【感想・ネタバレ】学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録のレビュー

あらすじ

呪いや祟りでお困りの方は、当館へ。「専門家」がご対応いたします。
北鎌倉の博物館に持ち込まれる呪いの奇奇怪怪を、天才学芸員が華麗に解き明かす伝奇ミステリ!

北鎌倉に建つアンティーク博物館に、その人はいる。眉目秀麗、博覧強記、慇懃無礼。博物館界のプリンスと呼ばれる名物学芸員・西紋寺唱真の実態は――呪いの専門家。とりわけ「実践的呪術」を追求し蒐集する、変人だ。
運の悪い大学生・宇河琴美は、西紋寺のもとで実習を受けることに。だが、実習内容は呪いにまつわるものばかり。しかも怪しい事件が次々と持ち込まれ――。憧れの学芸員資格取得のため、西紋寺の実習生兼助手(?)として呪術の謎と怪事件に挑む!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 学芸員×呪術ということで個人的にツボのテーマ。加えて呪術についてもロジカルな解釈がされているのでとても好きなタイプの物語。「呪い」をテーマにしながら「呪いなんてものはない」とバッサリ切り捨てているのもスタンスがはっきりしていて好みである。 美形だが本物の呪いにかかってみたいと主張する変人の学芸員と、本来は美術館志望だがひょんなことからそこに配置されてしまった実習生、しかも幼い頃から不幸体質という組み合わせがポイントだと感じた。やはり物語をドライブするのはキャラクターの配置なのだと感じた次第。

「丑の刻参りの藁人形」 呪いといえば誰もがまず思い浮かべるのがこれではないだろうか。いわゆる「呪いの藁人形」というやつである。本文中でも触れられているが「適度に困難、適度に手軽」という点で民間に広まったのではないだろうか。つまり、簡単すぎると効く気がしないし、かといってやり方が難しすぎれば達成できない。そのバランスが良かったのではないかと思う。どこの神社か失念したのだが、呪いの藁人形を打ちつけた跡が残る木をみたことがある。人の業のようなものをその小さく暗い穴に感じた。また“使用済み”の藁人形も民族学博物館だったか、どこかの博物館でみたことがある。やはり同様に何か人の強い思いというものを感じさせるものだった。 ちなみに呪いの藁人形はネットでも売られていて普通に買える。確か五寸釘もセット売りしていた。今どき五寸釘など家に転がっているものでもないだろうし、手軽なセットになっているというのも、変わるものと変わらないものを感じさせて面白い(面白がるものでもないのかもしれないが)。「獣人型有孔木製人形」 民間信仰の「隠し念仏」や「いざなぎ流」が言及されているが、このあたりは個人的に興味のある分野。本も持っているがまだ読めていない。遠野が田舎ではなく交易都市である、というのは先日初めて遠野を訪れた時に知った。現在の視点だけでは見えてこないものがあるのだなと思い知らされた経験だった。途中、フィールドワークに関するくだりがあるが、改めて考えてみると知らない土地で知らない人に話しかけるというのはだいぶ高いハードルの行為である(このあたりの話はYoutubeのゆる民俗学ラジオでも言及されていた記憶がある)。作中の通り、向き不向きはありそう。 謎解きのシーンは京極堂の憑き物落としのようで面白い。多分に意識はされている気がする。「オシラサマ」と馬娘婚姻譚、養蚕のつながりも個人的に興味があるポイントである。馬については昔はもっと身近な存在であったであろうことは想像に難くない。東北のあたりでは人家と馬小屋がL字形に繋がっていて、人と馬とが同じ空間に生活していたというから、伝承においてもこの距離感は考慮に入れる必要があるように思う。養蚕についても昔は家の二階でやっていたであろうし、馬と人と蚕は昔は同じ空間に存在していたと考えるとこのつながりも読み解けていくように感じられる。ちなみに自分の実家も昔は養蚕を行っていて、実家の自室は以前には養蚕に使っていた空間を改装したものだったりする。

「鬼の頭骨」 「ばけもの、にせもの、まがいもの」の展示は正直なところ見てみたい。以前に広島県の三次にある三次もののけミュージアムで人魚のミイラは見たことがある。 祟りの種明かしに植物の成分が使われており、しかもそれは元の研究分野というのは伏線の貼り方が巧みだと感じた。妖怪の遺物を偽造する集団なども実にありそうな気がする。唱真の行動原理に一本筋が通っているのが良い。こういう点がキャラクターを立てるのだと感じた次第。

「呪術師の祭壇」 唱聞師(しょうもじ)、法師陰陽師については最近読んだ本で知ったばかりなので興味深く読んだ。式神の正体については共感するところ。京極堂シリーズにも似たような話があった気がする。ラストの引きも続きを期待させるものであり、綺麗にまとまっていると感じた。

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2024年10月14日

Posted by ブクログ

北鎌倉に建つアンティーク博物館の名物学芸員であり呪いの専門家西紋寺とそこで実習を受けることになった大学生が呪術の謎と怪事件に挑むお話。呪いそのもの、というより呪術に仮託した人間のどろどろした感情を扱う話が多く興味深かった。想いは強い、んだな。

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2024年12月03日

Posted by ブクログ

学芸員ですが、博物館や美術館にいるような学芸員らしいエピソードはあまりない感じ。どちらかというと研究者視点のお話ですね。
あくまで現実的な視点で呪術を扱うといのは面白い。呪いなんて存在しないといいつつ実践する。いいキャラです。

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2020年09月13日

Posted by ブクログ

非常に運が悪い主人公が実習に向かった場所にいたのは
見た目だけは素晴らしい学芸員。

性格は、いつもの通りというべきか。
上から目線の人と、単純で鈍くさい感じの主人公。
学芸員になるための実習って大変なのかと思いきや
当然(?)ここだけが変、という話でした。

最後の話の展開には驚きでしたが、納得、です。
生活パターン、把握されたら恐ろしいです。

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2022年11月15日

Posted by ブクログ

学芸員を目指す宇河琴美は実習をアンティーク博物館の学芸員の西紋寺のもとで行うことになったが、この西紋寺はイケメンだが呪術を研究する慇懃無礼のとんでもない変人だった。呪術を研究しているというのがユニークだ。丑の刻参りやオシロサマ、ヒルコ講などに関わるいろんな事件に巻き込まれるが、けっこうこれが民俗学的な興味を惹かれて面白い。西紋寺と琴美の師弟関係がいい感じになっていくのもいい。気楽に読める。

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2021年01月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ちょうど某博物館の呪いに関する展示の本を読んでから日が浅かったので、博物館+呪いの組み合わせの物語に運命的なものを感じた。
そこで仕入れた知識も無論作中に登場してくるので、読んでいてニヤニヤしてしまった。

今回の話は妖や呪いという超常現象が「実在」する世界線かどうか気になっていたが、『絶対城先輩』シリーズに近かった気はする。
基本存在しないけれど、最後の最後であるかもしれないと思わせてくれる匙加減にしびれた。
西紋寺さんの変人っぷりは凄かったが。
丁寧な口調だけど、言っていることが色々とヤバイ。
蘊蓄が長いのは某先輩と同じだけど、ヤバさはこちらの方が上だろう。

鎌倉に安倍晴明ゆかりの地があるというのも知らなくて面白かったし、最後の呪いの種明かしもユニークで面白かった。
無意味だけど意味のある呪いの世界、奥が深いのである。

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2020年08月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったんですが、西紋寺のキャラが絶対城先輩に被るんですよ。
人間関係も似ていて、呪術という面白いテーマがもったいない!
続きがありそうなので、その辺りを工夫して貰えると、もっと楽しんで読めそうです。

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2020年08月25日

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