ②取引先データ ③地理データ

ハーベストループ実装の9ステップ
①KPIに落とし込む
②推論パイプラインのデザインとレビュー
③初期データの特定と準備
④初期実験とファインチューニング:POC
⑤累積データの「型」特定
⑥UI/UXデザイン
⑦実装・デプロイ
⑧クオリティチェック
⑨実運用と継続効果検証

・AIプロジェクトは、不確実性にある。WBSを用意してもほとんど守られないという現実 POCなどを使う
・イテレーションを使って短期間に開発⇒検証を繰り返す(アジャイル)

目次は次の通りです。

はじめに 「技術」から「戦略デザイン」へ
Prologue 勝敗を分ける「何重にも稼ぐ仕組み」ーハーベストループとは何か?
Chapter 1 AIと人とのコラボレーション ーヒューマン・イン・ザ・ループ
Chapter 2 AIで何を実現するかを見極める ー戦略デザイン構築のための基盤つくり
Chapter 3 戦略基盤を競争優位に変換する ー戦略デザインとしてのAI
Chapter 4 データを収穫するループをつくる ーハーベストループでAIを育てる
Chapter 5 多重ループを回して圧勝する -ダブルハーベストこそ最強の戦略
Chapter 6 ハーベストストーリーを実装する ーAIプロジェクトマネジメントの考え方
Epilogue 地球をやさしく包む「最後のループ」ーSDGsとハーベストループ
おわりに AIよりも戦略よりも大事なこと

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2022年05月12日

Posted by ブクログ

これはただのAI本でない。
これからの企業活動の中で、大前提として抑えておかなければならないエッセンスがここにある。

データが当たり前のように作り出される世界において、そのデータをいかに活用し、シングルラインとして活用するのみならず、如何に好循環なループをデザインするかが、重要。
そして、そのループを幾重にも設計することが、今後の競争力を高めることになる。

最後に記載されている、トライアングルとして、企業のパーパス、ハーベストループ、そしてUXが描かれており、パーパスあってこそのその二つであり、素晴らしいUXによってmore dataを、精巧なハーベストループによって、better UXを。
この好循環を創り出し、その中で、人々が、或いはエキスパートが、踊るように”働く”、そんな活動体としての組織が今後注目を浴びるだろう。

今までは、単一の製品サービス、分断された製品サービス、或いは一方向の製品サービスであったが、それを上記のような仕組みとして、社会に価値提供していくことな求められている。
AI実装自体はコモディティ化した。
故に、このAIやデータを前提としたオペレーションの再設計ができるか否かが鍵である。

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2021年09月03日

Posted by ブクログ

優位性を確立したとしても他社にすぐ模倣される。すぐ模倣されない持続的な優位性は何重にも利益を生み出す源泉を作りそれらを継続的にループさせることと説く。そしてそのループには人間も入ってデータを育てAIを成長させる。すなわち育てて収穫する農業のようにビジネスを行う時代だと啓蒙し具体的な進め方までしっかり解説しています。利益を生み出す源泉と考えたことが違っていたりすることもあるだろうし、試行錯誤のPDCAも回す必要もありそうで、実行するのはとても大変そうですが、うまく複数の収穫のループが見つかれば、それを回し続けることでビジネスが大きく成功しそうです。ちなみに、本書でもっとも刺さったのはエピローグで述べられているの地球規模の全体最適とおわりにの自分が作りたい未来でした。

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2021年04月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

■単なるコスト削減にとどまらない
- [ ] 入力作業から解放された担当者がセールス業務に注力したことで、売上アップに繋がった。つまり、データ入力というのはセールス担当者にとっては余計な仕事にすぎないわけで、それを免除されれば、本来彼らにしかできない仕事に専念できる。
- [ ] 「業務標準化」の価値はコスト削減ではなく売上エンジンへの更なる注力となる。

■自社事業やサービスをつくらず全てをAPIやSaaSで賄おうとする弊害
- [ ] 自社にデータを貯める仕組みが無いため、強いループ構造を生み出すことができない。
- [ ] 最近複数のSaaSを提供されている企業は特に痛手になるのではないか?自社で新規事業を生み出す必要がある。
- [ ] そのため、ただのSaaS提供は別の不を産み出している可能性がある。新規事業とSaaSをセットで提案するのが顧客目線な気がする。
- [ ] コスト削減以外のアウトカムを提供する。


以下メモ。

ダブルハーベスト 勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン
 
「技術」から「戦略デザイン」へ
〜AIブームの背後で起きた「ゲームチェンジ」に気づけているか〜
・肝心なのは「AIをどのように企業の戦略の中に組み込んでいくか」。
 
■日本企業には「勝ち続ける仕組み」が欠けている
AIがコモディティ化し、ゲームのしょうてんが「技術」ではなくなった今、求められているのはAI活用の「戦略デザイン」。これからのビジネスは以下を問うべきフェーズに来ている。
アフターデジタルの世界においては、人々のリアルな体験=UXを通じて人々の行動データが集まってくるようになる。行動データをAIによって解析すれば、人々の行動をなめらかにサポートできるようになる。
・AIを取り入れることで、御社の持続的な競争優位性を高められるか?
・AI実装によって何重にも利益を生み出すループを描けているか?
・御社のAI活用は勝ち続ける仕組みをデザインできているか?
 
■「DX=デジタルシフト」という致命的な誤解
・AIは目の前の勝負に「勝つための手段」では無い。むしろAIは「勝ち続けるための仕組みづくり」においてより大きな威力を発揮する。
・そのためには、AIがより賢くなるようなループ構造を作って回すのが第一のステップとなる。だが、ほとんどの企業はこの段階でつまずいている。ループ構造がつくれていないから、せっかくAIを導入したのに、大した効果が得られないのだ。
・そのため、蓄積されたデータによって、AIの精度がどんどん高まっていくループ構造をつくるのが当面の目標となる。それができるだけでも、競合に対するアドバンテージとなるだろう。だからこそ、もはやAIの本質は、技術論ではなく戦略論の方にある。
・そこで必要なのは、競争力の源泉を1つだけつくって満足するのではなく、二重、三重のループをつくって、複数の競争優位を築くことである。これこそが「ダブルハーベスト」の狙いであり、デジタルを駆使して会社を丸ごと進化させるDXの1つの理想形といってもいい。そこまでやってはじめて「AIを使いこなした」といえる。
 
■AIと人間のコラボレーションの価値は、単なるコスト削減にとどまらない
・世界有数のメガバンクグループ「HSBCホールディングス」のケース。ローン審査にまつわる書類の入力作業を1万人以上のセールス担当者がそれぞれ行なっていた。その作業の一部をAIによって自動化したところ、単なるコスト削減以上の効果があった。
・入力作業から解放された担当者がセールス業務に注力したことで、売上アップに繋がったから。つまり、データ入力というのはセールス担当者にとっては余計な仕事に過ぎないわけで、それを免除されれば、本来彼らにしかできない仕事に専念できるということ。
 
■AIの学習にユーザーを取り込む「ユーザー・イン・ザ・ループ」
・AIと人間のコラボは、社内人材やエキスパートだけにとどまらない。ユーザーに参加してもらってAIの精度を上げていく「ユーザー・イン・ザ・ループ」というアプローチもある。その典型は、グーグル翻訳の右下についている翻訳結果のコピーボタンだ。
・今まではグーグル翻訳で訳された結果が使われているのか、使われていないのか、グーグルには把握できなかった。
・ところが、ここにコピーボタンをつけたことによって、使われたかどうかが分かるようになった。コピーされたということは、その訳が正しい(あるいは使える)とみなされたわけで、翻訳結果が正しいかどうかという判定をユーザー自身がしていることになる。それによって、AIが学習するための教師データがどんどん溜まっていく。
・さらに、もしユーザーが翻訳結果に満足しなければ、AIでも分かるように、文章表現を簡単にしたり、主語述語の関係をはっきりさせたりして、似たような言葉を入力し直すこともあるだろう。すると、コピーボタンを押さずに再度入力された文字列が、翻訳結果のズレを修正するためのトレーニングデータになる。これがユーザー・イン・ザ・ループの破壊力だ。
・コピーボタンを置いたからといって、グーグルはユーザーに何かを強制したわけではない。ただ、翻訳結果をコピペしたい人にとっては、ボタン一発でコピーできた方が便利だという「UX(ユーザー体験)の改善」に過ぎないのだ。
・しかし、その延長線上で、AIのトレーニングデータが自然と溜まっていく仕掛けになっているところがすごいのだ。まさにデータを育てて収穫する「ハーベストループ」の考え方そのものだ。
 
■AI戦略は水平分業から垂直統合へ(E2E学習)
●出来合いの機能を組み合わせればすぐに始められる。
・学習によってAIをどんどん賢くしていくためには、教材となるデータを育て、収穫する仕組みをつくる必要がある。私たちはこれを「ハーベストループ」と呼び、いち早くグループ構造を回すことを目指している。
・一方、すでに述べたように、AIは既にコモディティ化して、誰でも安く利用できるようになっている。今や利用可能なさまざまなAIのモジュールが公開されていて、それらを組み合わせるだけで、誰でも簡単にAIの恩恵を享受できる。
・そのため、手っ取り早くハーベストループを回すには、利用可能なAPIやライブラリから必要な機能を引っ張ってきて、それらをレゴブロックのように組み合わせるだけでいい。それだけAIは身近な存在になっているわけだ。
■借り物は借り物でしかないという現実
・グーグルを筆頭に、すでに学習済みの有用なライブラリがいくつも公開されているので、そこから定評のあるものを選んで組み合わせればいい。借り物のパーツの寄せ集めでも、全体で65%くらいの精度はすぐに実現できるだろう。それだけでもかなり負担が軽減されるはずだ。
・ところが、こうしたアプローチでは、AIを自分たちの思ったように賢く育てることはできない。公開されたライブラリは、ある特定の機能を提供してくれるだけで、再学習する機能はほとんど提供されていないからだ。
・もっとこうしたい、こういう風に使いたいというファインチューニング(微調整)ができてはじめてAIを賢く育てられるわけで、最初からそうした機能が提供されていなければ、いつまでも精度65%のまま利用し続けるしかない。ループを回すことで学習用のデータを自動的に収穫し、それをAIに再学習されることで精度を上げていくのが本来の狙いなのに、再学習する仕組みが無ければ、AIは永遠に同じ精度のままだ。
■AIを賢く育てるにはE2E学習が不可欠
・そこで、次に求められるのが、自前でAIモデルを構築することだ。パーツの寄せ集めを脱すれば、最初から最後まで一気通貫でAIをトレーニングすることができる。これを「E2E(End to End)学習」という。E2E学習は、ハーベストループを回し続けるための前提となる。
・つまり、スタート時は何よりもスピードが大事なので、ありもののAPIやライブラリを組み合わせていち早くAIモデルを実現する。しかし、いったんモデルができ、ループが回ってデータを収穫できるようになったら、出来るだけ速やかに自前のシステムに移行して、E2E学習でAIを賢く育てていく。こういう二段構えの取り組みが求められているのだ。
・E2E学習が有利なのは、最初から全体最適を目指して訓練できるからだ。自分たちの目的に応じて独自に育て、収穫したデータを自前のAIに与えて、自分たちで再学習を進めるからこそ、精度を上げていくことができる。最終的に85%以上という高い精度を実現できれば、借り物のパーツでシステムを組んだライバルよりも2割増しで優位なポジションにつけられる。それだけ精度に差があれば、コスト競争力上でも優位だし、AIによって実現するサービスの質にも開きが出るだろう。
・APIやライブラリの組み合わせだけでは、差別化のための戦略デザインが完成しない。E2E学習の考え方を取り入れていかないと、これからの競争に勝ち残れないことは肝に銘じておくべき。
■AIが実現する5つの「最終価値」
・1.売上増大
・2.コスト削減
・3.リスク/損失予想
・4.UX向上
・5.R&D加速
 
■AI導入を戦略デザインに組み込むための基盤づくり
・AIを使ってある価値を実現したとして、それを1回限りの勝利にしないためには、AIが学習するためのデータが半ば自動的に入り続ける構造をつくる必要がある。それによってAIを育て、勝ち続けるためのハーベストループを回し続ける。
 
■「機能」と「データ」のかけ算で「最終価値」を実現する
・「最終価値」は「機能(Function)」と「データ(Data)」のかけ合わせによって実現される。
 
■「UVP」をキープするのが戦略立案の目的
・戦いに「勝つ」とはどういうことだろうか。「市場で1位になること」という捉え方では単純すぎる。むしろ、ここでは「自分たちが決めた軸で1位になること」を定義したい。
・そして、ライバルよりもユーザーに対して手厚いフォローアップをするにはどうすればいいかを考え抜くことで、戦略が見えてくる。
・最終的には、ユーザーに選ばれなければトップになれないので、「顧客に対してどのような価値を提供するのか」という視点を抜きに、戦略は語れない。他者には無い唯一無二の価値を提供するという意味で、これを「ユニークバリュープロポジション(UVP:Unique Value Proposition)」と呼ぶ。
・UVPがあれば、他社に対して競争優位になる。他とは違う自分たちだけのユニークな価値を提供できるから。そして、「勝ち続ける」というのは、そのユニークさがずっと維持されている状態を指す。
・UVPを維持するには、ユニークさを不断に追求し続ける必要がある。さもなければ、一時的にユニークな価値が提供できても、やがて他社に追いつかれる危険がある。
 
■データを“狩る時代“から“育てて収穫する時代“へ
・AIがブームになる少し前は、ビッグデータという言葉が流行っていた。データを握ったものが勝者になるという意味で、「データ・イズ・キング」と考えられていた時代だ。しかし、単にデータをたくさん持っていれば勝てるというのは幻想に過ぎないことが分かってきた。
・ビックデータ時代にもてはやされたのは、すでにあるデータをどう活用するかという発想だった。典型的なのが「こんなデータが取れました」「こんなデータもあります」「それを使えば、こんな傾向が読み取れます」というパターンで、大量のデータからインサイト(洞察)を抽出して、それを競争力に繋げていこうという考え方が主流だった。
・ビックデータ時代にもてはやされたのは、ストック型のデータだった。しかし、AI時代に使い勝手がいいのはどんどん流れてくるフロー型のデータであり、フロー型のデータを扱うには、データがリアルタイムで入ってくる体制をいかに築くかが勝負を決める。
・ビッグデータ時代は既存のデータを探して狩る狩猟の時代だったと表現できる。だが今は、必要なデータを自ら育て、できたそばから収穫する農耕の時代に突入した。
・そして、データを育て収穫するサイクルこそが、本書が提唱するハーベストループに他ならない。データを握った者が勝つのではなく、リアルタイムでデータが入ってくるループ構造をつくった者が勝ち続ける。「データ・イズ・キング」ならぬ、「ループ・イズ・キング」の時代の到来だ。
 
■AIプロジェクトに向いているのは「生データ+アジャイル型開発」
・今では、どんなデータが必要なのかを最初から決めなくてもいい、という見方が新たに広がってきた。つまり、とりあえずテキストデータを全部残したり、現場の様子を丸ごと録画・録音したりしておいて、そこから何を抽出するかは、運用しながら考えていけばいいし、状況に応じてどんどん変えていけばいいという発想。
・とにかく見切り発車でも始めてしまえば、あとからいくらでも調整できる。その意味で、AIプロジェクトというのは、走りながら考えるアジャイル型の開発に向いている。中小企業でもAIに取り組みやすいのは、アジャイル型だと初期投資が少なくて済むから、という面も忘れてはいけない。
 
■人間にしかできない仕事にメスを入れる
・今まで構造化できなかった領域にこそ、人間にしかできない仕事が含まれている。いわゆる職人芸の世界だ。属人的な要素が強すぎて、うまく言語化できない。あるいは言語化されてこなかった領域にメスを入れて、その一部だけでもAIで代替することができれば、レバレッジが効く。
・すでにある程度自動化できていた部分でAIを使っても、効果は限定されるのに対して、これまで自動化とは無縁だった職人芸の世界で、たとえ3割でも自動化できれば、その効果は絶大だ。
・職人の勘と匠の技で培われてきた世界にAIで切り込めば、今まで個人間でしか伝承できなかった技の一部が横展開できるようになる。親方の背中を見ながら10年かけて身につけた知識と技が、たとえ一部であってもAIによって代替できれば、相当な強みとなる。
 
■データを複数つなげば無敵になる 自社しか持てないリンクデータ
●自社固有のユニークなデータとは何か?
・ハーベストループを回すときは、どんなデータをためればいいのかというのが中心的な議論になる。誰でもためられるようなデータでは、他社と差別化できず、戦略上の価値はあまりない。そこで、ここでは「データをためる時のコツ」を紹介していく。
・どんなデータなら、ユニークといえるのか、他社に真似されにくいデータ、自社にしかためられないデータとはどんなものなのだろうか。この問いかけがすべての出発点となる。
・結論からいうと、データを単独で持っていても、実は、大した効果は期待できない。そうではなく、いくつかものデータをお互いにリンクさせることで、他社にはない、ユニークなデータが手に入るのだ。
・たとえば、オンライン英会話サービス。そのようなビジネスを展開している場合、おそらく授業のあとに毎回簡単なアンケートに答えてもらえば、顧客満足度のデータは簡単に取ることができる。しかし、それだけでは、講師の評価には使えるかもしれないが十分ではない。たとえば、レッスンの様子をすべて録画するようにすれば、何が起こるだろうか?生徒の表情データを元にすれば、顧客の感情分析ができる。とはいえ、これだけでもまだ、「その企業だけのユニークなデータ」とはいえないかもしれない。表情データそのものは、Kaggleなどを探せば、オンライン上にたくさん見つかるからだ。
 
●複数のデータをつなげればユニークネスが生まれる。
・しかし、ここで、顧客満足度と表情データをリンクしたとすると、どうだろうか。この表情のときには満足していて、この表情のときには満足していないということが関連づけてデータ化される。このデータはオンライン上に転がってはいないし、他社には取れないデータである。
・さらに、生徒の学習の進捗データともリンクさせてみよう。すると、満足度は高くても、学習進度は遅く、悩んだ顔をしている。といったことが分かってくる。学習進捗データと表情データと満足度データの3つをかけ合わせると、いろいろなことが分かる。
・しかも、進捗データがあれば、パーソナルラーニング(学習状況に合わせた個別指導)の領域に入ってくる。1人ひとりの個性に合わせたパーソナライゼーションは、差別化戦略の王道の1つだ。
・それだけではない。さらに講師の表情データ、声のトーンのデータなども合わせれば、講師サイドのクオリティ向上やトレーニングにも役立てることができる。生徒のUXが向上し、講師のスキルもアップする。ダブルで効いてくるから、非常に強力なループとなる。
・複数のデータをリンクさせればさせるほど、それを1つにまとめて持っている人が他にいる可能性はゼロに近づく。そのデータも、生徒や講師個人のIDと紐づいているから、その価値は右肩上がりで増えていく。
・このように、データとデータをリンクさせるというのが最大のポイントだ。単独では大した価値を生まないデータでも、複数集めてつなげれば、思わぬ価値を生み出す可能性がある。データは王様ではなくなったが、リンクデータには大きな価値がある。
 
■「どうやるか?」よりも先に自問すべきことがある
・「戦略」の観点だけではビジネスは成り立たないというのも事実。
・事業で最も大事なのは、「どうやるのか(HOW=戦略)」ではなく、「なぜやるのか(WHY=目的)」。

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2021年04月18日

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AIを用いて、二毛作ビジネスを行うことの重要性を記載した本

印象に残った点
・AIはコモディティ化していて誰でも使える領域にある、だからこそどう使うか、真似されずに使うかが大事
・生データをうまく扱う、とりあえず目的なく取得するだけでもいい、まずははじめる

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2024年04月20日

Posted by ブクログ

AIを自社のビジネス戦略(ループ)に組み込むための指南書。AIは完全ではないが部分的に活用し人間が介在する(ヒューマンインザループ)することで上手く活用することができる。まずはAIを活用した戦略において何を最終価値とするか、目的を定めることが大切であるが、マイケルポーターもいう『競争優位性』=どの部分で他社との差異化を図るのかということが最も重要(コストリーダーシップなのか、付加価値創造(UX向上)か)。
本書ではUVP(ユニークバリュープロポジション)という。
AIに何のデータを投入するのか、人間に関わる定性的なデータの方が良いと書かれてる。自社にどのようなデータがあるかを探し出すこと(自社特有のものが良い)。そしてそれを活用してどのような価値(ハーベスト)を生むことができきるのかを検討する。重要なのは一度勝つだけではなく、その結果蓄積されるデータをさらに活用(ダブルハーベスト)し、他社に圧倒的な差をつけることができる。
面白かったのは、データは人間に関わるものなら何でも良いということ。まずは蓄積しそれを試行錯誤しながらアジャイルで自社戦略に組み込んでいくことという点である。AIありきの戦略ではなく、まずは市場シェアを高める競争優位となるストーリーを描いた後、そのなかで自社の保有データをAIを使ってどう活用するのか、さらにループにしていく仕組みをアジャイルで進めていくことが、非常に重要であると感じた。

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2024年01月09日

Posted by ブクログ

AIの活用について戦略的な考え方が説明されていて○ ただ多少強引な記載や、本気か…?というような記載があり。

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2021年12月14日

Posted by ブクログ

ストック型のビックデータ時代から、フロー型のリアルタイムデータの時代へ

AIによる二重、三重のループを作り、勝ち続ける仕組みを、どう作るかではなく、なぜ作るかという目的をはっきりさせる。

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2021年10月10日

Posted by ブクログ

技術的には既にコモディティ化しつつあり、誰でも気軽に利用できるようになっているAIを、持続的競争優位につながる戦略に活用するためのフレームワークや実践に向けた要諦という観点から解説した一冊。

著者は、まず目指すべき最終目的(売上増大やUX向上等)に合わせて、活用するAIの機能(認識・予測・対処)とデータを組み合わせ、どこまで作業を自動化するのか(ヒューマン・イン・ザ・ループ等)を決定し、顧客に対するUVP(ユニークバリュープロポジション)を生み出す「シングルライン」のビジネスモデルを構築した上で、そこから収集・蓄積されるデータを学習してAIが強化され、サービス品質や効率化がさらに進む好循環の仕組みを「ハーベストループ」と名づけ、そのようなループを複数回す多重構造が競争優位の確立につながることを、複数の事例を用いて解説する。

最新の技術動向や「ダブルハーベストループ」の構築に向けたAIプロジェクトマネジメントの進め方等も含め、素人でもわかりやすいよう極めて平易かつ読みやすく整理された構成で書かれており、既にこの道に詳しい人には物足りないかもしれないが、AIの技術的な側面はともかくとして実際のビジネスにどうやって活かせるのか手っ取り早く知りたいという向きには最適な一冊。

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2021年09月04日

Posted by ブクログ

AIに適切に期待し一緒に進化していくことが重要だな、と感じた。AIで解決できる範囲は拡大していくと思うし進化していくだろうけど、魔法ではなく目的をもってコントロールしていかないと都合良く活躍してくれない。
そのためにも、試行錯誤も必要だし、時間も必要になる。もちろん遠回りもあると思う。
常に改善していく意識がAIを活用できる国に近づくのだろうと感じた。

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2021年08月09日

Posted by ブクログ

アフターデジタル2の後に読んだので非常にスムーズに入っていけた。いきなりこの本から入ると「へえ」で終わっていた気もする。

具体的にAIを組み込んだビジネスを立ち上げる方法が知りたい人にはぴったり。とはいっても具体論が詳細に書いてあるわけではないので、考え方をインプットするところまで。

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2021年06月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

aiをいかに戦略に組み込むかということに関する本。わかりやすく面白い。
human+machineと同様aiのあり方関係性について論じられているのがよい。

メモ
・戦略デザインの視点
 aiにより持続的競争優位を高められるか
 aiにより何重にも利益を生み出すルールを描けているか
 aiは勝ち続ける仕組みをデザインできているか
・競争優位は厳選を1つではなく、二重三重に複数築いていくという発想。
・ヒューマンインザループの三パターン
 人力検査型 全チェック
 人間バックアップ 時々サポート
 監査型 確信度低い時だけサポート
・e2e学習 end to end 一気通貫でのaiトレーニング
・aiが実現する5つの最終価値
 売上増大
 コスト削減
 リスク損失予測
 ux向上
 r&d加速
・ai活用で期待できる機能
 認識、予測、対処
・重要なのはユニークバリュープロポジション。いかにこれを最大化し続けられるか。
・ai活用によりまず、uxの向上につなげる。
・精度が85-95%に近づくと、aiが解けなかった問題を人間の手でファインチューニングすることに比重がうつっていく。飽和点に近づくほど例外処理作業が増えていく。
・ループ構築例 契約書ai ドキュメントデータ、フィードバックデータ二つを学習サイクルに。
・自社業務で手に入りやすいデータを考える。データを使ってaiがどう強化され得るかを考える。
・モービルアイは画像処理ai強化と位置情報リアルタイム紐付けという二つのループを構築している。
・ハーベストループ実装ステップ
 ストーリーを完成させる
→KPIに落とし込む
→推論パイプラインのデザイン
→初期データの特定と準備
→初期実験とファインチューニング
→蓄積データの型特定
→uxuiデザイン
→実装とデプロイ
→クオリティチェック
→実運用と継続効果検証
・エクスペクテーションサンドイッチ
 望ましい水準と許容できる水準を設定し、挟み撃ちでこれのズレを減らしていく。

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2021年05月30日

Posted by ブクログ

尾原さんの本は相変わらず分かりやすい。一度は読んでおいた方がいいかも。AI時代のビジネスのあり方に触れることができます。

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2021年05月09日

Posted by ブクログ

AIは構造化されたビックデータを食べさせる時代は終わり、非構造化されたデータを食べさせるループを作る時代と。
たしかに構造化されたビックデータは過去を見ていて、今、そしてその人に適応できるか分からない。

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2021年05月08日

Posted by ブクログ

人間とAIは共存できる、という点を力説した書。

少なくともAIが成熟するまでは、人間は役割を果たす事ができる。そして当然ながらその成果物を享受するのも人間だから、AIはそのループの中間軸として機能する。

人間とAIのコラボレーション、と本書は表現する。これを「ヒューマンインザループ」と呼ぶ。例えば、手書きの書類からOCR (光学文字認識)で文字列を読み込んで、テキストデータを抽出するAIがあるが、必ずしも正しい読み取り結果ではないから、これを人間が補正する。SANSANの名刺登録もこれを行なっていて、何だかアナログだなと思ったが、コラボこそが確実性を高める。尚、人間の補正結果については怪しさは残るが。

AIをどんどん賢く育てるためにの追学習。人間は、AIの養分となる。悪い意味ではない。言わば、折角外国語を覚えた人間が翻訳機の開発支援をするような感覚だ。能力者は、装置の養分になる。しかし、その能力を得た装置は、非能力者に貢献する。

AIの補助としての人間の役割とは。検査、バックアップ、監査。AIに弾き出された結果をチェックしたり、AIに答えられない質問に答えたり、AIが判断に迷うときに対応する役割だ。

AIは、やがてコモディティー化していくと本著は言う。完全合理的な最適解を導くなら、差異化ができなくなるからだ。しかし、そんな事は容易に起こらないだろうと思う。共産主義下において全ての企業が保有する固有のデータを強引に供出させねば、同じ解にはならないからだ。ユニークなデータ取得によるユニークなデータベースこそが企業の個性になるのではないだろうか。

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2024年01月29日

Posted by ブクログ

AIは一度導入したらそれきり、ではなく、AIが稼働しながらも次のアクションを起こせるよう、他の仕組みも仕込んでおきながら二重三重でAIを活用しましょう、というお話。とても分かりやすかった。AIは業務効率や分析に優秀ではあるが万能ではないという前提があり、AIを利用する側の人間の考え方も変えていきながら、AIと共存する仕組みを作っていけるとよい。

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

ループを作って組み合わせて競争優位性を作っていく、という戦略について解説されていた。
AIはコモディティであり、それだけでは、模倣困難は作れないのは確か。

自社の宣伝というバイアスがあり、少し偏っているような記述もあるので、読み流す程度が良いと思われる。

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2022年02月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルの意味は、1回収穫して終わりではなく、AIを組み込んだ戦略を正しくデザインし、自走する仕組みを作ることで、二重に実りを収穫し続ける、という意図だそうで、AIの技術論ではなく、AIを活用したビジネスのあり方について述べた本。
この収穫を得続ける=他社に勝つだけではなく、勝ち続ける仕組みが重要で、AIというと、自動化する、人の手間を省くというイメージが先行していますが、少なくとも実務ベースの効率化と金融ベースの収益の拡大、という二重のループがどんなビジネスでも理論的に可能であり、そのループ(仕組み)を回し続け、他社は追いつけなくなるはず、というのが最大のメッセージ。

割と初めの章で、「3人で行っているチェック作業が一人で済めば効率は3倍よくなる」、「3割自動化するだけでもコストダウンにつながる」とありますが、自動化した分だけ、違う人の手間がかかっている企業や部署も多いのではないか、とも感じるので、通常業務のどこにAIを組み込んで、どのようにアウトプット出していくかということを、ビジネスができる人とAIが分かる人がうまくタッグを組まないといけないだろう、というのが所感。2章に、システムの範囲内でけでみるとAIで効率化できる部分は限られる、と述べており、むしろシステムの外側で人間が作業している部分に着目すること、という指摘は確かにその通りなので、明日から会社にいって、よしやこれをやろう、とならないのがもどかしいです。

AIを活用した、人の作業を減らせるなら、本当にそうしたいと考える人は多いのではないでしょうか。会社の偉い人から「これからAIだ。なんでもいいからやれ!」と本には、よくわかっていないにくせに、キラーパスを不運にも、もらってしまった人などには、いいのではないでしょうか。

なるほどと思ったのは、AIは最初の精度はいまいちで、データを与え続けて賢くなるという性質上、開発案件などでよく使われるウォータフォール型の思考で進めるとうまくいかないことが多い、というのが印象に残りました。

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2021年07月23日

Posted by ブクログ

AIをテクノロジーではなく企業の戦略論に落とし込もうとした本。そのために単に「勝つ」だけでなく、勝ち続けるためのループをいかに作れるかが大事。

関連本と組み合わせて理解を深めないと実務には活かせない。

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2021年06月27日

Posted by ブクログ

AIを使ったビジネス展開について詳しく書かれた本。
AI、AIと声高に叫ばれる昨今、「で、うちの会社はどうしたらいいの?」という方もたくさんいらっしゃるはず。
そんな人にはヒントとなるような示唆がたくさん眠っている本だと思います。
ま、多少、「結局は著者の会社にコンサルくださいね~」という面も否めませんが、
それでも日本の会社をAIを用いて復活させるという高い志をもって、
この本を書かれているのがよく分かります。

興味深かったのが、何でもかんでもAIで完璧に解決させようとするのではなく、
AIと人をうまく融合させて、人件費を削ったり、データを蓄積していくという考え方。
さらに、AIを使って、コストカットしたりUXを高めたりするループを何重にも張り巡らせることによって、
他社が真似できないような構造を作ってしまうべき、
という主張はなるほどと思わされました。
(それ作るの、かなり大変そうではありますが。。)

自分のようにAIにめちゃめちゃ詳しくないビジネスよりの人間でも十分読める内容でしたし、
むしろそういう人こそ読むべき本なような気がしました。

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2021年06月14日

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